5 なんでこんなことに 5
このぴちぴちの子猫のどこがばあさんだ!!!って言いたかったけど
「そうと決まればさっさと旅立ちの準備だ!!」
って言う二人に連れられて,まちに出た。このまちは小さいけれど,温泉のおかげでこれから栄えるだろうって宿屋の人が言ってた。
経済効果が・・・とかにゃんとか,にゃんか難しいことも言ってたけど,よくわかんにゃいからスルーした。
今,洋服屋さん。いつまでもズィルバーのシャツ1枚じゃ心許ないし,獣人になったからには靴がいるらしい。
「それはにゃに?」
洋服と引き替えに丸いものを出すロートに聞くと,お金だと言う答えが返ってくる。
「お金ってにゃに?」
「そこからかい!!!」
ズィルバーがわめく。
「どこのお姫様だよ。」
ズィルバーはあたしのことにゃんだったとおもってんだ。
「あたしは獣人じゃにゃかったんだよ。獣型だったんだよ。」
最初の話をちゃんと覚えていたので,そう言ったら妙な顔をしていた。
ロートは分かっていたみたいで,
「形が変わったから,大変なんだよ。ズィルバーも,気を遣ってやりな。」
って言ってくれていた。
ロートが選んでくれた,すとんとしたおしりまでの長さのチェニックという上着と,ズボンって言う膝までの長さで,下に着る物と,靴下って言うものと,靴を身につけた。
ご主人様が着ていた物と似ているにゃぁ。チェニックは薄いグリーンに,ピンクの花模様が散っていた。ズボンは濃い焦げ茶色。靴下は灰色だって。色のこともロートに教えてもらったよ。
そして靴。こちらはズィルバーが選んでくれた。ロートの髪の毛みたいな色だ。赤い編み上げ靴だよって,ロートに教えてもらった。この色が赤にゃんだ。ご主人様が,バラの花を見て,きれいにゃ赤だねってあたしをにゃでながら言ってたけど,あのときはにゃんかよく分からにゃかったその赤が今,鮮やかに見える。
1着じゃ心許にゃいからって,3着の着替えと下着も数着,それに替えの靴とそれらを入れる黄色いリュックを買ってもらい,あたしはご機嫌だった。あたしのしっぽもうれしいのかひょこひょこ動く。
宿屋に帰ってきて,夕飯を二人の監視付きで食べ,(いちいちうるさいの。いいじゃにゃいの,ちょっとくらい。)温泉のお湯につかったら,もう寝る時間。
そうそう。温泉につかるときは,トイレの使い方を教えてくれた人が付き添ってくれた。
まだ,建物が出来ていにゃいから,簡単な囲いしかにゃかったけれど,ちょっと臭くてしょっぱいお風呂で,ほかほか芯まで温まった。体はちょっとぺたぺたするけど,つるつるになった。
あたしはお風呂が大好き。
ご主人様達は猫の体には良くにゃいからって,時々しか入れてくれにゃかったけど,入ったら上がりたくにゃいのよ~。
いつも,ご主人様達が,「おしまい。」と言って抱き上げようとすると,あたしは嫌だから,みぎゃ~って泣きわめいたっけ。
でも今日は付き添ってくれる人に悪いから,いつもより早く上がっちゃう。
毛がしっぽと頭にしかにゃいから拭くのも簡単・・・でもにゃかった。
この世界にはドライヤーがにゃいみたい。
そういえば,車も見ないにゃー。
電灯もにゃいみたいにゃ気がする。
まあ・・・あたしは暗いとこでも目が見えるから。
家にいたときより薄暗いけれど,・・・そういえば,薄暗くても,誰も気にしていにゃいみたい。
寝るときには,ズィルバーのシャツを借りたまま・・おいこら,返せよって声を無視して・・・
お休みなさい。あたしはくるりとまるまって,しっぽを捕まえた。至福のひととき。あたしはしっぽの先をしゃぶりながら寝る癖がある。ああ幸せ・・・あら・・しょっぱい。あたしのしっぽ。先っちょが黒くてしゃぶりだこができている・・今日のしっぽは・・・しょっぱいけど・・・しょっぱいけど・・・
・・・zzzzz・・・
『古代海水は臭う。だが,その塩分は体にまといつき,皮膚の状態を良くする・・・色は黄褐色。しょっぱすぎて飲用には向かない。』・・げっ・・・あたし飲んじゃったよ~
うちの猫は,子猫の時からしっぽをしゃぶりながらねます。
大人になった今でも。・・・捨て猫にはよくあるらしいのですが,どうなんでしょう。