7 旅立ったのはいいけれど 2
目を覚ましたら,超不機嫌そうにゃズィルバーがいた。
「にゃに?」
ズィルバーは,あたしに,びしょびしょに濡れたしっぽを押しつける。
いやだぁ。ズィルバーもあたしの仲間にゃのね。
「・・・んなわけねえだろ!!!」
何怒ってんのかなにゃあ・・・あれ。あたしのしっぽ,今日は濡れてにゃい。上手にしゃぶったんだね。のほほんと言ったら,
「おまえがしゃぶってたのは俺のしっぽ」
「へ?」
「お・ま・え・は,俺のしっぽをしゃぶって寝てたんだ!!!」
・・・おかしいな。あたしのしっぽの味がしたのに。
「ほらほら,いつまで騒いでいるんだ?さっさと支度して出ておいで。
いつまでも出発できないぞ。」
外へ出たら,テントの周りの草が少し焦げていた。
不思議に思っていたら,
「夕べは,夜泣き鳥が来たみたいだね。」
「相変わらずこんな時だけは,えぐいな。」
「強力な結界だからね。」
あたしには分からなかったけれど,夜中に『夜泣き鳥』って言う鳥が来たらしい。この鳥は,主に子どもを食べちゃうんだって。恐・・・
でも,ロートの張った結界に触れて燃えちゃったんだって。
「ロートも火の魔法が使えるの?」
って聞いたら,おばあさんから教えてもらった結界魔法で,おばあさんからもらった石を,テントの周りに置いて使うんだそうだ。結界を張ると,その結界に,自分たちに対して悪意のあるものが触れると,そのものが,燃えてしまうんだそうだ。
なんか怖い魔法だよ。夜中にトイレに起きにゃくて良かった。
「おまえみたいなお子ちゃまには,えぐいとこや,怖いとこは見せねえさ。」
ズィルバーが言った。そしたら,ロートが,
「おまえも,ばあさんにさんざん言われていたな。」
って言ったので,笑っちゃった。ズィルバーは,ちょっとふてくされていたけれど・・
そんにゃことを言いながらも,ロートはテントを片付けているし,ズィルバーは朝ご飯を作っている。手早い。テントをどうするか・・じ~っと見る・・・
あれぇ・・・テントが消えた。にゃぜぇ???
ロートはにっこり笑って,
「大丈夫。ちゃんとあるよ。」
ロートのリュックは,あたしのより,にゃんかいろいろ収納できるらしい。どうにゃっているんだろう。
朝ご飯は,硬いパンと夕べの残りのシチューだった。硬いパンをシチューに浸して柔らかくして食べるらしい。でも,久しぶりの「かりかり」。あたしはそのままかりかりと食べた。
火の跡を足で払って消してから3人で歩き出す。順調にいけば,あと3日で次に呼ばれているまちに着くらしい。
2日目も順調に歩き進んで,3日目・・・山の中で・・・事件が起こった。