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「ソダネ」
問題の内容すら見ていないからそう答えるしかない。解く意志はあったんだけどね。解く時に意識がなかっただけで。超絶可愛い磯野さんが路傍の石ころみたいな僕なんかにわざわざしゃべりかけてくれるんだからもっと気の利いたこと言えればよかったんだけど。
「ところで水野君は、」
「ワッカメー! どうだった? テスト出来た? 壱子は全然出来なかったよー!」
突然の乱入者に椅子から押しのけられて、隣の席の闇内君に頭から突っ込む。
僕は闇内君に完全に突っ込む間の数秒間、色々な過去の記憶が頭の中を駆け巡った。ああこれが走馬灯ってやつか、じゃあ確実に死んだなと。何してんだと。馬鹿かと。だって闇内だよ? 名前からしてあれなのに、その名前は実力と性格に違わずときたもんですからもう手がつけられませんよ? 奥さん知ってました? ここだけの話、闇内君は暴力団の次期幹部候補らしいですよ。額には、名前を呼んではいけない例のヴォルデモートにつけられたような傷がある。焼きを入れられたとかそういうのかなあ。授業中にサングラスかけてても教師に注意されないのは闇内君、おそらく君だけだよ。
「ごふっ」
闇内君の顔面に僕の頭が直撃した。今のは闇内君のうめき声。
「壱子はねぇ、やっぱり数学に向いてないんだよー! 苦手なんだよー! あれ、どしたのみずっち」
「返事がない。ただの屍のようだ」
「屍だってぇ。みずっち死んでるみたい」
ええ、今からまさに死ぬとこです。
「て、てめえ……」
闇内君が怒りでぷるぷる震えてる! 口から血が出て……ああ、前歯が欠けたのか。僕知らない何も見てない。
「壱子が水野君を押したから闇内君とぶつかったんです。ほら、ちゃんと謝りなさい」
磯野さんさすが分かっていらっしゃる。
「みずっちごめんね。壱子のこと許してー?」
「絶対に許さない! 死んだら化けてでてやる!」
川島さんのせいでもう磯野さんの顔を見ることが出来なくなる。誰か助けて!
「ワカメー、みずっちあんなこと言うー」
「水野君すみません壱子があんなことして。私が注意してればこんなことには」
「いやいやいやいやいやいやいやいや許します。超許します。許さないとかそんなこと僕が言うわけないじゃありませんか! それに悪いのは川島さんじゃないですし」
「じゃあ、みずっちは誰が悪いと思うのー?」
ぬ、そうきたか。恐ろしいやつめ。答えにくいとこをこの状況でついてくるとは。僕は悪くないし、壱子を悪者にするのは駄目だし、とにかく磯野さんに悪く思われなければそれでいいや!




