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プロローグ
シリアスあり、コメディあり、イケメンありの作品になってます。
お楽しみいただけると、ありがたいです。
燃え盛る炎、音を立てて崩れていく建物。
むなしく散ってゆく、人々の命……。
荒れ果てた砂漠の地の果て、少年は一人立ち尽くしていた。
砂埃でのせいで黒くなった長い髪が風でなびいている。吹き荒れる嵐の中、身を任すようにして。
もはやこの地に、何があったかさえ分からない。
辺りは一面の砂漠、人々が死んでいった形跡を見せつけるように足元には骸骨だけがぽつんとある。
誰もいない。
何もない。
そのことが、彼の心を圧迫する。
国があったことなんてみじんも感じられない。
だだっ広い砂漠が、広がっているだけー。
「アイリス」
砂嵐が吹き荒れる靄の中、彼に呼びかけるものがいた。
少年は振り返る。姿ははっきりとは見えないが、そこに「彼」がいるのは分かった。
「王妃達の遺言は、忘れていませんね?」
「……無論」
「では行きましょうか。この国の最後の砦を探しに」
二人の姿は一瞬にして消え、あとには何事もなかったかのような砂の台地が広がっていただけだった。