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撫子国王女、育成計画  作者: Mimiru☆
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望まぬ再会、隠された真実?

不良に襲われたところを助けてくれたのは、理想の長髪美青年!

しかしそうも簡単に事がうまくわけがなく・・・

「はぁ? 不良にナンパされたぁ?」

疑心暗鬼に問うヒナに、僕はうんとうなずき返した。

翌日、僕はいつも通り大学へ登校した。

昨日のことを包み隠さず話したのだが、問題はそこではない。

「不良なんかよりあの男の子だよ! 人がお礼言ったにもかかわらずダサいのだのなんだの言われて! すっごいむかつくんですけど!」

「いや、不良の方が問題だと思うんだけど……」

「まあ確かに怖かったけどさ。あの青年がいなかったらって思うと悔しいだけ」

ため息交じりに天井を見上げながら、彼のことを思い浮かべる。

きれいな青色の瞳をした、長髪の男の子。

見た目は僕のタイプど真ん中のイケメン男子だったのに。

だらしない格好だの、ださいだの! なんで初対面の人にそこまで言われなきゃなんないわけ!?

くぅぅぅぅ! むかつく!

「世の中の長髪男子に謝ってほしいよ! イメージぶち壊しやがって!」

「だから言ったじゃない。見た目で決めないほうがいいって」

「ヒナにはわかんないよ! 乙女心を傷つけられた気持ちが!」

「乙女心ねぇ……いつも女の子っぽくないとか言ってるくせに、都合がいいこと」

ふんだ、もうヒナには何も話してやんないも~んだ。

「絵里香ちゃ~ん、先生が呼んでたよ~。屋上に来てだって~」

「あ、は~い」

先生が僕に話? はてさて、思い当たる節が見当たらないのだが……

はっ! まさか不良に襲われた件が広がった!?

警察沙汰になったらやばくない? 僕の人生がぁぁぁぁ!

「んじゃいってくるね、ヒナ」

「いってらっしゃい。話長引かせて授業サボらないようにね」

「僕をなんだと思ってるの?!」

文句をぶつぶつ言いながら、ゆっくりと屋上へ向かった。


そういえば、屋上に行くのは初めてだ。

どこの学校に行っても、屋上というものは立ち入り禁止されていて誰も行ったことがない。

そんなところに、先生がわざわざ呼び出すって何事だろう。

ていうか、職員室あるんだから別にそこでもよくない?

まあ、屋上に行けるんだしそこら辺は大目に見てあげるけどさ。

そう思いながら、ゆっくりと屋上のドアを開ける。

あけた途端にぶわっと風が吹き荒れ、思わず目をつむってしまう。

外を見渡せる鉄格子の前に二人の青年がいたのが分かった。

そこから見えるであろう町の光景を眺めている。

しかもそのうちの一人の青年は、昨日の毒舌野郎と同じ色をした長髪で思わずどきっとしてしまう。

「桔梗、緑色をしたやつは何?」

「あれはクスノキです。クスノキ科ニッケイ属の常緑高木で、樹木の一つです。確か、見るの初めてですよね。さっきから似たような質問ばかり」

「別に」

僕の気配に気づいたのか、長髪の青年がこちらを振り向く。

きれいに整った顔立ちとすらっと伸びた手足、青色に輝く瞳……

そして人をバカにしたような、あの笑み……

「また会ったな、オチビさん」

間違いなく、昨日の人!

しかもまたオチビさんって言われた!

「あ、あんた! 昨日はよくもやってくれたね!」

「そんなに怒るとしわが増えるぞ。助けてやっただけいいと思え」

「助けた!? 人にあんだけ毒舌はいてて、何言ってるわけ!?」

「おやおや、顔見知りですか。話が早くて済みそうですね」

青年ではない声が聞こえて、ふと隣を見る。

毒舌野郎とは全く雰囲気が違う、大人の男性だった。

きれいな黒い髪に、まじめそうに見えるメガネ。

きっちりと丁寧に着こなした、きれいなスーツ姿……

「初めまして。奥村絵里香さん、ですよね?」

「え、なんで僕の名前知ってるの? ていうか、先生はどこ?」

「ああ、あれは嘘なんです。騙してしまって、すみません」

スーツ姿の男性が浮かべたにっこりとした笑みが、なんだか不気味に見える。

「申し遅れました、私吉岡桔梗よしおか ききょうといいます。こちらは私の連れで、呉羽紫苑くれは しおんです」

桔梗と名乗った男性は、僕に向かってお辞儀してみせる。

初めて聞いたその名前はなんだか新鮮な感じがした。

毒舌野郎―もとい呉羽とか言った青年は、僕とは全く目線を合わせようとせずそっぽを向いている。

「お目にかかれて光栄です、撫子国王女殿下」

は……?

今この人、なんて言った?

王女? 僕が? どこの?

さっきから意味が全く分からない。

きっと人違いか何かをしているんだ! そうに違いない!

「……桔梗。そのチビ人違いじゃないかって顔してるから、一から説明した方がいいぞ」

「うへ!? なんでわかるの!?」

「バカが考えてることなんか顔見れば一発だっつうの」

いちいちしゃくにさわる言い方するなあ、この人。

呉羽がそういったのを聞いた桔梗さんは、わかったかのように僕に問いかけた。

「実は私達も、あなた様もこの星の人間ではないのですよ」

「はあ!? 何言ってるの!? どう見たって人間じゃん!」

「形は似ていますが私達の国のものは魔力を使いこなす一族が住む場所なので、全くの別物なんです」

「魔力? 魔法みたいなものなの?」

「簡単に言えば。地球よりはるか遠くにある星に、撫子国という国が存在します。あなた様は、そこでお生まれになった王族の血を継ぐものなのです」

頭が、痛くなってきた。

何かのシミュレーションゲームのような展開で、とてもではないが信じられない。

つまりはあれでしょ? 僕は違う国で生まれた人間で、ここの人達とは全く違うってことでしょ?

そんなことを言われて、信じられるとでも思ってるの?

「意味分かんないんだけど! だって僕にはちゃんとお母さんやお父さんが……」

「その両親が撫子国の者だとしたら?」

「……どういうこと?」

「桔梗が言ってただろ、お前はここ出身じゃねぇ。お前はここの人間と、撫子国のものの間に生まれたんだ」

違う、そうじゃない。

そういいたかったのに、言葉が出なかった。

実際、僕の両親は中学生の頃に亡くなってしまっている。

五つ違うお兄ちゃんとは単身赴任が多いため、今ではまともにあってさえいない。

僕が真実を知る方法、それはこの人達の言うことを信じること。

それしか、道がないってことなのかな。

「それで……僕にどうしろっていうの?」

「今すぐにとはいきませんが、あなたには撫子国を救っていただきたいのです」

「救う? 国を?」

「奥村絵里香様。あなたは撫子国に残された、最後の砦なのです」

桔梗さんの顔が、真剣な顔つきに変わる。

ちょくちょく口を出していた呉羽は、僕達二人と距離を取るように少し離れたところへ歩いている。

「最後の砦ってどういうこと? 何かあったの?」

「……結論から言えば、敵の襲撃により撫子国は滅ぼされてしまったのです」

「滅ぼされた!?」

「もう国があったことさえ感じられないほどで……ここの国で言う砂漠が広がっているだけなのです」

それを聞いて、もし地球がなくなってしまったらということを想像してしまった。

お兄ちゃんはもちろん、大好きな彩芽が一瞬にしていなくなるということ。

この二人はそれを、身近で体験したというのだろうか。

なんか、かわいそうだなあ。

「国が滅ぼされる直前、王妃様が残した遺言こそあなた様の存在なのです」

「僕が……国を救う鍵ってこと?」

「力を見出すために、あなた様には国の王女にふさわしくなってもらわなければなりません。ここにいる紫苑はあなたの教育係みたいなものです。わからないことがあれば、何でも紫苑に申し付けください。私は撫子国を襲った敵の情報を探索しなければならない義務があるので」

かわいそうとか思っていた感情が、ぷつりと切れた瞬間だった。

ゆ~っくり横を向きながら、彼の様子をうかがう。

まさか、そんなことはないでしょ。だって、ね? そんな……

「よろしくな、おチビさん」

反対の声を上げようとしたときには、すでに桔梗さんの姿はなかった。

不敵に微笑む、呉羽がいるだけで……

「な、なんでこうなるのぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

いつものごとく、叫び声をあげるだけだった。


(続く・・・)

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