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蛇と剣士の妖怪退治  作者: 自称様
壱章だよ!
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壱章 プロローグ

植物もない、風も吹かない、そんな暗闇の中に少女がいた。何も見えないはずの真っくらやみに、はっきりと見える少女がいる。彼女は白く光っているようにも見える。


「ねぇ、なんでせっかく出れたのにまた閉じ込めるの?」 


小学生のような彼女の声は誰かに問いかけていた。その声に姿の見えない少年が答えた。


「いつも言っている。妖王の呪いのせいさ。じゃあ僕は竜也くんの記憶を消さなきゃいけないから。」

「…………。」

「じゃあね。」


少年の声は消えた。少女は一人になった。


この場所に閉じ込められてから2年が経つ。彼女は下半身も、手も、顔も煙のようになっており、今は幽霊のような姿になっている。だが、彼女は一度死んでいる。魂だけがこの場所に閉じ込められている。妖王の呪いで。


「………誰かいるの?」


少女は背後に気配を感じた。自分とあの少年以外ここに来れるはずがないのに。だが、後ろにいるのは少年でもない、自分よりももっと身長が高い人だと思う。少女は振り返り、問いかけた。


「お姉さんだあれ?」

「あーあ。気づかれちゃったか。どーも♪魔神でーす。」


魔神と名乗る人物は、少女と違って体の形がはっきりとしている。そして光を放っていない。少女は長い髪を見て「お姉さん」と言ったが、魔神は男か女か分からない姿をしており、角や牙や目をみる限り人ではないと分かる。その彼女の不気味さをその青白い肌と緑色の着物が引き立てる。まるで鬼のようだ。それなのに何故か明るい。


「お姉さん、ここがどこなのか知ってるの?」

「知ってるよ。じゃなきゃここに来れないもの。」


なにもなかったはずの暗闇に静かな風が吹く。少女は風を感じ取れなかったが、魔神の揺れる髪を見て、風を認識した。その風は魔神が吹かせたようだった。


「君でもわかりやすいように言うと、とある少年の心の中ってとこかな。まあ、実際は彼は人じゃなくて………」

「正解。お姉さんすごいね。どうやって来たの?」


魔神の言葉を遮るように喋りだした少女は、2年を経てこの暗闇の事を知っているようだった。そして魔神はその事をも知っている。なぜなら彼女は……


「僕は全知全能の神なのさ。こんな場所余裕で来れるよ。僕はこの世の全てを知っているし、この世の全てを扱える。人間が作り出した概念だって扱える。また、宇宙をも滅ぼせる。すごいでしょ。」


魔神が自慢げに言うと少女はうつむいた。魔神は声をかけようと思ったが、少女の感情を読み取り黙った。


静寂。


最初に聞こえた音は、少女のグスンという泣き声だった。

少女は泣きながら微笑んだ。


「…………じゃあ、じゃあなんでもできるなら、私をお家に返して!!!」


壁もない無限の暗闇に声が響き渡った。


「お願い!家族に会いたい!お友達に会いたいの!パパ、ママ、ミヨちゃん、あおちゃん、夏美お姉ちゃん、お兄ちゃんに会いたいの!()()()()()()()()()()()!!」


そう言って少女は泣き出した。どんどん少女の形が崩れていく。彼女の涙も暗闇へ消えていった。それを見た魔神は呆れたようにため息をつき、パチンと指を鳴らした。


「静かに。僕の話を聞け。」


少女が静かになったのは、彼女の威圧に驚いたのではなく、静かになる魔法をかけられたからだ。


「ギャンギャンうるさく泣く子は嫌いだよね。キミが暴れると、外の世界に影響が出るんだよね。そのせいでこの体の持ち主はたーいへん困ってるんだ。」

「……………。」


少女は何かを喋ろうとしたが、魔神の術で声が出なかった。


「うん、静かになったね。えらい!」


魔神の言葉はまるで煽るようだった。だが、少女は自分と魔神は全く違う生き物だと理解していた。魔神の方が明らか自分より偉い。だから対等に話してくれる魔神に逆らいたくなかった。


「はーい!まず言いたいこと一つ目〜。キミの願いは叶えられません!」

「…………?!」

「びっくりした?でもね、君を解放するには妖王を殺さなきゃいけないの。妖王は僕の興味の対象だし、僕が殺しちゃうと世界が大きく変わっちゃうわけ。だから無理。」


妖王とは彼女に呪いをかけている人物。いや、彼もまた人ではない。彼は妖怪である。だが、魔神は人でも妖怪でもない。

でもねぇ、誰かに妖王を殺すように導くことはできるよ。」

「本当に?!」


やっと少女は声を出すことができた。いや、魔神がこの声を聞きたくて術を解いたのだろう。魔神は笑顔で続けて言った。


「うん。ただ、面倒くさいのはヤダ。あとなんでも願いをかなえてあげるわけではないから。」

「じゃあお姉さん、私のお兄ちゃんに妖怪が視える力を与えることはできる?」



「いいよ。」


小さな声でそう言って魔神は消えた。


「………あれ?お姉さん?」


まるで魔神がいたのが夢のよう。また、そこは何もない暗闇になっていた。声がこだまするようなしないような感覚に戻っている。風も止んでいる。


「また、独りにするの?……魔神さん?おねがいごと叶えてくれるよね?」


返事はない。やっぱり魔神は外の世界に帰ったのだろう。また、帰ってきてほしい。唯一、私と話してくれる人なのに。私を認識してくれた人なのに。



「なんで私と話してくれたの?」



それは興味さ、と聞こえた気がした。

作者メッセージ

こんにちは!自称様です。この作品は昔、他のサイトに投稿していた超黒歴史をリメイクしたものです。その原作はもう見たくないくらいなんですが、やっぱり内容がまだ好きなので、大幅に変えて正式(?)に投稿してやろう!と思いました。

まだ初心者なんで、文字数少なかったり、下手だったりしますがこれからよろしくお願いします。

あと、黒歴史は絶対に見ないでください。

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