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Fruit of Darkness☾ ポンコツAI、世界を救う?  作者: 木天蓼れもん
《1章:何もしない美食家AIスイ編》【スイーツコメディ】
3/49

柑橘のジャンク屋

居候型ジェムット、(拠点を)見つける。

6/21(土) 修正

 オービタタウン中央区。

 ジャンク屋【男麗んおれんぢ野郎】前。そこに少女は居た。


「おう、ロイか!今日はどうした? オレンジいるか?」


「いや……遠慮しておくよ、カンキツさん」


 男麗ん地野郎おれんぢやろうの店主・カンキツは、

 カウンターに山積みのオレンジをバスケットごとロイに差し出す。


 店内はジェムット用のパーツや謎家電でゴチャゴチャ。

 この店は、裏路地にあるジャンクショップだった。


「そうか。相変わらず、スーパ~!クールガイ!――だな!?」


 テンションが不安定な店主、カンキツ。


 ロイは入り口に目をやる。

 店頭は半分以上がオレンジに占領されていた。

 ……だが八百屋ではない。


「今日は何の用だい? パーツだけなら売らねぇぜ? ハンサムちゃん!


 ……新作のジャムはどうだ?」


 カンキツは瓶入りのオレンジジャムを差し出す。


「いえ、それは"絶対に"いらないです。


 ――実は妙なジェムットと遭遇しましてね。

 カンキツさんにも見てもらいたいんですよ」


「ほぉ~~。A級ライセンス持ちのお前さんが……そこまで言うとはね?」


「で、どこにいるんだい?? そのジェムットちゃんは??」


「ちょっと、連れてきますね。外で遊んでると思うんで」


「なんだぁ!? 小せぇ子供みてぇな言い方だな!!?

 お小遣いやろうか?!」


「いえ、大丈夫です。もう渡しましたから。


 ……細かいのがなかったんで、財布ごと渡しちゃったんですけど」


 ──その頃、男麗ん地野郎付近・自販機前。


 ピッ。ピッ。ピッ。……ガシャンッ。ガシャガシャッ……。

 ピッ──、ガシャッ!!


 水色のポニーテールが、銀色の筐体の前にいた。

 光を失った瞳。

 何かに取り憑かれたように、ボタンを連打していた。


「お姉ちゃん! 早くしてよ!! どんだけ買うんだよ!?」


「うるさい。まだ42本だ。

 スイの方が年上なんだから、犬のように待ちなさい」


 スイはノイズをシャットアウトする。

 ロイの財布を握りしめ、新たな獲物を狙う構えだ――。


 既にレモネス300は狩りつくした。

 残りは、200と100である。


 周囲にたむろしていた小学生は、畏敬の念を向けていた。

 一本でも飲めば嘔吐しかねない、超刺激おバカ系ドリンク・レモネス。

 それを何本も……もはや狂人の所業。


 ざわ……、ざわ……。


 裏路地に現れた水色のケモノは、見向きもしない。

 ――王者の狩りは、止められない。


「……あ、あの子。ブッとんでるぜ……?!」


「救急車!?先に、呼んどきます?!」


「あれ……さっきロイといた女の子じゃねぇか……!!

 あのヤロウ。あんな純真そうな子を弄びやがって!!」


 じゅるりっ……。


 スイの口の端からは、欲望の雫がぽたりと落ちた。

 狩りが終われば、恍惚が始まる。


 ――解放の瞬間まで、あと少し。


「す、すい…………?!!!」


 男麗ん地野郎を出た途端、ロイは目を疑った。

 間抜けな男は、ようやく気付く。

 自分の犯した過ちに。


「なにやってんだ?! お前!! そんなに買って……

 またパーツが酸化するぞ?!」


「イヤァァァ……!!!!」


 スイはまるで、魂を引き裂かれるような絶叫を上げた。


 ロイは、スイの腕を掴む。

 欲望の連打を止めたのだ。


 スイは、駄々をこねる子供のように激しく抵抗した。


≪適性反応確認。バトルモードA・起動。≫


 ウィィィィン……。


 スイには、博士のおせっかいにより――

 通常のジェムットには存在しない

 "自主的な"AI切り替えモードが搭載されていた。


 見た目の変化はほぼなし。

 博士の意図とは大きく外れ、

 スイは自身の欲望のためにこれを行使する。


 おでこのあたりから、うっすら青い光が漏れる。

 どこからか、わざとらしいガチャガチャという音が鳴った。


≪レモンマシンガン……装填完了。スケベブラックを抹殺します≫


 内部から、淡々とした声が発せられる。


 スイは、生気を失った瞳でレモネス缶を握った。


 弾丸はパンパンに、自販機の口に格納されている。

 ポニーテールに隙はなかった。


「おい……っ!!」


 ロイは、すぐさまスイの頭を叩いた。

 スイのモード切替は非常にアナログであり、

 頭を叩く事で止めることが出来る。


 数秒の静寂の後――


 スイの瞳に、色が戻った。


≪……了解。電源を落とします≫


 ――ピピー、ピッ。プツン。


 運命じゃない出会いから、数日。

 スケベ・ブラックことロイの苦難の物語は、すでに走り出していた。


 侮ることなかれ、ポンコツジェムット。

 これはまだ序章——

 明日の平和は、彼女が崩す。




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― 新着の感想 ―
同じく人工少女ものを書いてます。どのような物語になるか期待して待ってます。
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