昨日からの違和感
初投稿でプロローグです。
私:高校二年生。名前は佐々木景。
お父さん:翻訳家。名前は佐々木俊典。
昨日からのお父さんはなんだか元気がなかった。
いつもは私が学校から帰ってくる16:30には自室で翻訳家の仕事を黙々とやっていて一時間後にはおりてきて私の出していた弁当箱を洗ってくれていて、毎日生産されてしまう私の高校生活の愚痴を聞き流してくれていた。
昨日は私が家に帰ってくると「おかえり」と低い声で声をかけてくれ、ソファでついていないテレビに反射しているお父さんを見つめているだけだった。
私が食べ終わった弁当箱を流し台におき、水につけて置いてしばらくすると、深いため息をついてから台所に向かった。
私の愚痴は言いたかったことの半分で辞めてあげた。
いつもだったらテレビの音が流れる夕飯の食卓もテレビをつけずぼーっとただお父さんが用意した夕飯を食べていた。私はスマホでyoutube動画を流して、イヤフォンをして食事をするのだが、昨日はなんだか遠慮してしまった。
私、何かしてしまったのだろうか、それともお父さんの仕事で何か嫌なことでもあったのだろうか。
いつもと本調子とは違うお父さんをみて私の調子も狂ってしまい、昨日は早めにお父さんに「おやすみ」を伝えベッドに逃げ込んだ。
お父さんは「んー」と気の抜けた返事で返していた。
今日はお父さんの誕生日で、学校帰りに近所のケーキ屋で買ったショートケーキを二つ入った箱を持って家に帰る。
お父さんの調子がこれで治ってくれるといいんだけど。
そんなことを思いながら家の鍵を開け(お父さんは基本仕事部屋にいるので鍵をかけておくのが習慣だ。)ドアを開ける。
「ただいまー」
返事はない。
テレビの音も聞こえず、カラッとした沈黙が返事をするだけだった。
お父さんは仕事部屋にいるのかな、なんて思ってリビングのドアを開けるとソファに座る黒い人影が見えた。
「お父さんいたの?返事してよ。」
それでも返事はない。聞こえるのは黒い人影の呼吸だけ。
冷蔵庫に買ってきたショートケーキの箱をしまうってからその人影を見ると、
黒い。
黒すぎるのである。
一瞬お父さんじゃないのかと思ったが来ている洋服は普段のお父さんのものだし、お父さんっぽい雰囲気もしている。
ソファの横に来てまじまじと見るとその黒い影は、光を吸収し反射をしないほど黒い漆黒であり、顔らしき位置にはブラックホールかと見間違うよな黒いくぼみが存在していて、腕には、腕のある位置に長い円筒形の物体があり、関節らしい関節が存在せず、腕と呼ぶには間違いであることがわかる。触手がある。
「ヒッ!」
とっさに後ろに下がる。おいていた通学かばんを蹴り飛ばしてしりもちをついてしまう。
あれはお父さんか?そんな疑問をもちその黒い影をまじまじと見ると、黒いくぼみがこちらをじっと見る。
「あぁ、おかえり。」
どこからかしゃべっているのがわかるが、私を認識していることだけはわかる。
「もうそんな時間か。」
家の時計に目をやるとハアとまた大きい溜息をついてソファに寄りかかっている。
まるで自重に押しつぶされるようにソファの中に潜り込んでいく。
「お、お父さん?」
そう問いかけるとその真っ黒なカイブツは、こちらを向き、「ん?」と様子をうかがう。
ようやくそのカイブツが自分のお父さんであることを認識できた。
「お父さん、なんか様子変だよ?」
「なんか今日全然仕事のやる気が出なくてな…」
そういうことじゃない。
そういうことじゃない!
でもそう伝えるにはなんだか哀愁が漂う横顔で、いや横顔もくそもない黒色でうつむく父親?カイブツ?の姿で答えてきた。
「今日の夕飯は出前でも取るか。」
その黒いカイブツたるお父さんはさも当たり前のように日常をつづけようとしていた。
私は現状が完璧に呑み込めないままこのカイブツと、お父さんと生活するのだろうか。




