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撫子国王女、育成計画  作者: Mimiru☆
18/26

双子の兄弟、敵の真相

夏休み中。いつも通り紫苑と二人で暮らしている中、やってきたのは手紙をくれたお兄ちゃんで・・・?

「初めまして呉羽紫苑です。絵里香さんとは仲良くさせてもらっています。以後、お見知りおきを」

紫苑が無表情なまま、浅くお辞儀する。

それを二人の男性がまじまじと見つめている。

奥村絵里香、ただいま最大のピンチに立たされております。

こいつのブラコンを甘く見た僕が悪かった! 

忘れてたよ! こいつ、手紙届いた次の日とかにふっつーに来ることを!

しかも何の連絡もなしに!

普通来るなら来るで連絡しない?! 勝手すぎるよ!

それに……

「僕、かえで兄さんまで来るなんて聞いてないんだけど」

「ああ、驚かせようと思ってね。桐乃が行くってきいたから、一緒に行こうと思って」

そ、そんなもんなの?

「そんなことより! 何なんだよ、絵里香! この長髪男は! 枯れ葉だか呉羽だか知らないけど、なんで男が家にいるんだよ! お兄ちゃん許しませんからね!」

絶賛ブラコン発動中だな、こいつは。

僕は紫苑に顔を合わせると、一応紹介しろとばかりに目で訴えてくる。

知ってるはずの紫苑に紹介するのは不自然だけど……まあいいか。

「紫苑、うちの双子。金髪でチャラそうなのが兄の桐乃で、黒髪のおとなしいのが、弟の楓兄さん」

「お前の兄ってブラコンだけじゃないんだな。気づかなかった」

「あはは……まあね」

苦笑いしながら、ちらりと兄を見る。

相変わらず桐乃は、僕と紫苑を見ては怒鳴り続けていた。

「ひどい! ひどいよ、絵里香! 恋人と同棲なんて、許さん! 昔、お兄ちゃんと結婚するぅって言ってたのは絵里香でしょ?」

「そっ、それは子供の時の話でー」

「かわいいかわいい妹の絵里香が男と同棲なんて……認めん! オレは絶対認めないんだからなっ!!!」

ダメだ。これ、止めても無駄な奴だ。

いまさら何言ってもこいつが聞いてくれるとは思わないし。

相変わらず、シスコン全開でイラッとするなあ……

「桐乃はわかるとして、楓兄さんも来るなんて珍しいよね。何かあったの?」

「うん、まあそんなとこかな」

「ちょっと! なんでオレだけ呼び捨てなの!? お兄ちゃんって呼んでよぉ~!」

「桐乃、そんなことより大事な話があるでしょ?」

シスコンでキャラが濃いせいか、忘れがちのもう一人の兄・奥村楓。

桐乃は通訳者として働いているが、楓兄さんは世界で有名なオーケストラの一員だ。

確か、サックス奏者だったっけ。小さい頃、よく聞かせてもらってたなあ。

そんな忙しい二人が、めったにそろうことはない。

しかも僕に会いにいくなんて、さらさらないと思ってたのに。

「絵里香。君は自分が、僕達と血がつながっていないことは、知ってる?」

どきっとして、一気に血の気が引く。

隣でおとなしくしていた紫苑の顔が、引き締まったような気がした。

「驚かせてごめんね。でも話しておくべきだと思って。君は、ここの人間じゃない。ある方に頼まれてお母さんが一緒に育ててくれたんだ」

本当、だったんだ。紫苑の言ってたこと。

別に信じてなかったわけではなかったけど、どこかで納得していない部分があった。

やっぱり僕は……

「絵里香のママは違う星に住む人らしくてさ、その国が滅びちゃったらしいのよ。それで、こうしてオレ達がここまでやってきて~」

「重度のシスコンと聞いていたが、その程度の情報しか回っていないとは。所詮、名前だけのつながりってことか」

今の今まで黙っていた紫苑が、毒舌満開で話し出す。

当然そのことをきいた桐乃の方は、むっとして叫びだした。

「名前だけとは何だ! オレは絵里香を愛しているんだぞ!」

「滅んだ星のことも、その星の最後の砦がこいつだってことも全部俺が話した」

「じゃあ君が、その国の……?」

「撫子国第一王子、アイリス。最後の砦を守り抜き、ここまで育ててくれたことに感謝申し上げる」

その時の紫苑はまるでいつもと別人で、すごくすごくかっこよかった。

まるで、本物の王子様みたいだ。

二人の前にスッとかがんで、お辞儀して。

「そっか、君がそうだったんだ。てっきり絵里香の彼氏さんだと」

「ななななにいってるの、楓兄さん!」

「そんなこと! 王子だろうがなんだろうがオレが許さん! 絵里香はオレの妹であり、オレの恋人だ!」

「僕いつから桐乃の恋人になったの!?」

「でもそれなら話が早いね。二人とも、これを見てくれるかな」

そういって楓兄さんは、ある写真をポケットから出す。

そこにはある紋様が書かれていた。

このマークは……バラ?

……と大きなダイヤモンド?

「これは……薔薇帝国の国旗じゃないか」

「やはり、王子はご存知でしたか」

バラテイコク?

「紫苑、どこそれ」

「撫子国と同盟を結んでいた隣接国だ。今や戦争に敗れ、星には住民一人残ってないらしい」

どんだけ星滅ぼされちゃってるの!?

「おそらく撫子国を襲ったのも、絵里香を襲ったのもこの国の生き残りだと思われるって情報が入ったんだ。吉岡桔梗さんって、知ってるかな。その人に頼まれて、僕も色々情報を交換してね」

え!? 桔梗さんと楓兄さんって親交あったの!?

まあ言われてみればあのガーネットとかいうやつの武器に、こんなマークがあったような無かったような……

「だがオレが来たからにはもう安心しろ、絵里香! このオレが絵里香をぜぇぇぇぇったい守ってやるからな! わが愛しの妹よっ❤」

「いや、そういうのいいから。二人とも仕事でしょ? 帰った方がいいよ。ていうか桐乃は早く帰って!」

「オレだけ扱いひどくない!? だってさぁ、かわいい妹が狙われてるのにじっとできるわけー」

「俺が守る。だから安心してお帰りください」

グイッと引き寄せられ、気が付いたら紫苑の胸の方にいた。

腕を僕の頭の上にのせながら、フンと鼻で笑っている。

それに悔しがる桐乃と感心する楓兄さんの姿が、恥ずかしくて見ていられない。

「ほんと、いい友達に恵まれてるよね。絵里香は」

「ぐぉぉぉぉぉぉ! 認めん、認めんぞぉぉぉぉ!」

楓兄さんの微笑みは、僕を優しく和ませほっとさせてくれる。

僕の家ではずっと、桐乃のうるさい叫び声が空しく響きわたっていたのだった。


(つづく・・・)

次回の更新は、3日後です!

トライブと同時更新になります♪

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