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「抜け駆けは協定で禁止されている。即刻排除すべきだ!」
「あいつはまだどこにも所属していないワンウルフだ。協定違反として処罰することは出来ない」
ほら、教室の隅でなんかやってるし。まぁ僕は気にしないけどね。
「チェストーーー!」
直接暴力を行使してくるやつは別だけど。
「ふんっ!」
「な、なに!? 水野のくせに俺のとび膝蹴りを止めやがっただと!」
「いつもお前の技を受けてるから対処法はすでに心得ている。これからはお前がやられる番だ。覚悟しろ!」
康明が戦いをしかけてきた。なんか殺気を感じたと思ったらやっぱりか。まぁこいつも色々あるのだろうと僕は少しかわいそうな目で見ている。田中康明という人物は生まれてこの方女子と手をつないだことがないらしいのだ。僕でさえ繋いだことはあるっていうのに。まぁ幼稚園の時だけど。康明は根っからの女好きなのにも関わらず自分から直接話しかけられないほどシャイなので、こうして僕にあたるしかないのだ。
「ここまでだな康明。お前の攻撃はもう俺には通じない」
「そう思っていられるのも今のうちだ。おらよっ!」
康明の右足が僕の左肩を狙い打つ。なんのこれしき痛くも痒くない。いや、違うこれは。
気づいたときには遅かった。上履きについたガムが僕の制服に貼りついていた。くそっ、してやられた。噛みたてなのだろう、粘り気がすごい。匂いからするにミント味。あいつ、僕がミント嫌いなことを知っててこんな真似を。
「卑怯だぞ!」
「それは果たしてどちらだろうな」
「どういうことだ!?」
「お前は女子に話しかけられない俺の気持ちが分かるか! お前は俺の気持ちを踏みにじっている。俺だって可愛い女子と仲良くなって縦笛とかぺろぺろさせて貰いたいのに!」
「いや、親しくなったって縦笛ぺろぺろはさせてもらえないだろ」
「他にもお尻とかお胸とか触ってみたいのに!」
「ああそうかすまんお前のこと今まで勘違いしてた。シャイな奴だと思ってたんだがただの馬鹿だったんだな」
「仲良くなって、もっと仲良くなって、一緒にお風呂入ってもらうんだぁ!」
よしこいつはスルーしておこう。深入りすると僕まで馬鹿になっちゃいそうな気がする。
「あの、良ければですけど、」
磯野さんがおずおずとした態度で僕の方を見てくる。ん? いったいなんだろう。
「一緒にご飯食べないかなー? 壱子達と一緒はみずっち嫌―?」




