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撫子国王女、育成計画  作者: Mimiru☆
24/26

想いを、偽りに秘めて

撫子国をすくうために、薔薇帝国の三人と戦うことに―


仲間の一人である、ガーネットが倒された。

にもかかわらず、透君は無表情のままだった。

パールという帝王さんは、仮面をしているせいか表情さえ読み取れない。

「あわれな死に様だね、ガーネット。当然の報い、かな」

「……ジェード」

「お任せください、パール様。奥村絵里香は必ず、僕が仕留めて見せます」

そういう透君の目はまっすぐ僕をとらえていて、以前見せてくれた笑みはみじんも感じられなかった。

その恐怖で、体が思うように動かない。

逃げようにも足がすくんで、どうすることもできなくて……

「桔梗、こいつを頼めるか」

今の今まで高みの見物をしていた紫苑が、口を開く。

彼の目線もまっすぐ透君をみていて、いっこうにそらそうともしなかった。

「彼の戦闘値は予測できません。大丈夫ですか、紫苑」

「あいつを倒すことが、俺の宿命みたいなもんだよ」

「紫苑……」

「お前に言われずとも、あいつを殺しはしねぇよ。信じて、待ってろ」

強気で、頼もしい紫苑の言葉。

バカにしていたようには思えない、まっすぐな彼の思い。

紫苑、変わったな。

だからこそここまでついてきて、彼に好意を抱くようにもなった。

それも今まで、二人で乗り越えてきたから……

「やっぱり邪魔して来るんだね、君」

「翡翠……いや、ジェードと言ったな。花を消すことが目的なら、なぜ絵里香に近づいた。こいつを巻き込む理由はなかったはずだ」

「なぜって、そんなの決まってるじゃない。裏切るためさ。友達だって思ってた人が本当は敵……絶望に満ちた顔が見たくてね」

「それなら殺す機会はたくさんあったはず。今まで何もしてこなかったわけは?」

「さぁ? なんでかなっ!」

そういいながら、透君は石のつぶてをまき散らす。

間一髪紫苑は、それをバリアで防いだ。

彼も紫苑と同じ、魔力を使えるのだろうか。

石のつぶてだったものがどんどんまとまっていき、その中心に水や炎までも集まっていく。

「君も、自分勝手すぎると思わない? 必要ないと切り捨てておいて、ずっと一緒にいることを決めたとか。都合がいいよね。彼女のことを、まるで道具みたいにさ」

「よくもまあ、どうでもいいことを知っているもんだな」

「見てたからね、君達を。幸い絵里香ちゃんは、それでも君がいいみたいだよ。馬鹿が考えることは、よくわからないよね」

「所詮、馬鹿だからな」

あ、あれ? なんか僕、戦いの中でバカにされてない?

なんで僕、こんな時にまで馬鹿にされないといけないの! もう!

「だが馬鹿だからこそ、人を引き付ける。お前も、その一人なんだろ?」

「……どういう意味?」

「お前が絵里香に言った、あの言葉。裏切るつもりはなく、自分の感情も入っていたのではないかと思ってな」

その瞬間、まとまっていたかたまりが一気にはじけ飛ぶ。

それは四方八方に飛び散り、宝石だらけの地形にヒットしていく。

僕の方にも飛んできたが、危ないところを桔梗さんがかばってくれた。

「へえ。やっぱりそうか」

「……僕が……彼女を好きになるとでも?」

「お前は俺と似てると思ってな」

「一緒にするなっ!」

透君が攻撃を仕掛けようとした、そんな時だった。

「インパルス」

呪文のような言葉が、聞こえたのは。

すると次の瞬間、透君に電流がおそい……

「うぐっ! ああああああああっ!」

「透君!!!! 紫苑っ、いくら何でもやりすぎじゃ……!」

「俺がやるわけないだろ!」

紫苑じゃ、ない?

確かにあの声は、紫苑でもなければ桔梗さんでもない。

ってことは、まさか……

「愚かな子。あんな子に情をかけるなんて」

「パール……殿下……っ!」

「死になさい。裏切者」

パールさんが魔力を強めると同時に、透君は苦しむように悲鳴をあげる。

このままじゃ、透君が死んじゃう!

とめなきゃ、そう思って飛び出そうとしたのに……

「ここまで生かしておいて、最後は自分の手で殺す気か! 最低最悪な帝王様だな!」

透君をかばうように、紫苑が電流の中心へと走る。

彼はぐっと顔をしかめながらも、なおも叫び続けた。

「自分の国が滅びた恨みに絵里香を……仲間をも巻き込むのか!」

「お前に何が分かる!!! 国のことなど、ろくに知りもしないで!」

「国のことなんか、どうでもいい……これ以上、こいつを巻き込むな!!!」

「おだまりっ!!!」

どんどん電流が、激しさを増す。

勢いを増すごとに、二人を襲い掛かるー

「ここだと巻き込まれかねません! 絵里香様、お逃げください!」

「でも、それじゃあ紫苑と透君が!」

「あなたまで危険な目に合うのですよ!?」

「それでも、放って逃げるなんて僕にはできない!!!!!」

「絵里香様っ!」

そう、僕は決めたんだ。

紫苑の過去を聞いて、透君のことを聞いて。

すべての原因が、僕にあるのだとしたら。

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉいっ!!!!」

思いっきり身を任すように、パールにしがみついて見せる。

勢いよくいったせいか、思いっきり倒れてしまう。

その反動で走っていた電流が、ようやくやむ。

「もうやめて!!! これ以上、傷つくのを見てられない!!!!」

叫びながら、恐る恐る目を開ける。

僕の目線に入ったのは、地面に落ちた仮面だった。

僕にぶつかった衝撃で目の部分が、欠けてしまっている。

仮面がここにある……ってことは……

「……ほんと、無茶ばっかりするんだから……絵里香は」

呆れたような笑み、きれいに整った白い顔。

仮面で縛り付けられていた、長くさらさらした髪―

「ヒ……………ナ?」

仮面の下、パールと呼ばれていた帝王の顔は、関沢雛菊そのものだった。


(つづく・・・)

次回、意外な結末が‥‥

えっ!? って展開が待ってるかも‥‥?


二日後に更新します!

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