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無題

作者: 札中A斬


 朝、八時前に眠った私は夕方に目を覚ました。

 テレビをつけると、画面右端に奇跡の生還の文字。

「生きてたか」

 ついて出た言葉。

「生きていてほんとによかった」とコメンテーターやがっこの校長。どこか響かない。

 次いで父親が画面に映し出された。

「これがあの、父親か」

 私はしつけと称した彼の虐待とも言える行動に憤慨していた。しかし、囲み取材を涙ながらに受ける彼。そこから読み取れたのは自分の行動、してしまったことにたいての後悔。言葉にしなくてもそのくしくしゃでやつれた顔がそれを物語った。

「何の面下げて」

 私は用意していた。投げつけてやろうとした。その言葉をそっとしまった。

「やまと。お父さん。ほんとごめんな」

 もらい泣きをしてしまった。

 感慨深さに浸っていると、画面には大和くんが寝泊まりしていた小屋。食べ物を口にできず水だけでしのいだ。保護した自衛官が差し出したおにぎりを勢いよく頬張ったと言う。画面が変わり、小屋前の林道にジャーナリズムを着飾った男。その男によると、幅一mの沢を飛び越えたらしい。そのリポートに混じるヘリコプターの音。またっくもってお金のむだ使い。

 画面はスタジオに。キャスターの顔が神妙から笑顔に。そして、ショッピングモール中継。それらは機械的に切り替わった。どこか物悲しさを感じた。

 感動的を自称する映画、ドラマよりも私はその10分程の報道に心動かされ、涙した。

 スタンドバイミーのような体験をした大和くん。



 五月下旬の函館地方は暑かった。

 家族は近所の河原に出掛けた。「こら、やまと」

 父親は車に向かって石を投げた息子である少年をしかりつけた。

 父親はイライラしていた。ハンドルを指で叩く。

 態度を改めない少年、父親は林道にハンドルを向けた。 

「やまと。言うことを聞かないと駒ヶ岳に置いていくぞ」

 それでも、態度を改めない少年。父親は少年を林道に下ろした。動き出す車。複雑な表情の母親と少年の距離が遠くなる。少年は車を追った。バックミラーを見ながら運転する父親はブレーキを踏む。

「早く乗りなさい」

 車に乗った少年は押し黙った。表情はふてくされてる。父親はバックミラーに映る少年を見た。

「なんか言いたいことあるの?」 おさまりが悪い父親は車を止めた。そして、正義感の強い父親は反省が足りない少年を車から下ろした。父親はただだた息子に反省してもらいたかった。母も後ろ髪を引かれる思いを残してそれに同意した。

 下ろされた林道。車が小石を弾き飛ばしながら動き出した。バックミラーには小さくなる少年、ポツンと立つが少年が映った。

 人工の物が見当たらない。少年は辺りを見回した。

 父親のしつけから始まった七つの少年の長いサバイバル。

 五分後、その車はそこに戻ってきた。しかし、息子の姿が無い。「おーい。やまと」

 父親は窓を開けて大きな声を出した。声は林道に空しく響いた。甲高い音、エンジン始動の音を上げて車が加速をしはじめた。あてもなく動いた車。いるであろう息子を追って。

 一方、少年は山道にいた。その声も、その音も聞こえなかった。あたりが少しずつ暗くなっている。さらに山道を進むと大きなゲート。自衛隊の演習場のゲートだった。少年は水筒の飲み物を飲み干してから、その脇をすり抜けた。ゲートの先は車の轍はあるが低い草が繁る。恐る恐る進む少年。棘のある草が細いその足に傷をつけた。虫嫌いな少年、やまみちなんてもっての他。そんな少年の足を進めた原動力は両親への怒り。二度も置き去りにしたことに腹をたてていた。少年は興奮状態にあった。


 ヘッドライトが薄暗くなった林道を照らし、車は走る。

「ねえ警察いこ」 

「さっきのところに戻ろう。山道に入ったかも」

「やまとは無理だって。虫もさわれないのに」

「そうだけど、とりあえず戻ろう。戻ってるかもしれん」

 車はUターンをした。


 キョロキョロしながら、少年は演習場を進む。風の音にも反応する。そう、辺りはもうすっかり暗かった。

 ぐんぐん下がる気温。獣や鳥の泣き声がした。現代の人間とって暗さは恐怖。そこは大人でも逃げ出したくなる程の場所だった。しかし。少年には怖さを感じる余裕はない。ただただ進む。一m程の沢なんかなんてことないと飛び越えた。すると、紐らしきものが横に伸びている。少年の歩くスピードが上がった。

 少年は紐の前で止まった。トラロープは進路が塞いだ。トラロープの下はやや緩やかな丘になっている。残り少ない体力の少年はそこを降りるのをためらった。が、その下にはカマボコ型の小屋が二つ見えた。意を決して丘を下った。運動靴は露で濡れている。やっとのことで下りた。

 カマボコハウスの前にはシンクのついた水道。少年は冷静だった。ゆっくりと蛇口を捻る。水は白い色から透明に。シンクに水が流れる音が思いの外響いく。まず、少年は水筒に水を入れてから水道口をつけた。


 その頃、父親は警察署にいた。「お父さん。ほんとに山菜取りしてた?」

 深く椅子に腰かけた警察官は父親の目をじっと見た。

「してました。……で、捜索はいつから動くんですか?」

 仁王立ちの警察官と椅子に腰かける警察官が目を合わせた。

「まあまあ」

 仁王立ちの警察官が言った。

「お父さん。あそこに山菜なんてありませんよ。アイヌネギも花が開いちゃってるから」

 椅子の警察官が軽く机を叩いた。

「……」

「お父さん。ほんとのとこ、言いましょ」

 仁王立ちの警察官が父親に顔を近づけた。

「……」

 父親は唾をのんだ。

「じつは、置き去りました。しつけなんです。ほんとうです」

「しつけ?」

「しつけって言うなら、山菜取りなんて嘘はダメだよ。お父さん」「すいません。虐待とかになると思ったんで、ほんとすいません。自分が情けないです」

「まあ今はそこを追究してもなにも始まらないんでね。無事を祈りましょう」

「はい」

 父親はうつむいた。ノックの音鳴ると、全員が扉に目を向けた。「失礼します」

「はーい」

 仁王立ち警察官の低い声。若い警察官が入ってきた。

「捜索。朝五時に決まりました」

 小屋の入り口に立つ少年。小屋の中をのぞいてからドアノブを握った。ノブをまわすと、扉が開いた。南京錠は外れていた。少年は小屋に入ると目をキョロキョロ動かした。電気のスイッチを探した。

「おっ」

  少年はストーブにぶつかる。  結局、蛍光灯もストーブつかなかった。

小屋の奥にマットレスがあった。マットレスは冷たい。しかし、暖をとれるものは、マットレスだけ。少年は山積みのマットレスから二枚取りだした。水筒を外してからくるまってみた。徐々に体温が上がる。目を閉じると次第に眠りにつく。

 

  翌朝。

「おーい。やまと」

  山道のあちこちで響いた


  少年は目を覚ます。まだねむいのでもう一度眠った。再び起きた少年はたらふく水を飲むと、水筒を持って小屋の向こうへ。しかし、なにもない。あきらめて、小屋に戻る。頼みの綱、水を飲むおなかがぽこんと出るほど大量に。  あっという間に日が暮れた。  捜索一日目を終える。捜索本部は焦る。いわゆるデットラインを意識していた。


  捜索二日目。険しい山側には行かないとの本部の判断。民家側を捜索。


  カマボコ小屋に車が泊まる。  車から下りた二人の男は小屋の外をぐるりと回わる。

  少年のいる方の小屋を回った若い男性がシンクに目をやる。シンクに水滴がついていた。

「おい。そっちどう?」

  向こうから声が聞こえて来た。

「異常ありません」

「二ヶ所とも施錠見た?」

「はい」

  その男性はシンクを離れた。

  迫るデットライン。

  必死の捜索は続く。

  マットレスにサンドされた少年は真っ暗の小屋で天井を見る。わずかに揺れるチェーンで吊った蛍光灯を眺めた。

  自責の念にかられる父親は眠れないでいた。


  デットのラインを過ぎた捜索はローラー作戦に。

  それは少年の遺体を探すように。

  雨の日が続く。少年は小屋にいた。外にはでない。天候もそうだが、やはり水だけでは体力が続かない。少年は憔悴しきていった。雨の音が気を紛らす。命はいつまで続くだろうと考えながらその音を聞いた。

  六月三日。冷え込んだ朝。少年は空腹で目を覚ました。

  空腹で眠る体力もない。かといって水道に行くのも億劫で。

  それから数時間、小屋のそばに車が泊まる。

  その音が耳に届いた少年はマットレスから出た。

  小屋に近づく男性ら。

  少年は水筒を肩にかけてから入り口に急ぐ。

  小屋の外、男性は施錠を外すとノブを回した。

  小屋に差し込む光。少年は男性にしっかりと目を合わせた。

「やまと君かい?」

「はい」

「みんな心配してるよ。帰ろう」「はい」

  少年は小さく頷いた。



  これは父親のサイコ性が引き起こした事件ではない。

  感情の掛け違いが起こした悲劇である。



小説の体をなしてないとは思いますが書かずにはいられませんでした。

校正も充分ではないです。

ご迷惑をおかけします。


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― 新着の感想 ―
[一言] ネットニュースで見知った程度だが、この少年7歳とは思えない行動力。無事だったからよかっったものの、よくもまぁ創作なんてできたものだなぁと思う。大したお人だ
2016/06/04 07:36 退会済み
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