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「なんでこういうところだけ未来的じゃないんだ!」
「未来的って何の話? 勝手に変な設定を付加しないでくれる?」
くそっ。リリスのおふざけに付き合ってた僕が馬鹿だった。
この物語の神様は現実世界でも変な設定をつけて楽しんでいる。僕の身内がピンチだとしても。そしてそもそも僕がピンチだというのに。騒いでいたせいでいつの間にか泥棒に距離を詰められていた。
「おらっ手をあげて後ろを向け。大人しくしてれば痛くはしない」
首筋にナイフが突きつけられ、僕はなすすべなく捕まってしまった。全身黒尽くめの男ということが一瞬のやりとりで分かった情報で、あと、顔は黒いマスクで隠されていた。僕は後ろ手に縄で縛られ、口にはガムテープを巻かれた。一階の、電気のついたリビングまで連れて行かれると、そこには僕と同じ状態で床に座る父さんと母さんがいた。父さん、いつの間に捕まったんだろう。
「大人しくしてろよ」
ほらっ、と背中を泥棒に足で蹴られ、床に顔から倒れこむ。両足も縄でぐるぐる巻きにされ、身動きがとれない状態になった。泥棒はそのまま辺りを探策し始め、引き出しを手当たり次第に開け始めた。おそらく金目のものを探しているのだろう。手際よく金品を抜き取っていっている。
「このまま指をくわえて見ているだけ?」
リリスが僕の耳元でささやいた。リリスは神様で、実体が僕以外見えないようになっているので捕まることから逃れたようだ。神様が人間に捕らわれるってことがあればそれはそれでおかしいのだが。今のリリスの設定は、僕にしか見えないし、僕にしか触れない。それと僕にしか声が聞こえない。
指をくわえることすら出来ないってのと、お前が携帯さえ折らなければ最悪僕が捕まったとしても警察には連絡出来たんだってことをリリスに言いたかったが、口を塞がれた状態では何も言えない。
「一時的に設定を付加するわ。<耕太が身動きのとれない状態の時、私と耕太は頭の中で会話ができる>」
そうリリスが言うと頭上にでかい口が現れた。どうやらこれが僕の代わりにしゃべってくれるらしい。
『この状態で僕に何をしろって言うんだ?』
『だってこのままじゃお金だけ取られて逃げられるのよ?』
『だからって僕にはどうしようもないだろ』
『私が協力するわ』
『でもリリスが出来るのは、リリス自身に関する設定付加及び変更と、脳内での物語作成だろ? 現実世界の他人の設定はいじくることは出来ないし、直接干渉は出来ないはずじゃ』
『あらあら耕太は少し勘違いしてるみたいね。神様をみくびってないかしら? まず、この状況を解決する方法はいくつも存在するわ。まず、あの泥棒の脳内の設定を変える方法が一つ。<自分は今日盗みを働いていない。だから手に持っているものは警察に届けよう>とか<自分は今すぐ家に帰らなければならない>とかね。まあこれは物語というより意識のコントロールだけどね。現実世界の他人の設定を変えられないというのは物質面とかであって、精神面には関係がないの。あれ、前に話さなかったっけ?』