9 旅立ったのはいいけれど 4
泣いているあたしをおんぶして,ベァーさんが歩く。
「よしよし・・・」
あやされている?あたし。拾われてきたばかりの頃,ご主人様がなでなでしてくれながらよく言っていた言葉だ。
「ぐふっぐふっ・・・・」
ようやく涙が止まりそうになった頃,
「あぁっ」
「君!!!!」
「ミャアコを離せ!!!」
こ・・・この声は・・・
「ロートぉ!!ズィルバーぁ!!」
あたしはベァーさんの背中から滑り降りた。
「こっちに来い,ミャアコ!!」
・・・・助けてくれた人に,いかがにゃものか・・・
「おやまぁ。あんた達がこの子の保護者かね?」
焦る二人の声にかぶせるように,ベァーさんののんびりした声が響く。
「う~ん。保護者がにゃにかわかんないけど,この二人があたしと一緒に旅しているロートとズィルバーだよ。」
「そうかそうか・・・」
あくまでくまのベァーさんは,のんびりとしている。
「ロートぉ!!ズィルバーぁ!!あたしね~」
「おまえは~!!勝手にどこに行っていたんだ!!!」
ズィルバーぁ!!!話をさせてぇ~!!!
あたしがまた,涙目になってきたのを,ベァーさんとロートが気づいてくれた。
「ズィルバー!!ちょっと静かにしなさい」
と言うわけで,迷子を保護してくれた(助けてくれたことをこう言っていた)ベァーさんに御礼を言う。
それから,熊型獣人の集落へ行く道をロートが尋ねると,
「あぁ,ほっと・すぷりんぐ・にゃあにゃあ・・の人たちかね。」
もしかしたら,ベァーさんが迎えに来た人って,あたし達のこと?
もしかしにゃくても,あたし達を迎えに来たって言うベァーさんに,「信用できにゃい発言」を黙っていてもらおうと,あたしは焦る。
でも,ベァーさんったら,言っちゃうんだから・・・
あたしは今,ちょっとした「針のむしろ」ってやらに座っているらしい。
よく分かんにゃいけど,ベァーさんがそう言った。
立って歩いているのににゃ。変にゃの。
二人の冷たい目に,しょうことにゃしに,にゃんではぐれたか白状したら,ロートとズィルバーだけでにゃく,ベァーさんもあきれていた。
あたしが追いかけた鳥は,迷わせ鳥って言うらしい。わざと獣人の前を飛んで,追いかけていくと,穴に落ちたり,崖(にゃに?)から落ちたりして大変なことににゃることが多いんだそうだ。
「無事に保護してもらって良かったじゃないか。」
ロートが言う。
「うん。」
ここは素直に頷くよ。
・・・
そうこうしているうちに,目的地の熊型獣人の集落へ到着した。
熊型獣人の集落は,木を組み合わせた家々が,広場を中心に伸びている道の両脇にずらっと建っていた。
集落の周りは柵(にゃに?って聞いたら,ベァーさんが柵だって教えてくれたよ。やさしい。)で囲ってあって,出入り口にはベァーさんより一回り大きい熊型獣人さんが立っていた。その人は,あたし達をじろりと見て,それからベァーさんを見て,頷いた。
ロートが何かを見せるとにっこり笑って,村長さんのところに行け,と言っていた。村長さんって誰かな~。
・・・
集落の中に入ったら,珍しいからついきょろきょろしちゃう。
「きょろきょろするな,まっすぐ歩け。」
相変わらずズィルバーは意地悪なことを言う。
村長さんの家は,ひときわ大きにゃ家だった。
しばらくここでお世話ににゃるらしい。
村長さんは真っ白な熊型獣人だった。やっぱり首も,腕ももふもふだ。
村長さんの奥さんという人は髪の毛が茶色だった。でも,奥さんの方は,首とか腕とかはあたし達と同じで,普通の人みたいにつるつるだった。この違いってにゃんだろう?
「今晩は,お風呂には入れるかにゃあ。」
そう言ったら,
「その風呂を探しに来たんだろう」
ってズィルバーに怒鳴られちゃった。
村長さんの子ども達はあたしより少し上の,奥さんそっくりの女の子(お姉さんって呼んでね,って言われたよ。うれしい。)と,まだ2歳だって言う,ほんとにもふもふしたかわいい白い小獣だった。
「おむつがまだとれないのよ。」
って奥さんが言ったけど,おしりだけパンツでよちよち寄ってくる姿のかわいいこと・・・
「ミャアコちゃんは,都会の子なんだね。」
「にゃんでそう思うの??」
「だって,黒の髪の毛と,茶色の耳と,白と茶色と黒の混じり毛のしっぽは,ふさふさだけど,あとはつるつるだもん。」
驚いたことだけど・・・あたし,自分のしっぽの先っちょが黒いってご主人様達が言ってたから知っていたけど・・・今の自分の色を初めて知ったよ。ロート達は,あたしの色を教えてくれにゃかったんだもん。
そのとき,姿の違いについても教えてもらった。
このあたりは冬はとても寒くて,深い雪(・・・白くて冷たくて,空から降ってくるものらしい。ズィルバーが偉そうに教えてくれたけど・・・信用できにゃいにゃ~)に覆われるんだって。それで,このあたりの熊型獣人や鹿型獣人,兎型獣人などは,もふもふ度が高いんだって。
奥さんは,村長さんが,都会ってところに出かけたときに知り合って,そこから嫁に来たんだそうだ。
「ふうん。」
正直,よく分からにゃい言葉もあったけど,にゃるほどって感心しちゃった。
そういえば,お姉さんに,しっぽは?って聞いたら,熊型獣人のしっぽは短いんだって。だから,普段は服の中に隠れているんだって教えてくれたよ。にゃるほどね~。今日だけでずいぶんお利口ににゃった気がするよ。えへん。
冬が厳しい分、収入の道が限られるんだって。・・はっきり言って,言ってることの半分も分からにゃい・・・それで,このあたりにも温泉を掘って,都会からお客さんが来るようにしたいらしい。
そうすれば,このあたりの獣人達も,もっとお金を儲けることが出来るし,都会から,奥さんのお父さんやお母さんを呼ぶこともできるからだって。
「おじいちゃんやおばあちゃんに会いたいの。」
お姉さんが言う。
にゃるほど・・・
美味しいご飯を食べにゃがら,そんにゃことを,奥さんやお姉さんと話した。
明日から,あたしの初めての「ほっと・すぷりんぐ・にゃあにゃあ」の活動が始まる・・・
今夜は,早く寝ちゃおう。
「俺のそばで寝るなよ。」
・・・・
ズィルバーの意地悪。