ダンジョンへ
夜が来る。俺は東京の家賃3万円、風呂なしトイレ共用の3畳間で目を覚ました。
地元が嫌いだった俺は、高校を出てすぐ東京へ出てきた。
地元にいた時にネットで調べた月給30万のキャバクラの求人につられていったが、タバコの臭いがきつくて三日でドロンしてしまう。
ーダンジョンへの転送を開始しますー
俺は昨日からダンジョン作りを始めている、きっかけはわからない、そのあたりのことを思い出そうとするとモヤがかかってしまうが、絶賛ニート中、職場に適応できない俺はどうしてそうなったかよりも、これからどうなるかに思い馳せワクワクが止まらない!!
ーダンジョン掘って金稼ごうー
こんにちは、貴方は今から与えられた領地の地下を掘って掘って掘りまくって、掘った階層や掘り当てた資源、育った魔物のレベルなどによって現金を手にいれることができます。
ーダンジョン掘って金稼ごうー
初日。俺はツルハシを持って必死になって壁を掘った。
最初に俺が立っていたのは、部屋の大きさと全く同じな石でできた石室。
掘れば金になる、そう考えて俺は手に持たされていたツルハシを壁に向かって振りかぶり、30分もしないうちに手の皮がズル剥けて掘れなくなった。そのまま時間が来たようで俺は現実世界で朝を迎える。6時間。俺があっちにいられるのは6時間。多少壁が掘れたと思ったが、部屋の中に3万円落ちてた。
つまり、あの30分未満で3万円稼ぐことができたわけだし、こっちに戻れば手の痛みもない。あっちの体はこっちに引き継がれないことがわかった俺は、かなりワクワクが止まらないわけだ。
ー転送が完了しましたー
自発的にやること、しかも十分すぎる対価がある仕事。やる気が湧いてくる。
じっと手を見る。手のひらの皮が厚くなっていて、昨日の痛みもない。なるほど。
今日1日、今からの6時間を必死に、それこそ死ぬ気で過ごせば、明日、俺は楽になれる。
普通に1000円のランチが食える。靴だって新しいの買える。
「うええええいい!!」
俺は掘った。昨日は体が疲れるより先に手の平が参ったが、今日は違う。俺は靴下を脱いで手に嵌める。手袋代わりに使って、必死に掘りまくってやる。
「うううううううう!!!」
ーお疲れさまでしたー
40cmくらいは掘れた。途中にダイヤみたいなもんが出てきたが、掘れた先から他の岩と同様に光って消えていった。ただ、その光が通常白、資源は青ってのがわかったから、これはやる気にもなる。
俺は侘しい部屋に戻って、目の前に積まれた札束を見て、足が震えるのを感じた。
やばい。
100万の束が12個ある。
これは、1200万円だ。
俺は人生で初めて失禁した。