効率化
ー転送が完了しましたー
ここから6時間、一心不乱に労働する前に装備の確認をする。
靴、履いてる。
タオル、首にかけてある。
軍手、してる。
スマホ、ぽっけに入ってる。
スマホは圏外になってる、写メ撮ってあとで現実戻ったときに見てみよう。逐次撮影を行うために地面に置いておく。
「ステータス!でろ!!」
出ない。ステータスはない。スキルも確かめておくか、だいたいスキルってのがあるらしいし。
「スキル!!スキルでろ!!」
ースキルを使用しますか?ー
「する!スキル!!」
ースキル「耳の穴に耳を収納する」を使用しますー
「ひゃあ!!」
ー耳のあたりに力を入れていただければ以降も使えますー
「ありがとう!すっげえ!!」
俺は耳に入った耳を写メった。すげえ。すげええ。
次はアイテムのあれか。
掘り出した資源は全部光になって回収されてる。
レアなものとそうでないものは確かに区別されてるし、どこかに格納されているのかもしれない。
「アイテム!でろ!!」
ー申し訳ありません。回収した資源は全て自動的に買い取りしていますー
「そうか、所有権はないんだな、俺が使える資源はないの?魔物出すとか」
ー申請頂いたものを魔物の召喚に使用することは可能ですー
「わかった、俺が掘ったものの内訳が知りたいです、何がいくらとか、どれを申請に使えば魔物出してもらえるかとか」
ー情報端末を確認しました、リストを転送しますー
「スマホか、スマホなのか。わかる、これわかる!なろうで読んだ、ipad持って転生するやつと一緒だな!」
そうえいばなろうって、不遇スキルって言ってもだいたい強いんだっけな。俺の耳の穴に耳を入れる不遇スキルも強くなるんだろうか。
「確かに見覚えのないアプリが入ってる!」
ー以降、申請はそちらのリストからタップでお願いしますー
「忙しいのにありがとう!やっとく!!」
さて、リストを確認すると、だいたい見たことない名前の鉱石ばっかだが、昨日の合計の所に掛け算して1000って書いてあるな。
申請できるやつは多分明るくなってる文字なんだろうな、タップするとゴーレムの申請がでてくる。これレンタル料金みたいに資源がかかるんか。辛いな・・・
俺は一番コストの低いゴーレムを1体召喚してみた。小六の子供くらいの高さで、ソフトバンクでお馴染みのペッパーを岩っていうかアルミニウムで作ったみたいなやつがでてきた。
「でたな!お前の名前はアルミニ!小さくてアルミ製だからな。よし、ツルハシ貸すから壁を掘るんだ!!」
アルミニがツルハシを受け取り壁を掘り始める。なかなか良い感じ。もう一本ツルハシがあればなと思うんだがな。アルミニが掘るごとにリストに表示される鉱石を見て、金勘定をしてみる。
なるほど。これがチェーン店経営者の気分か。悪くないな。俺はバイト代払ってそれ以上の収益を得ている。つまりこれがマルクスが言っていた搾取ってやつか。アルミニは対価以上に働いても、対価以外受け取ることができない、俺はその余剰したものを全て手に入れることができる。これは熱い。胸が熱くなる。
堕落した気持ちを味わっていると、1時間してツルハシの持ち手が壊れた。さらに短くもたせたが、どうもアルミニの金属製の握りがツルハシの木製の柄を破壊してしまったらしい。時間一杯までなんとか粘りながら、騙し騙し掘ってもらおう、最悪素手で壁を殴らせれば良い。
俺は素手で殴らせても掘れるかも?と思い、もう一体アルミニを召喚することにした。時給でだいたい2000円だから、1時間ごとに4000円俺は払わなくちゃならない、しかし掘り進んでる感じから言って、いやそんなんまじビビたるものって感じ。
素手で掘れることも確認して、今ある資源で申請できる限界の6体を召喚したが、ほとんどスペースがなくなった。少し掘り進んだと言っても、未だに4畳半。とにかく壁全面を掘らせることにした。
硬い壁を掘り進むと、だいたい1時間半くらいでアルミニたちの拳がなくなる。送還をクリックすれば戻せるようだが、もう一回召喚できるとも限らないので、とにかく腕がなくなるまで掘らせることにする。
ーお疲れさまでしたー
「みんなお疲れ様!!」
一体送還させてみたが、再度の申請はできなくなっていた。召喚に必要な資源はあるが、その上限が送還によって増えることはなかったので、ここは慎重に行くのが良いのかもしれない。
とりあえず手数を増やせば金になることはわかった。へへ。まだ壁に体当たりさせられるアルミニは残しておいて、ボロボロになったやつは送還し、俺は現実世界に戻った。