華麗に踊る、優雅な舞い
ついに薔薇帝国との対決編です!
物語は、一気にラストスパートへと進んでいく・・・!
敵側もいつの間に用意されていたのか、玉座のような椅子にパールさんが座っていた。
それに寄り添うように、透君も見物している。
「随分余裕やなあ。このうちに素手で太刀打ちできると思うとるん?」
「さぁ、どうでしょう。やってみなければわかりませんわ」
「何なんや、その笑い方……気に食わんなああああああああ!」
ガーネットが、思いっきり鎌をふるう。
思わず僕は、目をつむった。
「うふふ。すみませんね、気に食わない笑い方で」
カトレアさんの笑い交じりの声が、聞こえる。
恐る恐る目を開けるうちに、びっくりして思わず声をあげる。
鎌が当たるほぼ寸前、彼女と鎌の間に銀の刃先が重なっていた。
刃と刃が重なり、火花がちりちりなっている。
カトレアさんが持っていたのは、剣だった。
一二回りも大きい鎌だというのに、たった一つの剣でそれを防いでいる。
「そ、その剣……っ! どこに隠しておった!?」
「素手で戦うなんて、一言も申しておりませんよ? 万が一のため、いつも持ち歩いていますの」
「さっきの余裕はそれでか……あんた、何者や? その紋様は、ダリアの王に認められたものしか持てないはずや!!!」
「私は宇宙列車、アマギを任されたただの運転手ですよ」
そういって剣で鎌をはじきとばす。
勢いで飛びのいたガーネットが、ちっと舌打ちして見せる。
もう何が何だか、わけわかんない。
ダリアって何? あの剣そんなにすごいの?
「桔梗さん、カトレアさんって一体……」
「あの紋様は、宇宙最強ともいわれるダリア王国のもの。カトレアは王に認められた、唯一無二の剣豪なんですよ」
うえええええええええ!? それって最強ってことじゃん!
カトレアさん、すごっ! それなら、なんで列車の運転手してるの!?
おそらくそれは、敵側にもわかったのだろう。
さっきまでのガーネットの余裕な笑みは、いつしか消えていた。
「なんや面白くなってきたやん。こうでなきゃ、燃えへんわ」
「あら、光栄ですわ」
「悪いけど、一発で仕留めさせてもらうでぇ。魔法陣!」
すると彼女は斧をぐるぐる回したかと思うと、地面にどんと持ち手の方をぶつける。
途端、カトレアさんを中心に何かの紋様が浮かび上がった。
バラとダイヤをあしらった……薔薇帝国の紋様が。
「燃え盛れ! 炎の渦! ファイアーサイクロン!」
ガーネットが叫ぶと同時に、魔法陣からものすごい勢いで炎が舞う。
目の前が真っ赤に染まり、あっという間にカトレアさんの姿が見えなくなり……
「カトレアさん!!!」
「ぎゃはははは! ええ気分! そのまま肉ごと焼きはらってまえ!」
「そんな単細胞かつ単純な魔法が、彼女にきくと思ってるの?」
今まで黙って見物していた透君が口を開く。
炎はやむことを知らず、延々と魔法陣の中で燃え盛っている。
「なんや、ジェード。うちに口出すな」
「……どうやらこれが君との最期の会話になりそうだ」
「あん? 何が言いたいねん」
「足を見てごらんよ」
透君に言われた通り、僕も彼女の方を見ようとする。
彼女の足元を見て、びっくりした。
なんと地面からいばらがはえており、見事にとらえているのだ!
「い、いつの間に!!!」
「うふふ、あなたと戦闘直前に仕込んでおきましたの。これで身動き取れませんわね」
どこからか、カトレアさんの声がする。
炎はまだやんでいないというのに、彼女の声はかわらず優しげなものだった。
「うちの魔法がきいてないやと……っ! この炎の中で生きとるんか!?」
「先ほど攻撃を防いだ時から、こうなると予想していればよかったのに」
「剣一つに、なんでこのうちが……!」
「あなたの敗因は二つ。敵を見くびったこと、そして相手が私だったことですわ。終わりにしましょう。天より落ちろ、針雨」
カトレアさんの声と同時に、空から針が降ってくる。
雨のように、ものすごい勢いで。
「ぐあああああああああああ!!!!!」
それはガーネットに、見物している二人にも降ってきている。
しかし透君の方は彼が張っているのか、バリアのようなもので見事に間も荒れていた。
針の雨はやむことを知らず、ガーネットはぱたりと地面に倒れてしまう。
同時に描かれていた魔法陣も炎も消え、カトレアさんの姿があらわになる。
「ね? すぐに終わったでしょう?」
なおも彼女は笑顔で、にこりと僕に笑いかけ……って……
「カトレアさん! けがは!?」
「問題ありませんわ」
「あの炎の中にずっといたのに、なんで……!?」
「やれやれ。加減というものを知りませんね、カトレアは」
「桔梗さんまで、あんまりですわ」
「正直、今日ほど味方でよかったと思ったことはないな……」
紫苑も桔梗さんも、呆れたような目で見ている。
それでもカトレアさんは、にっこり笑って見せた。
(続く・・・)
余談ですが、ダリアは花の王様といわれているみたいです。
次回は二日後、あの人たちが闘います。
衝撃の展開が君を待っている‥‥?