2 なんでこんなことに 2
ぼっちゃ~ん
わがはいはねこである。名前はまだない。
違~う!!
溺れている。
しょっぱ~い
鼻が痛いよ~
た・・・たすけて~
温かいお湯。でも溺れている。
気持ちよい温度。でも溺れている。
ぶくぶく・・・
・・・・臭素・ヨウ素・古代海水・・・誰の声?・・・
・・・・・
気がついたらふかふかのお布団の中だった。
「気がついたかな?」
「はい気がついてますっ・・・てだれ?」
あたしの顔をのぞき込んでいたのは・・
きれいな赤い髪をした男の人だった。
赤・・・あたしは赤ってどんな色か知らないから,あとで赤って色だよってこと知ったんだけど。きれいな色だなってそのときは思った。
ご主人様達とおんなじような。でも,耳が違う。ご主人様達の耳は目の横に付いていたように思うんだけど,その人の耳は頭の上の方に付いていた。しかも。あたしの耳に似ている。その耳が時々ぴくぴくってうごくから,本能があたしを刺激する。
思わず飛びつこうとしたら,
「これこれ,やめなさい。」
すぐに軽くいなされてしまった。
「まだまだ子どもだね。」
別の声がする。銀色の髪の少年だ。この子も頭の上に耳が付いているけれど,あれぇ・・・垂れ耳だよ。
「8歳か9歳くらいかな。」
赤い髪の人が答える。
「あたし6ヶ月だよ。」
思わず言っちゃった。言葉が通じるわけないのにね。
そしたら驚いた。
「向こうの世界で6ヶ月の子猫か。
やっぱり8~9歳ってとこだな。」
あたしの言うこと分かるの?
ぐう・・おなかが鳴った。
「おなかすいた・・・」
あたしは朝から何も食べていない。
いや,さっきお湯をたらふく飲んじゃったけど。
お湯はご飯じゃないよね。
二人にクスクス笑われちゃったけど,まだ子猫です。ご飯は大事。
起きなさいって言われて初めて気がついた。あたしの毛皮どこにいった?
慌ててしっぽを確かめる。ある。ちゃんと三毛模様の大好きなしっぽだ。
手を見る。つめが・・・変。この手はご主人様とおんなじ。人間の手だ。
びっくりしているあたしに,ほらって言って,頭から何かすっぽりかぶせられた。
「俺のだからちょっと大きいけど,ワンピースみたいに着られるだろ。」
銀髪垂れ耳少年が言う。
「くしゅん」
くしゃみが出る。毛皮がないと寒い。
お布団の所に台が運ばれてきて,その上にいろんな食べ物がのっかってる。
食べちゃ駄目だよっていつも言われてたんだけど・・・これ・・食べて良いの?
「食べていいの?大丈夫なの?」
「良いから黙って食え。」
って銀髪の少年。わあい。
皿に口を付けていつものように食べようとしたら
「これ,お行儀が悪い。」
って赤い髪の方が言うんだ。
そんなこと言われてもあたしにはどうしていいかわかんない。
きょとんとしていたら,
「食い方を知らねえ?まさかな?」
「いや。ありえますよ。」
って。
それから二人がかりで食べ方や食べるときの決まりを教えられた。
に・・・にゃぁ・・・心の中でつぶやく。何でもいいじゃない,食べられれば・・・
その後はトイレだ。これもへこんだ。
何しろあたしは由緒正しい(??)三毛猫。つまり女の子。
対して二人は男の子。
二人ともかなり悩んで,厨房から女の人を連れてきてくれた。
ありがとう。おかげで人間のトイレの使い方を覚えたよ。
それにしてもここはどこだろう。
猫,好きです。