選ばされた選択
だから雨木は考える。
射出型ではなく纏流型を選んだ理由は、皆が射出型を選ぶことへの反骨ではない。
今の自分にとって、それが最適だと思ったからだ。
『スキル名を唱えた時、視線を合わせている場所に、その効果を発動する』
それが雨木楓真の、纏流型魔法の基本設定だ。
(くそっ……考える時間が欲しい。
知ってたら、今は絶対に挿さなかったのに)
焦りが込み上げる。
だが、雨木はそれを抑え込む。
(落ち着け。焦った時ほど、基本だ)
火魔法を設定した時のことを思い出す。
悩んで、悩んで、
どう使うかを言葉にして整理した。
その時行き着いたのが、
5W1H。
When。
Where。
Who。
What。
Why。
How。
いつ。
どこで。
誰が。
何を。
なぜ。
どうやって。
分解し、一つずつ組み直すのだ。
――When。
いつ使うか。
戦闘中だ。敵は待ってくれない。
だから発動は、速く、確実でなければならない。
――Where。
どこで使うか。
ダンジョンだ、だがそうじゃない。
敢えて言うなら、戦場だ。
俺の戦場は、互いの武器が届く距離。
その中で、活きる制限を。
――Who。
誰が使うか。
俺だ。
応用力が欲しい。
でも、なるべく制限はない方が良い。
動けば動くほど、思考は単純になる。
戦いながら、動きながら、使える条件でなければならない。
――What。
何をするか。
敵を倒す。
最短距離で、最適な攻撃を、最速で叩き込む。
それだけでいい。
それだけがいい。
それが欲しい。
――Why。
なぜ倒すか。
生きるため。
死なないため。
それ以外の理由はない。
自分が生きる為に、必要なら、誰であろうと殺す。
そんな手段を、決める。
――How。
じゃー、どうやって倒すか、だ。
射出型の射程は、レベル1で二メートル。
風魔法はレベル2だ。
射程は四メートルに。
だが、それでも四メートルだ。
世界トップのアスリートなら、
百メートルを十秒を切って走る。
四メートルなら、一秒もかからない計算だ。
スキルカードのある冒険者なら、それに近いことが出来ると考える。
(倍になったところで、大差はねぇな)
踏み込んで、殴って、倒す。
それが冒険者としての雨木の主軸だった。
(二が四になっただけじゃ全然足りねぇ。
だが…………いい機会かもしれないな。
この先ずっと体を張るだけじゃ、いつか壊れる。
とはいえ、
後ろから撃つだけの冒険者にもなりたくない。
一人で生き抜く力が要る)
(どうするか?
遠距離攻撃も要る。でも、今じゃなくて良い。
なら、中距離だ。
近接と中距離。
どちらでも使えるやつにしよう)
(とするならば、動きながら撃てるルールが要る。
シンプルで、無駄がなくて、効果的なやつだ)
(複雑なのは駄目だ。扱えるキャパを超える。
そこまで俺は賢くない、その前提で整えろ)
(なら…………読まれる可能性は上がるが、狙いをシンプルにしよう。
視線を合わせたところに飛ぶ、そんなルールにしよう。
これなら纏流型とも共通する)
『魔法名を唱えた時、
視線を合わせた場所へ、
魔法が発動する』
(これでいい。
どうせ動きながらそんな複雑な操作は無理だ)
「後は、武器を持っていても使えるやり方か……」
雨木は左手のトンファーを薙いで、戻す。
続いて右手のバールを振る。
左足の回し蹴りから、くるりと回って右の後ろ回し蹴り。
蹴りと突き、武器の振りをつなげて確かめる。
(動きながら、別のことをする余裕はない。
漫画みたいに周囲に魔法を浮かせられればいいが、
それが出来るようになるまで、どれだけかかる?
一朝一夕じゃ無理だ。
もっとシンプルがいい)
(……駄目だな。思いつかない。
なら逆に考えよう。
近接の悪いところを……)
剣だの槍だのは、結局は昔の武器だ。
近代兵器には敵わない。
警官だって銃を持つ。
ヤクザも、日本刀より銃を使う。
戦国武将だって、鉄砲を配備して戦の形を変えた。
戦国時代なら火縄銃だが、
拳銃なら引き金を引くだけだ。
どんな武道家でも、
銃相手に正面からは勝てないだろう。
だが、ダンジョンでは火薬類が動かない。
あれば、どれほど楽だったか。
(……なるほど。
じゃあ俺は、銃で戦うか)
本物の銃は無理だ。
なら、魔法を銃に見立てればいい。
昔の漫画にあった。
指先を銃にして撃つやつ。
(あれでいこう)
指なら、戦闘中でも無理をすれば動かせる。
どうせ撃つのは距離を取ってからだ。問題ない。
(そういえば、トンファーが弾丸を撃つ漫画もあったな。
先端から鎖を放つやつもあった)
(有りだな。そこは緩くしておこう。
銃口っぽければOKだ。
トンファーみたいな“それっぽい物”からも撃てた方がいい)
『魔法名を唱えた時、
銃口に見立てた位置から、
視線を合わせた場所へ、
魔法が発動し、飛ぶ』
「……こうだな。
さて、『リフェリア』は受け入れてくれるか」
雨木は、決めた発動条件を思い浮かべ、強く念じた。
すると、記録書が小さく震える。
スキルスロットの『リフェリア』のカード。
その文字が、ゆっくりと書き換わっていった。
――成功。
「ふぅ……一気に色々来すぎだ。さすがに疲れた。
六階層に抜けて、一度帰るぞ。
ボスドロップも確認したいし……文句言うなよ?」
そう告げると、
頭の奥に『リフェリア』の了承が返ってくる。
「……これも、そのうち慣れるのかね」
雨木はそう呟きながら《レコルド》を閉じ、
ボス部屋のポータルへと足を向けた。
※本作は作者による構成・執筆を基に、一部AIを補助利用しています。




