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撫子国王女、育成計画  作者: Mimiru☆
12/26

海の星、桔梗と二人で

二つ目の花があるのは、海の中?

紫苑に何回も任せるわけにはいかない、そういって名をあげたのは桔梗だった。

かくして絵里香は、桔梗と二人で行くことに・・・


「バリアから出ないように気を付けてください。一気に下に下りますので、気分が悪くなったりしたら言ってくださいね?」

真っ青な海の中、進むにつれてどんどん薄暗くなっていくのが分かる。

僕はごくりと唾をのんだ。

桔梗さんの能力のお陰で、まるで透明のエレベーターに乗っているような感覚だ。

上も下も海。自分が立っていることも忘れてしまいそうだ。

油断したら落ちてしまいそうで、震えを隠せない。

「大丈夫ですか、絵里香様」

「え?」

「さっきから震えているように見えたので。怖いですか?」

さすが桔梗さん。鋭い。

隠しようがなかったため、浅くうなずく。

だめだなあ、僕。桔梗さんに迷惑かけちゃってる。

こんなんで撫子国の最後の砦が務まるのかなあ。

「それなら、こうしましょうか」

そういうと同時に、僕の手を桔梗さんがそっと重ねる。

びっくりして、変な声をあげてしまった。

「しっかりつかまっていてくださいね」

すました桔梗さんの笑顔のきれいさに、何も言えなくなる。

桔梗さんの手はすごく暖かくしっかりしていて、大人の人って感じだった。

「紫苑とは、うまくやれていますか?」

急に話は紫苑のことに移った。

まあ桔梗さんとしても、紫苑のことは気になるんだろうなあ。

うーん、どう答えようかなあ?

「うまくやれてる、というかばかにされることが多くてすっごいむかつきます」

「ふふ。絵里香様は正直者ですね」

「だ、だって!」

「紫苑は何事も完璧にできるほどの天才ですから。あの態度でしたら、そう思うのは無理もないですよ」

桔梗さんまでもが天才と認めているとは……そりゃ天狗になってもおかしくないわ。

「昔からそうなんです。何に関しても素直になれない、困ったお方なんですよ」

「桔梗さんと紫苑って、昔からずっと一緒なんですか?」

「ええ。まあ」

ふうん、昔の紫苑ってどんな感じだろ。

やっぱりずっとあんな感じなのかな。

昔から人を馬鹿にしている……なんて性格の悪い!

「そういえば桔梗さん、あんまり地球にいませんけどどこか出かけてるんですか?」

「ええ。カトレアと一緒に、星の探索と敵の様子をうかがっているんです」

「た、大変ですね」

「そうでもありませんよ。お二人が笑顔で、学校生活を送られているのを見たらすごく元気になりますし」

「でも撫子国と地球って結構違うんですよね? 住みづらさとかないんですか?」

僕が聞くと、桔梗さんはクスリと笑みを浮かべた。

相も変わらずきれいで、うっとりしてしまうほどの笑顔……

「確かに少し違和感はありますけど、ここと撫子国は似てますからね。さほど変わりませんよ」

「へぇ~撫子国ってどんなとこなんですか?」

「地球のように海は少ないですが、緑と花に囲まれたとても素晴らしいところでしたよ」

「そうなんですかあ!」

……あれ?

その会話を聞いて、ふと僕はある疑問にたどり着く。

さっきの言葉を一生懸命思い出して、改めて考えてみる。

僕の記憶が正しければ、今花で囲まれてるって言った?

撫子国にも、花があるってこと?

じゃあ、紫苑は……?

「もうすぐ海底につきます。行きましょう」

その言葉に僕の疑問は雲のように消えてしまい、あっという間に花のところへたどり着いたのだった……


「ただいま戻りました。紫苑、これが二つ目の花ですよ」

海底から無事に帰宅した桔梗さんと僕は、紫苑のところに行った。

桔梗さんが二つ目の花を両手で差し出したのにもかかわらず、紫苑は腕を組んだまま僕達を睨むように見つめた。

「……それで?」

は?

「その花を二人で仲睦まじくとりに行ったのか? ご苦労なこったな」

「ど、どうしたの、紫苑?」

「そんなにそいつとがいいなら、これからの星も桔梗と行けばいいだろう」

冷たくあしらわれたその一言が、なぜか痛く突き刺さる。

紫苑はそれだけ言うと、すっと自分の部屋に戻ってしまった。

「申し訳ございません、紫苑が失礼なことを」

「い、いえ、いつもので慣れてますし……」

「お疲れでしょう? 勉強用の部屋にベッドがありますので、つくまでゆっくり休んでください」

桔梗さんは笑顔を浮かべながら、さっと去っていく。

何だったんだろう、あの言葉の意味。

本当、僕って紫苑のこと何も知らないよな。

別に知りたいと思ってるわけじゃないし、興味もないけど。

でも……

『緑と花に囲まれたとても素晴らしいところですよ』

あの言葉が本当なら、あれは何だったんだろう。

色々なことに詳しかった紫苑が、唯一知らなかった花のこと。

今は調べてるせいか、そんなことはないけど。

それにたまに見せる、あの切なそうな表情は……?

僕の疑問は深まるばかりで、紫苑の表情が気になったまま夜が更けていったのだった……


(続く・・・)

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