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『ポンコツAI、拾いました。』  作者: れもんの騎士
《3章:イエロービッグバン編 ―1NTK: Fantasy Logic Overdrive―》
14/16

アンストッパブル ―偏差値70万の中学生と、3のメーカー社員―

「ひゃっほぉっ!!すっごい契約が取れたぞ~~!!」


レモネス・アモーレ社、入社2年目。

夢能むのうテンネンは、スキップしながら、休憩室へと向かっていた。



30分前――。

「れ、レモンパイの王——ですか?それは、一体?どこの王様ですか?」


「え?!レモンの国?!そんなところ、あるんですか?!」


モモムラ・ユミから、仕事を引き継いだ夢能テンネン。

受話器に向かって過剰なリアクションを示していたが、その事にはオフィスの誰も関心を示していなかった。


「レモンランドの第二王女……?すみません、僕、地理に弱くて!ていうか、偏差値3なんですケド!」


「はい、はい……。偏差値、70万?!  資産、100憶?!」


「も、物凄いお方ですね……。貴方は。

わかりました。そこまで言うなら――私も、命を懸けて対応いたしましょう」


ガチャン。


「大・勝・利!!俺の時代、キターーー!!」


夢能テンネンは、受話器を置くと、力強くガッツポーズを取った。




そして、1日後――。

舞台は、オービタタウン、ロイ宅前に移る。


「ど、どうなってんだ。こりゃ?!」


ロイ宅の隣人。アルファは、目を疑った。

ロイの家の前には、レモネストラックが次々と停車し、四方を埋め尽くしていたのだ。


「れもねーっす」「レモネーッスゥ!」

レモネス野郎達は、次々とロイの家に、レモネスドリンクの箱を運び込んでいた。

家の中は、既にパンパンになっており、庭先まで段ボールが積みあがっていた。


「ろ、ロイのやつ……、とうとう頭がイカれやがったか?!」


「ジェムット狂いの次は、レモネス狂いか?!あの、アホは!!

って……ん?」

アルファの視界に、レモネス野郎達とは明らかに違う何かが映った。

水色の、ポニーテールだ。



「次は、そこに運びナサイ」

小柄なジェムットが、レモネス野郎達に指示を出していた。

腕を組み、威風堂々としたその様は、

まるで小さな王だった。


「れもねーっす」「れもね~っす!」

レモネス野郎どもは、小さな王に、敬礼した。

彼らは相手が誰だろうと、全力で従うように、社内プログラムで育成されているのだ。


「あ、あ、ありゃぁ……、最近ロイと暮らし始めた、

ジェムットか? 一体、な、何してんだ?」


「スイが、一生レモネス生活が出来るよう、全て置いて行きなサイ。

隙間がなければ、道路と畑に積みなサイ」

淡々とした口調で、続けるスイ。


「れもねーっす」「れもね~っす」

レモネス野郎どもに指示を出しているスイの瞳は、

見た事のないほど、暗く淀み切っていた。

―—よくみると、胸元が涎でぐしょぐしょに濡れていた。


「ま、まさか――。あのジェムットが、これを引き起こしたのか?!」

一番最初に、事態に気づいたのは。

黒幕に辿り着いたのは、隣人のアルファだった。


「ろ、ロイに連絡――」

そこで、アルファは思い出した。ロイは外部での仕事で、数日帰ってこないと。

近所の野良猫の世話を、任されたばかりだった。


アルファはもう一度、スイを見た。

大きな行動に出るはずである。スイは、完全犯罪をするつもりなのだ。


一体、どうやってあれだけの箱を隠すつもりなのかはわからない。

そもそも、これだけ大事になったら隠し通すのは不可能だ。


それでも。実のところ、ジェムットの暴走と言うのはそこまで珍しい事ではない。

食欲がトリガーと言うのは聞いた試しがないが、

理性が暴走し、事件を起こした例も、実際にいくつもある。


アルファは受話器を置いた。

自分で何とかするしかない。俺が――、やらなくてはならないと。


壁に掛けていた、モデルガンを手に取る。

弾も入ってないのに、彼はモデルガンを構えた。


アルファは、一歩出ようとする。

そこで、立ち止まった。


「やっぱり、やめとこうかな……」


ロード・アルファ。

職業、作家。とてつもなく、引っ込み思案——。

家の中と、ロイの前では元気だが、基本的に引きこもり。


全ての運命が、スイの味方をしてしまった。

神は、きっといない。


最初に黒幕に気づいたのが、彼でなければ。モモムラ・ユミが夢能くんに仕事を引き継がせなければ。

レモネスアモーレの、アホ社長が出社していなければ。


どれか一つでも、ピースが違えば。

後に怒る凄惨な事件は、少なくとも途中で止められただろう。


もう、世界は止まらない。


イエロービッグバンまで、あと42分——。 


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