1.星屑の審議会。
「そうね、宮原さんは少し前のめりすぎるかも」
「ふむふむ……!」
――学校に到着し、時が流れていく。
あっという間に昼休みになって、私のもとへ隣の教室から宮原さんが訪れた。机を合わせて、今朝に約束をした『占い』をしてあげる。こちらの指摘に対して、親友は真剣な表情で耳を傾けていた。
そうしていると、私たちの周囲には自然と女子生徒たちが集まってくる。
適当かつそれっぽく並べたタロットカードを見ながら、全員がうんうんと何度も頷いているのだった。
「そうね……今日の放課後は、あえてデートを断って良いかもね」
「……え!? そんな、せっかく誘ってくれたのに!?」
驚く宮原さんと、周囲の女の子たち。
私はそんな彼女たちに、得意げな表情を浮かべて言った。
「時には、あえて引いてみるものよ。……恋愛は、駆け引きなんだから」
「す、すごい……さすが、星野さん!」
すると私の親友は、またキラキラと瞳を輝かせる。
もっとも、偉そうなことを言いながら、こちらは恋愛経験ゼロなのだけど。そう言った細かい事情については、あえて答える必要がないだろう。自信満々に『正解を言い当てること』さえすれば、周囲は勝手に想像してくれるのだった。
――そう。
たとえ私に『タロットや占いの知識が、皆無』だったとしても。
「すごいなぁ、星野さんは。……なんでも分かっちゃうんだ」
「なんでも、ではないわ。これはあくまで、私にとっての『天啓』なのだから」
たとえ厨二病全開な発言をしても、結果を出しているのだから否定できない。
私の言葉に宮原さんは感動し、素直に拍手していた。すると他の女子生徒たちも、少しだけ困惑しながら、しかし納得したように倣っている。
その空間のど真ん中に腰かけ、一身に喝采を浴びる。
――そうそう、こういうの。
正直に白状するなら、私は悦に入っていた。
周囲から認められることによって、承認欲求が満たされていく。私の中に巣くうモンスターが、溶けるようにして満足していくのだった。
「あ、あの……! 星野さん、わたしも占って!!」
「アタシも! 次の大会のこと、とか!!」
「あら、ありがとう。だけど――」
そうしていると、私に占いを依頼する女の子も現れる。
しかし、そのタイミングでチャイムが鳴った。
「予鈴も鳴ったし、今日はここまでね? 占ってほしい方は、また明日」
「えー! ……うん、でも仕方ないよね」
「放課後は、星野さん忙しそうだし……」
その助け舟に乗って、私が言う。
この学校の女の子たちは、ビックリするくらいに素直な子が多かった。私の言葉をすんなり受け入れて、仕方なしと席に戻っていく。
そんな中で最後に宮原さんが残って、このように訊いてきた。
「放課後って、やっぱり……いつもの?」
「えぇ、そうよ。私が――」
その問いに、私は思わず不敵な笑みを浮かべてしまう。
だって、ここからが一番楽しい時間。
「『星闇の覇者』として、世界を変えるのだから」
◆
「――覇者様。お待ちしておりました」
「えぇ、待たせたわね。今日は全員が問題なく、集合しているかしら?」
「一部の構成員が調査に出ていますが、会議を始めるには十分な人数が揃っているかと思われます」
「……そう、分かったわ」
――放課後、夕暮れに染まるとある一室にて。
そこへ足を踏み入れると、私の帰還を心待ちにしていた配下たちが恭しく頭を垂れていた。全員が素性を隠すため、各々に白を基調とした仮面を被っている。服装はそれぞれ、思い思いのものを選んでいるが、一つとして同一のそれはなかった。
そんな不揃いな配下の中心を進んで、私は一番奥に置かれた真紅のソファーに腰かける。そして、
「さぁ、それでは始めましょうか。……星屑の審議会を」
薄暗い部屋の中で、私はそう宣言したのだった。
oh……厨二病w
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