終幕、真実に込められた愛
激闘の中、とうとう明かされたボスの正体は・・・
長きにわたった戦いが、いよいよ終幕!!
『私ね、宝石とかキラキラしたものが大好きなの。絵里香ちゃんは興味ない?』
昔からヒナは、宝石が好きだった。
女の子なら誰だって憧れるから、何も不思議に思ったりはしなかったけど。
今なら、なんとなくわかる気がする。
力づくで押し倒した敵のボス、パール。
その仮面の下に隠されていたのは、僕がよく知っている顔だった。
「嘘……なんで、ヒナが……?」
「驚いた?」
「驚いたも何も……どういうこと? 撫子国をこんなにしたのは、君なの?」
「ごめんね、絵里香。私、こう見えて宇宙人なのよ」
そう笑う彼女は、いつもと変わらないヒナそのものだった。
信じられないというように見ているのは、僕だけでない。
彼女を見たことがある、紫苑も同じだ。
透君は傷ついた箇所をかばうように、体を起こす。
「パール……様……あなたは……」
「薔薇帝国が滅びた時、私は小学一年生だった。ここにいるジェードとガーネットともに、地球で暮らしていたの」
そういえば、ヒナは途中から転入生としてやってきたような……
昔から一緒にいるのが当たり前だったせいか、すっかり忘れていたけど。
「地球で暮らす半面、許すことができなかった。国を滅ぼし、自分たちのやりたい放題やっている撫子国が。そんな時、国の最後の砦であるあなたと出会った」
「僕が砦だって、最初から知ってたの……?」
「ええ。しらしめてやりたかったの、国を失ったものの末路を。自分の過ちに気が付いたのは、呉羽君がこの星にやって来た時だった。だから始めたの。撫子国王女の育成計画を」
えっと、つまりどういうことだ?
敵だと思っていた彼女達は味方で、根っからの悪人じゃないってこと?
ううむ、難しいことは相変わらずわからん!
「つまりはなから、俺達を殺す気はなかった……そういいたいのか」
「今あなた達に見せているこの宝石の拠点は、あくまでも幻覚。ここまで演技するの、大変だったんだからね?」
「じゃ、じゃあ四つ目の花も……!」
「もちろん、渡すわ。十分絵里香は、撫子国王女にふさわしいってわかったから」
ヒナの笑みに、思わず力が抜ける。
ぺたんと座り込みながら、はあっと深いため息をついてしまった。
これでやっと、終わったんだ……
「……なんというか、すっきりしねぇ終わり方だな」
「あら、不満? 呉羽君は戦いで蹴りをつけたかったの?」
「お前のやり方が不満なんだよ。こいつにかかわる奴は、変わったやつばっかりだな」
そういう紫苑の顔は、なんだかすがすがしく思えた。
僕自身も、うれしい反面本当に終わったのかと疑いたくもなる。
思えば、色々あったもんね。僕達。
「ジェード。ガーネットの様子は?」
「あれくらいで死んでくれたら、僕的にも助かるんですけどね。そう簡単に死にませんよ。まったく、ひどい仕打ちですね。演技とはいえ」
「命かけてくれるって言ってくれたでしょ?」
「……まったく、あなたって人は」
呆れたように話している透君を、ちらりと横眼でみる。
彼は相変わらずの微笑で、僕に笑いかけて見せた。
「絵里香」
呼ばれて振り返ると、紫苑が笑っていた。
優しく、ふっと。
彼の手には、今まで取って来た三つの花があった。
後ろの方に桔梗さんも、カトレアさんも見守るように僕を見ていて……
僕が三つの花を手に取ろうとすると、同時にきれいな光を帯びた。
するとヒナの方にあったたであろう最後の花が、顔を出す。
四つの花が、僕を囲むように光り輝く。
『撫子国最後の砦、奥村絵里香様。確認。願い事は何でしょうか』
願い事……
思わず紫苑たちの方を見る。
彼は何も言わず、こくりとうなずいて見せた。
そんなのきかなくてもわかってる、からね。
最初から願い事なんか、決まってた。
僕にできることは、これくらいだから。
「撫子国を、蘇らしてほしいですっ! 花も緑もあった、昔と同じように!」
僕の叫びに呼応するように、光りがばあっと開けてゆく。
あまりのまぶしさに、僕は目を閉じたのだった。
ゆっくり目を開けると、そこに広がっていたのはきれいな緑だった。
きれいな花が一面に咲き、数々の花びらが風で待っている。
宝石だらけだったのが嘘のよう、町や城まで元通りだ。
「これが、撫子国なんですね……! 桔梗さん!」
「ええ、間違いなく元通りですよ」
「……これが……滅ぼされる前の……」
感動しているのか、紫苑の顔は心なしかうれしそうにも見えた。
桔梗さんに回想で見せてもらったのと、全く同じだ。
これで、本当に……
「終わったんだね、何もかも……」
元に戻った撫子国を眺めながら、僕は静かに涙を流したのだったー
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「ガーネット~いつまで寝てるの~? 撫子国、もう蘇ったよ~?」
聞きなれた声がする。
ぱっと目を開けると、彼女の目の前には透がいた。
彼女―ガーネットは勢いよく体を起こすと、思いっきり透の顔と当たった。
「いった……なんなの、急に」
「それはこっちのセリフや! 何がどうなっとるんねん!」
「まんまとやられたんだよ、パール様の演技にね」
呆れるようにつぶやく透の視線の先には、すっかり元に戻った城がある。
かつて住んでいた人民たちも生き返り、歓喜でにぎわっている。
すれ違う人たちは、寄せ集められるように城へと走ってゆく。
まるで何かが始まるのを待っているかのように。
「なんかようわからんくなってきたわ……んで、うちらはどうなるん?」
「ここに住んでもいいし、地球に戻ってもいいって言ってたよ。僕は絵里香ちゃん次第かな」
「あんたはこのままでええんか? あの女のこと、本気で好きだったんなら、横取りしようとか思わへんの?」
「それはないよ。あの子はいつも、まっすぐ彼を見ているから」
そういいながら透は、くすっと笑って見せた。
(続く・・・)
予告通り、えっ!? という展開になってます。私の力量不足でごめんなさい・・・
ラブ&ピースってことで、これでいいですよね笑
次回、堂々の最終回です!!!