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撫子国王女、育成計画  作者: Mimiru☆
17/26

純情、乙女の恋心

三つ目の花まで手に入れ、すれ違っていた紫苑との距離も元通りに。

犬猿の仲だった二人の関係は、だんだんと特別なものへと変わっていき・・・

なんか、いい匂いがする。

目が覚めたのは、向こうから香るおいしそうな香りがしたからだ。

時刻はすっかり八時をまわっている。

今回の宇宙旅行の次の日が、夏休みで助かった。

昨日のことが、ずっと僕の頭の中でぐるぐる回りだす。

『お前は俺が守る。黙って俺と一緒にいればいいんだよ』

紫苑のキス、すごく優しかったな。

今まで見たことないくらい、すごくかっこよく見えたし……

ていうか僕、結局紫苑好きになっちゃってるし!?

誰だよ、あんな奴なんか好きになるかとか言ってた奴!

信じられない。恋愛なんてする資格ない僕が、よりにもよって紫苑を好きになるなんて。

ああ、おぞましい。

このことは誰にも秘密にしよう。かえってネタになるだけだ。

昨日のがまぐれだってこともあるしね! そうだ、そうに違いない!

よし! とりあえずは何事もなかったかのようにあいさつをして……

「おはよ~紫苑」

「ん? なんだお前か。早かったな」

「なんかいい匂いするなあって思って」

「この前の詫びついでだ。残さず食えよ」

うわあああああああ! 紫苑が眼鏡かけてるぅぅぅ!

初めて見た! かっこいい!  

やばい! 顔が熱い!

しっかりしろ、絵里香。おかしいじゃないか。

よくよくみてみろ、眼鏡をかけているだけでいつもの紫苑だぞ。

騙されるな、僕がこんな奴に恋してるわけがない!

「しっかし珍しいこともあるんだなあ。お前が早起きとは。しかも夏休みに」

「ぼ、僕だって早起きくらいできるよっ」

「お前なりにやればできることもあるんだな、見直した」

ふぇぇぇぇぇ……

今褒められた!? 褒められなかった!?

じゃなくて! ふぇってなんだよ! 気持ち悪いよ、僕!

ああ、もう! 恥ずか死ぬ!

「どどどどうしたの、紫苑。なんか今日は、いつもと違くない?」

「俺は思ったことを素直に言ってるだけだが?」

「そ、そうかもしれないけどぉ……」

「お前が早起きするなんて天変地異が起こるほど珍しいからな。槍が降ってきたらどうしてくれるんだよ」

「そこまでなの?!」

「どうせなら、夏休みみたいな休日より学校の日に起きろよ。ほんっと馬鹿だよな」

むっかああああああああああああ。

前言撤回。やっぱり僕、こいつのこと嫌い!

いうことすべてが嫌味、嫌味、嫌味!

なんでこんなのを好きだって思ったんだろう。一瞬でもそう勘違いした僕がおかしい。

でも嫌味言われるの、久しぶりだな。

最近はけんかばっかりだったし、花を採るのにも忙しかったし。

あ、そういえば……

「桔梗さんは? 今日はどこにいるの?」

「カトレアと最後の花さがし」

「最後の花ってどこにあるの?」

「知ってれば苦労はしない。ただ、これまで以上厳しい戦いにはなるだろう。桔梗が言ってた」

これまで以上に、かあ。

砂漠や海もそこそこ危険だったけどねぇ。

断崖絶壁の上にあったのだって、死にかけたほどだよ。

でも結局は、紫苑や桔梗さんに助けられている気がする。

僕一人じゃ絶対できなかったこと。

いつまでも頼ってばかりじゃ気が引けるなあ。

「そういえば郵便受けに、これ入ってたぞ」

「え。僕宛?」

「おまえんちなんだから当たり前だろ。ほれ」

そういって強引に渡された封筒を見て、げっと声が漏れる。

この丸っこい、汚い字は……

僕はそのまま手紙を見なかったことにし、ごみ箱にいようとした。

しかしそれを紫苑が見ていたようで、すかさず横から口をはさむ。

「せっかくの手紙を捨てるとは、人としてどうかしてるぞ」

「こ、これは、そのっ……広告だよ! ほら、よくはがきで来るでしょ!」

「ふうん。お前にはそれがハガキに見えるのか。どっからどう見ても手紙に見えるんだが」

うぐっ……

「俺にはただ、お前が読みたくないだけのように見える」

さすが紫苑。無駄に鋭い。

くぅぅ、これだから嫌なんだよ、この人は。

「そんなに読むのが嫌なら、俺が代わりに読んでやろうか」

「そ、それだけはやめてっ!」

「じゃあ自分で読め」

「わ、分かったよぉ~」

捨てようとした手を止め、重々しく開いた。

やはりそこには予想通りの丸っこい字で書かれた、彼からのものだった。


『拝啓、わが妹よ。

一人暮らしはどうですか? もう慣れちゃったかな?

お兄ちゃんがいないと、寂しくて泣いちゃってるんじゃないかと思うと心配です。

今、お兄ちゃんは絵里香の顔が見たくて仕方がないよ。

愛しの絵里香に会いたくて会いたくて震えが止まらないよっ!

そこで絵里香のもとに帰ることにしました☆

I LOVE ERIKA♡ 

お兄ちゃんと呼んでくれる日を楽しみに待ってるよ♪

FROM 桐乃』


相変わらずの手紙の内容に、僕は苦笑いを浮かべるしかない。

仕方なく読んでみたらこれだ。

ったく、なんなんだこの手紙の内容は! 気持ち悪いったらありゃしない!

寂しくて泣いたりとか、僕は子供か! もう大学生だぞ!

よし、やっぱり捨てる! 返事なんか書くもんか!

「その反応から推測する限り、送り主はお前の兄といったところか」

うえ!? なんでわかるの!?

僕の反応が予想通りだったのか、彼は顔色変えずにふんと鼻で笑った。

「いったろ、お前の情報はすべて把握しているって。奥村桐乃おくむら きりの、二十六歳。通訳士として働き、現在アメリカで活動中。自他ともに認めるかなりのシスコンと書いてあるが?」

「うう……おっしゃるとおりです……」

何も言い返すことができず、僕はしゅんと体を縮める。

忘れた方もいるだろうが僕には五つ離れた兄がいる。それが、桐乃だ。

容姿端麗、成績優秀、そしてまさかの運動音痴という。

僕とは全く正反対な兄である。

この手紙の内容からわかるに、かなりのシスコンなのだ。

「しっかし、汚い字だな。小学生並だ」

「か、勝手に見ないでよ!」

「見えたんだから仕方ないだろ」

ぐぬぬ……!

あれ? そういえば……

「紫苑、この手紙いつ来てたの?」

「さぁ。最近は宇宙ばっかでろくに見てなかったし」

「夏休みになって、どれくらい経つんだっけ……?」

「今は七月末だが。それがどうかしたのか?」

何だろう、このいやぁな予感は。

心なしか寒気もするし。

今日、絶対何かが起こる!!!!

「ただいま~~~愛しのお兄ちゃんが帰還だよ~~~~~! って誰だお前はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「こら桐乃、入る時くらいチャイムを鳴らさないと。あれ? お友達?」

い、嫌な予感が的中したぁぁぁぁぁ!


(続く・・・)

お読みいただき、ありがとうございます!

次回の更新は、四日後になります!


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