絵はがき
手紙が届いた。
どうやら旅行をしている両親からのようだ。
裏面の絵から判断するに、どうやらパリにいるらしい。
凱旋門とエッフェル塔が一緒に入っている写真だ。
フランス語で書かれた住所の下に、日本語でメッセージが書かれている。
そこから両親が楽しんでいるのが、はっきりと分かった。
私は、両親がいない間の留守番をしていて、時折送られてくる手紙に目を通している。
今年で真珠婚を迎える両親に、私がプレゼントとして贈ったものだ。
銀行で働いている私が、これまでの恩返しということで贈ったものではあるけど、一番の心配は、無事に帰って来られるかということ。
どうやらこのまま最後までいってくれそうだからよかった。
だとすると、次の問題は、父親がちゃんとしてくれるかなのだが、それも私にはどうしようもない。
「ただいまー」
1週間後、旅行から無事帰還した両親を出迎える私の目に飛び込んできたのは、母親が首から下げているネックレスだ。
「お母さん、真珠のネックレスって持ってたっけ」
「ああこれ?」
つまみ上げて私に見せつける。
「まさか、贈ってくれるとは思ってくれなかったわよ」
私が父親に託した真珠のネックレスは、無事に渡すことができたようだ。
「真珠婚の記念なんだから、真珠がないとね」
私は母親にそういうと、父親を見た。
なにか恥かしそうな顔をしていた。