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現代にダンジョンが出来たので好色に生きようと思います  作者: 木虎海人


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 姿勢が映す姿


 雨木は、柔道場で美濃原たちに揉まれた翌日、近隣のダンジョンへ足を運んでいた。


投げられても動けるか、それを確かめる為に。


 身体のあちこちに鈍い痛みが残っている。

だがそれはいつものことだ。筋トレが趣味の雨木は、常にどこかが痛い。

違うのは、昨日の痛みが“外から与えられた衝撃”だということだった。


背中から畳に叩きつけられた感触。

一瞬だけ、呼吸が止まる感覚。


あれが、アスファルトやダンジョンの床だったら。


そう考えれば、確かめないわけにはいかない。


 来たのは自宅から、ゴブリンダンジョンの次に近いダンジョン。

冒険者界隈でスケルトンダンジョンと呼ばれているダンジョンだ。


スケルトンダンジョンも、ゴブリンダンジョンと同じく過疎ダンジョンに分類される。

だが内部の印象は大きく違う。


どちらも同じく遺跡型の迷宮だ。

だが、こちらは灯りが常設されている分、陰湿さは薄い。


それゆえか、人気(にんき)はないようだが、

他にも人が入っている気配はあった。


 二階層までに出現するのは、無手のスケルトンが。

そして、三階層からは棍棒を持ったスケルトンが増える。


雨木が戦ってみたところ、特に問題はなかった。


「いや……むしろ相性がいいな、スケルトン。

武器は、だけど」


足元に崩れた骨の残骸を、鉄板が入った安全靴で踏み潰しながら、雨木は呟く。


 編み上げ鉄芯先の安全靴。

 業務用のロングバール。

 そして特注の鉄製トンファー。


どれもスケルトン相手には効果的で、

危なげなく戦うことが出来ている。


 一方で、風魔法と火魔法は不発気味だった。

ゴブリン相手に効果的だったそれらも、

肉のないスケルトン相手では、どうにも効きが悪い。


とはいえ、総合的に見れば問題はない。

今日は、確認が出来ればそれでいい。


 三階層をくまなく探索し、

そこにいるはずの小ボスがいないことを確認する。


「魔石以外の収穫はなし、っと」


 おそらく、他の冒険者に倒されたのだろう。

ボスなどの特殊個体は早い者勝ち。

それがダンジョンの暗黙の了解。


過疎ダンジョンの中でも、

特に過疎っているゴブリンダンジョン。

あそこが少し特殊なだけだ。


「とはいえ、収穫はあった。今日はここまで!

さて、帰ってビールと焼肉だ! 流石に疲れた……」


ゴブリンダンジョンの攻略は、少しずつ進めていた。

だがスケルトンダンジョンでは、今日一日で三階層まで踏破している。


 目的の一つは、三階層に現れる小ボススケルトン。

それは残念ながら不発に終わった。

だが、目的はそれだけではない。


 いくつかある目的の、そのうちの一つ。

それはマッピングの練習だった。


これまでは独学で、

自分が読めればいい程度の地図を書いてきた。


だが先日、ダンジョン省主催の、

引退した冒険者によるマッピング講習会を雨木は受けている。


今日は、その確認と練習を兼ねていた。


 雨木は自分を、割と器用な方だと思っている。

今までも自分で地図は書いてきていたし、

それなりに出来ているつもりだった。


しかし専門にしていた冒険者の話を聞き、

それを自分なりに咀嚼して描いた地図を見ると、

今までのものが、あまりにお粗末に思えた。



 だが初めて入るダンジョンで、

マッピングをしながら、魔物を倒して進む。


それを単独でやるのは、低階層でも思いのほか骨が折れた。


それでも三階層までやり切ったのは、

次に来た時が、格段に楽になるからだ。


一階層と二階層は、最短距離で進める。

小ボススケルトンも探しやすくなる。

何より、四階層からのマッピングに集中できる。


次に来る時の利点を思えば、

今日の手間も悪くない。


 そして作成した地図は、売れる。

ダンジョン省が()()()買い取ってくれる。


階層 × 一万円で。


「……安すぎて、売る気になんねーけどな」


 雨木がそう思うように、他の冒険者もあまり売っていない。

イージス端末の専用アプリ、イージスマップで取り扱われてはいるが、

ほとんどのダンジョンのマップは、買い取り待ちの状態だ。


 昨日、喫茶店で話したダンジョン省四天王の二人、

美濃原と狼山との会話では、

マッピング講習会のことも、当然話題にあがった。


「お偉いさんと直接話せるってのは、文句を言えるのが利点だな。

……まぁ、面倒も多いんだけど」


誰かが進み、地図を売る。

それを買った者が、さらに奥へ進む。

進み、更新され、積み上がる。


その繰り返しで、攻略階層は押し上げられていく。

それがおそらく、ダンジョン省の描いた構想だろう。


理屈は正しい。

だが現実は、追いついていない。


「いや、いくら何でも報酬が安すぎるんですって。

俺だってアホらしくて、売る気にもなんないもん。


……せめて、売れたダンジョンマップの、

何%かは売り手に還元するように出来ないかな?」


そう伝えると、二人は揃って渋い顔をし、腕を組んで黙り込んだ。


省を動かす立場にいる官僚になると、

還元という発想そのものが、どうやら薄いらしい。

それが雨木には、少し意外だった。


だが。


「検討はする」


二人はそう答えた。


ならば少なくとも、検討だけはしてくれるのだろう。

雨木はそう思える。


 昨日はその二人に、散々畳に叩きつけられた。

それを思い出すと、正直今も腹がたってくる。


だが二人とも、

きちんと背中から落とすように投げてくれていた。


それが出来る腕があるということ。

そして、そういう人間だということでもある。


時に技術は、使う者の姿を映す。

上級者が、初心者を、

痛めつけるだけなら、手段はいくらでもある。


少なくとも今のところ、

あの二人はこちらに真摯に向き合っている。


雨木は、そう判断している。


 高段者との組手は、素人には得難い経験だ。

仮に町道場に通ったとしても、最初は自分と同じレベルとだろう。

それでは時間がいくらあっても足りない。


雨木が柔道を体験したかった本当の理由は、経験だ。


 畳の上と違い、アスファルトの路上や、

ダンジョンの中で投げられれば、致命傷は免れない。


だが受け身が出来れば、

多少は軽減できるかもしれない。


そして受け身を取るということは、

投げられるということだ。


投げられるその瞬間にこそ、防御がある。


それは絶対に、相手がいなければ出来ないこと。

雨木楓真は、確かに柔道を経験した。



※本作は作者による構成・執筆を基に、一部AIを利用して調整しています。

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