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ポンコツAI、拾いました。―光の機体と奈落の果実  作者: れもんの騎士
《3章:イエロービッグバン編 ―1NTK: Fantasy Logic Overdrive―》
13/19

1億個のレモンを手で潰せ!野郎どものすっぱい青春

彼らは言った。


「俺達に、絞れねぇレモンなんてねぇ!!!!」

――第13棟 絞り職人(31) 熱血童貞


「いつだって全力で、レモネスドリンクを限界まで生産する覚悟です!!!!」

――第6棟 癒し枠 (13) 兎型ジェムット


「それが、俺達の正義だ。女?そんなんもんはいねぇよ!!!!

ドリンク製造こそが甘く酸っぱい、レモネス野郎達の、青春なのさ――」

――第2棟 現場隊長 (42) 独身



 ―—悲劇とは、善意のある所に生まれるものである——

        シトラスト教団教祖 シトラストブラック


セイシュンスピリット工場、14棟前。

普段は稼働していないこのラインで、レモネス・アモーレ現場社員たち

の朝会が行われていた。


「レモネぇ~っす。」

「れもねぇーっす!!!!」「レモネーッス!!!!」「レモネェーっす!!!!」


その場に集まったモノは、10000人。

彼らは皆、緊急出勤した社員たちだ。


それにも関わらず、誰一人文句も言わず、まるで軍隊のような規律を保ち整列していた。

それぞれの額の鉢巻には、日の丸のようにレモンが刺繍されていた。

端には、市長の阿法檸檬あほうれもんの名前入り判子が押されている。


「よく、集まってくれた。諸君!!休日だというのに、ご苦労!!」


レモン色の長いローブを着た、無毛の男はゆっくりと壇上に立った。

備え付けられていたマイクを蹴り飛ばすと、社員一同に激励を飛ばした。


「レもねぇ~っす!!!!」「レモネーっス!!!!」「レモネェ~~す!!!!」

「れ、れもー!!!!」


鉢巻の男たちは、両手を後ろに、腹から魂を叫んだ。


「そこ!!!!挨拶が、なってない。」


「す、すみませんですぅ~~。ら、ラビは発音が、苦手なんれす~~」


男に怒鳴られた変わった風体をした小柄な少年は、真っ白な手で頭を抑えながら、

懸命に謝罪した。


真っ赤な制服に身を包んだ女性が、一歩前に出る。

眼鏡をくいっと上げながら、冷静に言った。


「社長!いいから、続けてください!」


「レモォン!」


社長と呼ばれた男は、謎の返事をし、咳払いをした。


「ちっ……、レモンレモン」


メガネの女性も、謎の言語を返す。


「——本日とんでもないオーダーが入った。聞いたところによると、

どこかの大国の王様のようだ!!」


誇らしげな無毛の男。鉢巻男たちからは、静かに歓声が上がる。


「その数、1億。知っての通り、わが社のレモネスドリンクは、市販の宗教的な

色付き砂糖水の工程とはあまりにも異なる!!」


「——1億というのはつまり、限界も限界……。肉体を超越し、

己の魂と戦う領域になるっ!!」


「魂を、超越せよっ!!!!利益など出なくてもいいっ、

とにかくレモンを手で搾りまくって、生産ラインを回せ!!!!」


「レもねぇ~っす!!!!」「レモネーっス!!!!」「レモネェ~~す!!!!」

「れ、れも~………えす!!!!」



同時刻。

―— バンペイユ西インター ——


レモネス野郎たちの決意集会から、数日後。

彼らのイエロートラックが、オービタの街道を埋め尽くしていた。


「な、なんだぁ?!ど、どうなってやがんだ?!

レモネス野郎のトラックで、視界が真っ黄色だぞ?!」

クラクションが鳴り響き、苛立った市民たちの怒号が飛び交う。


「おーい、ふざけんな!!」


「お前らのせいで、仕事に間に合わねえじゃねえか!!

謝れよ、レモネス野郎ども!!」


「れもねぇ~ッス……」

「レモネーッス……」

レモネスドライバー達は、元気なく言葉を発した。


パトカーのサイレンが遠くから鳴りはじめ、上空をパトロール

ドローンが旋回し始める。


「警備隊まで来たぞ!」


「ええい、レモン野郎ども、早くどけぇ!!」


「ママ、なんであのオジサン達、皆レモンを齧ってるの?」


「見ちゃだめ!!」


場は混迷を極めていた。


…………

……


「本当に、何が起こってるのかしら?」


ロイの仕事の関係者である、助手席に座っていたブラウンの髪の女性は、

異様な光景に心配そうな声を上げた。


「どこかの業者が、大量に誤発注でもしたんじゃないかぁ?ははっ!」

風を受けながら、ロイは呑気な言葉を口にした。


「困ったわねぇ。このままだと、次のオーバーホールに間に合わないわ」


その場にいる誰も、まだ事態を把握出来ていなかった。



オービタタウンを震撼させる、伝説の爆破事件まで

――あと121分。

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