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撫子国王女、育成計画  作者: Mimiru☆
14/26

すれ違う二人、うごめく暗雲

学外研修でバラ園に来ていた絵里香。

美少年・透と雛菊とまわってる最中、強引に紫苑に連れられて・・・?

「紫苑! 紫苑ってば! どこにいくの!?」

腕をつかまれ歩くこと十分。

僕はずっと、紫苑に腕をつかまれたままだった。

強引につかまれた腕は、彼の力がこもっているのかすごく痛い。

歩いているだけで何も言わないし、どんどん人ごみも遠ざかっていくばかりだ。

「ねぇ紫苑! 紫苑ってば! 痛いんだけど! 腕放して!」

僕が強引に振り払うと、ようやく彼の腕から解放される。

つかまれたとこをさすりながら、勢いよく彼に怒鳴った。

「何のつもり!?」

「……何が」

「何がじゃないよ! 話なんてないくせに!!」

僕の叫びに、紫苑は何も言わない。こっちを見ようともしない。

構わず僕は怒りをぶつけ続けた。

「こんな強引の仕方で連れていくなんて、勝手すぎるよ! すっごい腕痛いんだけど!」

「……」

「僕何かした!? こんな強引なやり方―」

「桔梗ならしない。そう言いたいのか?」

いきなり桔梗さんの名前が出てきて、えっと答えに詰まってしまう。

今までそっぽを向いていた紫苑が、くるりとこちらを向いた。

「あいつは俺と違って馬鹿にもしないし、いつも優しく手を取ってくれる。そういうことだろ?」

「し、紫苑?」

「さっきの男だってそうだ。褒められたくらいでにやにや調子のりやがって」

え? 何? 何なのこの状況?

僕、今叱られてるの? なんで?

原因は何? 桔梗さんと透君が関係してるの?

「人がだまってみてれば軽々調子に乗りやがって。いいか、よく聞け。現実味ない夢から覚まさせてやる」

「は、はあ……」

「お前は上品でもしとやかでもない」

ぐさっ!

「正直者、というのも何でも信じる馬鹿という意味だ」

ぐさぐさっ!

「それが分かったら、あの程度で浮かれるのはやめるんだな」

「ちょっとまてええええい! なんでそうなるの!?」

我慢できずに、紫苑の言ったことに否定する。

彼は相変わらずの無表情で、僕を睨み返す。

「確かに浮かれてたかもしんないけど、別に紫苑が言うことじゃないじゃん! なんで僕にかかわってくるの!?」

「言っただろ。お前の教育係だって」

「いや、そうじゃなくて……」

「だがもう俺は必要ないと判断した」

えっ? なん、で?

頭を釘でがんと打たれたような、ショックが僕を襲った気がした。

紫苑は相も変わらず無表情で、僕に言う。

「お前みたいなバカ女、相手するだけ時間の無駄だ。もうお前とは一切かかわりたくない。ほめられてほしいなら桔梗といればいい。俺にはもう、近づくな」

「あっ、えっ。ちょっと待って! 紫苑!」

そういうと紫苑はすっと立ち去ってしまい、何事もなかったように生徒たちの中に入っていく。

いつもの笑みを浮かべて、いつものように女子と接して……

「見つけたよ、奥村さん」

そこにやってきたのは、透君ただ一人だった。

つい力が入らずぺたんと座り込んでしまった僕の目線に合わせるかのように、しゃがむ。

「透君……ヒナは?」

「その関澤さんに頼まれたんだ。もうすぐ集合時間だから、呼んでくるようにって。何か、あった?」

透君が何かしゃべっているようでも、僕はほとんど聞いてなかった。

頭の中が、追いつかない。

どうしてこうなったのか、自分でもよくわからない。

何が原因で? 僕、何かしたの?

「……奥村さんって、あの人―呉羽紫苑とどんな関係なの?」

「どんな関係、って?」

「周りの女子からよく一緒にいるって話を聞いたから。仲いいのかなあって」

「仲いいっていうか……友達というか……」

「へぇ、じゃあ狙ってもいいってことか」

透君のその言葉に、えっとつまらせる。

彼はゆっくりと僕の体を、自分の体に引き寄せて……

「とととと透君!? 何してんの!?」

「さぁ? 僕なりの励まし方って奴かな」

「励ましになってないよね!?」

「ふふっ、すごい動揺っぷり。こう見えて僕、本気だよ?」

なに? 何なのこの展開!

どうして僕、透君に抱き付かれてるの!?

しかもなんか楽しんでるように見えるし!

くっそ! なんなの!?

「好きだよ、絵里香ちゃん」

「と、透君?」

「あんな奴のことなんか忘れて、僕と付き合わない?」

透君の言っていることは嘘なのか本当のことなのか、判断ができない。

でも彼は相変わらずの笑みを浮かべている。

すごく優しい、邪気のない笑顔。

初めての告白。

なのに全然嬉しくない。

透君は僕にとっては友達みたいなもんだし、付き合うなんて考えたこともない。

それに……

「ごめんね、透君。僕、君の気持ちには答えられないよ」

「へぇ。もしかして好きな人でも、いるの?」

「僕にもよくわからない。けど、このままじゃいけない気がするんだ。紫苑とちゃんと話したいし、透君とのこともちゃんと考えたい。だから……ありがとう!!!」

そういって、僕は彼から離れ去っていく。

携帯でメールを打って、よしとうなずいて見せる。

紫苑についてわかれば、何か分かるかもしれない。

確信はなかったけど、今の僕にはそう思えて仕方がなかった……

きっとそれが、今の僕にとってやるべきことなんだと思った。

だから、気が付けなかったんだ。

「紫苑とちゃんと話したい、か……。面白いな、相変わらず。そうこなくっちゃ、ね……」

透君の気持ちも。彼の告白の真意も。


バラ園の上空―

「ほぉ~~あれが撫子国王女、ねぇ~」

澄み切った青空を、ふわふわと飛ぶ少女がいた。

きれいなほどの赤髪を揺らしながら、興味深そうに地上を見ている。

彼の目には、はっきりと絵里香がうつっていた。

クラスメイトと合流してもなお、彼女の笑顔に曇りがある。

それとは反対に、邪気のない笑顔を振りまく紫苑の姿もある。

「あ~んな人が撫子国の最後の砦なん? パール殿下」

少女が呼びかけたその人物は何も言わず、ただ顔を上げる。

その人物は顔を仮面で覆っており、何も把握できない。

仮面の下、わずかに口元がゆるむ。

「……撫子国の最後の砦を、生かしておくわけにはいかない。一刻も早く排除を開始せよ」

「了解! このガーネットにかかればあんな奴、軽くひとひねりしてやるわ!」

赤髪の少女と仮面の人物はそれだけ言うと、跡形もなく消え去ったのだったー


(続く・・・)

次回、いよいよ謎だらけの紫苑の秘密が明らかに!!!

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