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氷と紫の刃

題名の刃は「やいば」と読みます、はい。

 「協力者ビーストテイマーになっちゃわない?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあああああああああああああああああ!?」

俺は鮫の時とは比べ物にならないくらい間抜けで、かつ大きい声で叫んだ。幼少期の俺の姿のやつが耳を塞いで宙で縮こまる。

「う、うるさいよ。いきなり・・・」

そいつは片目だけ開いて言ってから、両手を耳から離した。

「す、すまん・・・・」

こうなるんだろうな~と予測はしていたが、あまりにも軽すぎて驚いた。

「でもさ?それ以外に方法がないんだよ?ピースの君を襲っているモンスターから逃げ出す方法」

「そ、そうだけど・・・・・・・・・・・」

俺は俯く。それを覗き込んできやがる。

「死んじゃうよ?」

死にたくはない。まだ15年とちょっとしか生きていないのに、もう死ぬっていうのか?嫌だな、それは。

「死にたくはない・・・でも・・・・・」

「『でも』、どうするの?君にはこの状況を打破する力があるの?・・・ああ、近くにいる肩までの髪と眉毛の上で切られたパッツンの前髪が特徴的な少女が助けてくれるのを待つつもり?」

・・・・?誰だ、そいつ?

「早く決めなよ。本当に命が危ないよ?」

少年の声から無邪気さが消え、一トーン低くなった。

協力者ビーストテイマーになれば助かるのか・・・?」

「ひとまず今回は!」

元の高さに戻り、無邪気さも戻った。・・・萌海たちも協力者ビーストテイマーなわけなんだろ?じゃあ、もしものときはあの二人に頼れる。徐々に、『死んじゃうよ?』という言葉が頭の中を伝染し、支配して行く。・・・・・・・・・・死にたくない。

「なるよ・・・」

「声が小さい」

ぐっと汗ばんだ手を握る。

協力者ビーストテイマーになるよ・・・・」

「声が小さい!!」

少年の声は、全くの別人のものになっていた。昔のアニメによくいる強すぎる年寄りのような、気合のある大きい声だ。

「俺はっ!!お前らの戦いに協力してやるッてんだ!わかったら俺を、協力者ビーストテイマーにしろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「叫べ!!わしの名はクエレブエだ!」

〈結友音side〉

 「あ、あのぅ・・・・鮫さん?」

このままでは名も知らない選ばれし者さんが死んでしまいますぅ!!うああ、お兄ちゃんとか氷野先輩とか助けに来てくれないでしょうか!?そう思った瞬間、突然少年の声が響きました。

「アストラルモード・クエレブエ!!」

〈勇乃side〉

 「きたっ・・・・・!!」

あの紫恩バカ、やっとアストラルモードになりやがったさ。遅いんだよ、待ってるこっちの気持ちにもなってみろって感じだし。

「・・・・・勇乃、どっちが相殺する?」

萌海が聞いてきた。まだあいつが夢の天空と聖なる森のどっちの協力者ビーストテイマーかわからない。夢の天空だったときは昨日僕のことを『ショタ』とかほざいた罪を償わせたい。まぁ、夢の天空だったときに僕があいつをころせるような状況にするためには、僕がこの仕事を受け負うべきかな。

「僕がやる。アストラルモード・ペガサス!!」

僕の能力は、ペガサスを一頭呼び出し従わせること。僕は右目だけに入れている黄橡色のカラコンを外す。現れるのは真っ赤な目。そう、僕はオッドアイなのさ。そして僕は愛馬・・・全身真っ白、赤目愛ペガサスのエリメレーゼに命令する。

「エリメレーゼ、直ぐに戦えるようにしておいて」

「・・・・・・・一応、念の為に私も。」

萌海もアストラルモードになる気か。まぁ、萌海の能力は支度したくが必要なタイプだからいいか。萌海はいつも左側にだけつけているベルトガーターを外して左手で持ち胸の前にかざす。左手なのは萌海はサウスポーだからさ?萌海は道具が必要なタイプの協力者ビーストテイマーだ。まぁ、このタイプは面倒な代わりに普通より強い。萌海は目を閉じる。

「アストラルモード・マーメイド」

萌海の鉄紺色の髪が一瞬で水色になり、かなり高い位置のツインテールになる。右は赤いリボン、左は青いリボンで結ばれている。服は袖にいちいちフリルのついたものになる。お姫様が来てるみたいな方のところが膨らんだ半袖シャツを肩出し、その下には大きい桜色の袖。まぁそこにもちろんフリル。首のところには胸部を隠すほどの大きさの青のリボン。水色のスカート。白のハイソックス。胸を覆うキャザー付きの水色、そのすぐしたには白いコルセット。コルセットの周りは桜色で修飾されていて、真ん中の部分には左右に二個ずつ桜色のボタン。

「・・・・・・相変わらずフリっフリだね?」

嘲笑いながら僕は言う。すると、ポーカーフェイスな萌海が頬を染ながらこちらを見てきた。

「・・・気にしてるんだから、言わないでよ。」

〈紫恩side〉

 「叫べ!!わしの名はクエレブエだ!」

その言葉が聞こえた瞬間、電撃が走ったように俺の全身は動き出す。

「アストラルモード・クエレブエ!!」

口は叫び声を上げ、両足は鮫を蹴り上げる。左手は地面につき体を支え、右手は前に差し出される。そして、その手にどこからか湧いてきたたくさんの紫色の花びらが集まる。徐々に顔にも集まってきて熱くなってくる。頭には直接あの声が聞こえた。

「今回のみ傷を修復してやろう」

顔の熱さが痛みとともに消えてゆく。立ち上がった俺は右手に何か握っていた。

「かた、な!?」

隅々まで見ても刀だ。高級そうな光沢のある紫色の約100cmのさやに淡い紫色の、刀を帯に巻くためのひも・・・つまり下げ緒。白いつばには鞘と同じ色の花の絵。薄紫色の20cmぐらいのつか柄頭つかがしらは金でできている。柄頭からは15cmほどの紫色のリボンのようなものが垂れている。自分を見ると、黒い学ランの上から黒いベルトが一本巻かれていた。

「それ!それで戦ってください!!」

声がした方を向くと黄橡色の目と髪の少女。・・・勇乃?いや、違うあいつかみ白髪だったしあの子スカートはいてるし。よくわからないけどあの少女が言ってることは正しい。刀の使い方とか下げ緒の結び方は歴史科が好きだからわかる。教科書の隅っこに『ちなみに』的な感じで書かれていた。まぁ部品の名前がわかるのもそのおかげなのだが。俺は素早く下げ緒をベルトに結びつけ、鞘を握り刀を抜く。

「うお・・・」

俺は感嘆した。インターネットの画像や教科書の資料を見て『かっこいいな~』と憧れていたものが、目の前にあるのだ。しかし、見てきたどんな刀より白かった。光沢がすごくて、刀が光っているのではとおもうほどだった。刀身は鞘と同じはずだから100cm。柄と合わせて全長120cmあたりだろう。刀身が鞘から抜け落ちないようにするためのもの、はばきは黒色。スラリとした刀身の鋭い切っ先を鮫に向ける。

「ぐるるるる・・・」

鮫が唸り声を上げた。いや、浮かんでいる時点で鮫じゃないことは確定しているだろう。

「鮫が、唸ってんじゃねぇえええええええええええええええええええええ!!」

両手で柄を持ち刀を利き手、すなわち右手側で自分に引き寄せる。そのまま鮫に突っ込む。

「せりゃああああああああ!」

前のめりかけたりもしながら、適度の前傾姿勢を保つ。グスリ。手応えがあった。そして衝撃が腕から肩へと伝わった。たまらず鮫に頭をぶつける。ねっとりとした感覚で、気持ち悪い。粘着質な鮫肌を水がおおっているようだ。冷たい。

「くっ・・・・!」

頭を離しつつ刀を鮫から引き抜こうと試みる。刺さったのは鮫の左目で、かなり酷い様子だった。抜くにしても、刀身を半分ほど体に飲み込まれているため、数歩下がらないといけない。まだ衝撃が残っているため、俺はフラフラと三歩ほど下がり、止まる。

「だめです!そこは鮫さんの攻撃範囲内です!!」

攻撃範囲内・・・!?普通に考えて、つまりこの位置は危険だということだろう。急いで立ち去ろうとした瞬間に、鮫の口が大きく開く。覗いた鮫の口の中には大量の水。乾き死なないのはこういうことか!!避けようとしてもきっと無理だ。そう思った俺は、一か八かで刀を振り上げた。しかし、鮫に刀が食い込んだのと同時に、鮫の口から大量の水が勢いよく俺に向かって一直線に向かってきた。

「あああっ」

鮫の背後から例の少女の短い悲鳴が聞こえた。

簡素プレイン凍結フリーズ!」

直後、聞きなれた声が聞こえた。

「あああっ!」

少女の声は今度は感動を含んだものになった。『プレインフリーなんとか』と言い放ったのは確実に萌海だった。なぜ中学に?通っていた中学が急に恋しくなって・・・・ということではないだろう。フリルだらけの派手な格好の見事な水色髪みずいろがみの少女に俺は見とれていた。俺に向かっていた水は氷になって止まっている。鮫本体も氷が覆っている。

「ヒヒィーン」

は?

「ぐはっ」

いきなり馬の鳴き声がして俺は遠くに跳ね飛ばされた。

「いてててて・・・・・・・・・・・・・・・・・」

頭を派手に打って、うずくまる俺に生意気なセリフがかけられた。

「よわ・・・・・・・・かすっただけなのに何飛ばされちゃってんのさ」

振り返ると、勇乃。

「よわ・・・、っておい!俺はまだ状況が理解できてない中いきなり蹴飛ばされたんだぞ!?」

「ふっ」

うわあ!こいつ絶対今の俺の発言を言い訳だと思っただろ!!・・ん・・・?

「?」

勇乃が眉を寄せながら首をかしげる。

「勇乃・・・お前なんで右目が赤いんだ?」

「・・・・・・これが本当の姿だけど」

ほ、本当の姿って・・・・・

「中二病!!」

それを聞いて勇乃が目を見開く。

「なっ!僕をあんな勇者ぶってるやつらと一緒にするな!!僕は本当に強いし、勇者って名乗れるほどの力量だ!!そもそも好きでこんな格好をしてるんじゃない!」

「あーはいはい、最初の一言は中二病のやつらに謝らないとな。特に俺とか。あと・・・・あれはどうするんだ?」

俺は『あれ』の方を向く。俺が言った『あれ』とは鮫と、鮫の口の前に立つ少女。

「あーはいはい、ほうっておいていい」

なっ!?こいつ今俺の発言真似したよな!!とりあえず、疑問に思っていたことを聞く。

「さっき、萌海の声がしたんだけど」

まさかあのどう考えてもお門違かどちがいな格好の少女じゃないよな?そう信じていいよな?いくら血の繋がっていない姉でも、家族があんな格好していたら恥ずかしい。

「萌海ならいるけど?ホラ、そこ。鮫っぽいのの前さ」

うそだ、萌海はそういうロリータみたいな趣味が・・・・・・!

「さ、鮫っぽいのの死に顔拝みに行こ」

勇乃は萌海があんな格好をしていることをなんとも思わないのか?歩き出した勇乃に、俺は立ち上がって続く。そこでは、少女と萌海が話していた。

「・・・・で、結友音はこの鮫を極限まで追い込んだの?」

そこに勇乃も加わる。

「そんなことあるわけないじゃん。結友音だよ?到底ありえないさ」

結友音とはきっとあの少女のことだろう。俺はまだ右手に持っていた刀を鞘に収める。

「うぅ・・・ぐすっ、ボクはっ・・・・」

少女は勇乃の言葉に傷ついたのか、目に涙をためていた。見かねて俺は勇乃に言う。

「勇乃、そこまで言わなくても・・・」

「・・・・・まぁ、この様子なら『鮫は我を忘れて暴れだした』ということではなさそうだし・・・・。勇乃、私は紫恩が聖なる森派だと思う。」

あー、なんだっけ。聖なる森と夢の天空が対立してるんだっけ。結友音さんは目元を制服の袖でぬぐい、言った。

「あの、紫恩さん?でしたっけ。ケガはありませんか・・・?」

いつの間にやらか耳や尻尾がなくなっていた。

「あ、大丈夫!えっと・・・?結友音、さん?」

「は、はい!ボクは勇乃お兄ちゃんの双子の妹の笹山ささやま 結友音ゆうねです、よろしくなんです!!」

名前を名乗る前から知っていたことが嬉しいのか、結友音さんは俺の右手を両手で握り目を輝かせていた。

「俺は氷野 紫恩だ。えっと、よろしくな?結友音さん」

「『ちゃん』でいいですよ!氷野くん」

これってやっぱり『ちゃん』付けじゃないとダメなのか?

「お、おう。結友音ちゃん?」

「はい!」

一層と目がキラキラしている。至近距離で見ると、やっぱり勇乃に似てるな~。双子だから当たり前か・・・って待て。

「双子なのになんで年が違うんだ!?やっぱり勇乃お前、年詐欺って・・・!?」

勇乃と萌海が溜め息した。

「アストラルモード・解除」

萌海がそういうと、萌海の周りををレースが囲う。数秒するとレースが消えいつもの格好の萌海がいた。多分今の格好が萌海の能力とやらと関係していて、それを解除したんだな。

「どちらかというと、結友音が年齢詐欺して中三のフリしてるんだけど」

勇乃が言った。ばっかじゃねーの、と言いたそうな顔で。

「そ、それより萌海!今の解除教えてくれ!」

いや、だって刀を下げてる状態は銃刀法違反で捕まるだろ。

「アストラルモード・解除」

勇乃が言う。すると勇乃の背後に巨大な円がうまれる。円の中は空のような様子で、そこに羽の生えた白い馬が駆ける。そして円は消える。

「アストラルモード・解除って言えばいいんですよ」

背後にいた結友音が助言してくれる。ありがてぇ!!

「あ、あすとらるもーど・解除?」

最後が疑問符になりながらも真似してみる。すると刀と学ランの上に巻かれたベルトが大量の紫色の花びらとなって消えた。おおお!これが能力とか言うやつか!

「・・・・・帰れろ」

「え?」

俺は萌海に引っ張られて半強制的に帰った。帰る途中、アストラルモードとモンスターのことをざっと説明してくれた。

 家に着いた。萌海のところに行ったらとりあえず昼ごはんの時間までは話せるだろう。流石さすがに今回のは説明してくれない、ということはないだろう。俺の家は二階建てで、一階にリビング・キッチン・父さんと母さんのベットルームの三つの部屋がある。萌海の部屋は二階。二階には俺の部屋と萌海の部屋・倉庫部屋があり、階段の目の前が俺の部屋。俺の部屋の右に倉庫部屋、左に萌海の部屋がある。俺は自分の部屋を出て、萌海の部屋の扉を開いた。そこには薄いピンク色の家着姿の夢萌が赤いパーカーを着ていた。

「・・・ノックしてよ。」

「え?ああ、悪い」

萌海は溜め息をし、部屋を出た。

「お、おい!どこ行くんだよ」

萌海がピタリと立ち止まった。

「・・・・・・・どこに行くのか、という質問は今の私にはとても難しい。だから、ついてきて。」

俺は大人しく萌海についていく。

「ここは・・・倉庫部屋?」

萌海が次に立ち止まったのは倉庫部屋の前。

「・・・・・よく、見ていて。で、覚えて。」

萌海は扉に近づいた。そして右手で取っ手を握り、左手で拳をつくり扉を一回叩いた。

倉庫部屋に何しに来たのだろう。部屋の中にはアルバムなどが入ったダンボールやら季節外れの衣類などが詰め込まれたクローゼットやらしかない。

「・・全二段階。」

「は?」

萌海は扉をおした。すると、そこには倉庫部屋とは違う場所だった。

「書斎・・・・!?」

mj疲れますた・・・

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