表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代にダンジョンが出来たので好色に生きようと思います  作者: 木虎海人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/53

 サークル臨時①


 朝、雨木が起きるとイージス端末にメッセージが届いていた。

連絡を取り合う相手は限られている。


 一人はゴブリンダンジョンの駐在員で、女性警察官の熊澤。

先日正式に担当になったことで連絡先を交換した。

ただ彼女はイージス端末を持っていないため、やりとりは通常のスマホアプリだ。

何度かメッセージを交わしてはいるが、今回の通知はイージスNikkkiアプリ。彼女ではない。


 となれば冒険者関係だろう。


 よく来るのは冒険者ネーム・コメット。

先日飲んだことで距離が縮まったらしく、ちょくちょく連絡が来る。

だが肉ダンジョンの予約が取れない気まずさもあって、当たり障りのない内容しか返していない。

昨夜もとりとめのない話で終わっていた。


 今回のメッセージは、そのどちらでもなかった。

送信者名はカナタ。

先日、コメット主催の肉ダンジョン臨時野良パーティにいた男だ。


「サークル臨時に一緒に行かないか、ね。ふーん……あいつも肉ダンジョンの予約が取れないみたいだな。さて、どうするか」


 サークル臨時。

雨木がイージス端末を入手してから知った冒険者用語だ。

冒険者には、他にもいくつか独特の呼び方がある。


 冒険者の世界では、その時に潜る仲間を“パーティ”と呼ぶ。

いっぽうで、日常的に行動をともにする固定の仲間は“チーム”と呼ばれることが多い。

使い分けは厳密ではないが、業界では自然と区別されている言い回しだ。


 そして“臨時”。

これは固定メンバーではない、その場限りのパーティを指す冒険者用語だ。

ただし主催者と何人かは顔見知りであるケースが多い。

不足分だけSNSで募集して埋める形になる。


 これに“野良”が付くと意味が変わる。

主催者も含め、参加者全員が完全な初対面という意味になる。

応募だけで集まった、純度百パーセントの寄せ集めだ。

冒険者界隈では“野良臨時”と呼ばれ、雨木が先日参加したコメット主催の肉ダンジョンがこれに当たる。


 サークル臨時は、それらがさらに大規模になった催しだ。

ダンジョン省公認で、いま最も募集件数の多い形式でもある。


 ダンジョン省に公認されたチームが主催者できる。公認は十階層のボス攻略が条件だ。

行き先は六~九階層が多い。


 噛み砕けば、行程の強敵は主催チームが倒す。

代わりに得られる収入の六〜九割を持っていく。

参加者は残りを分配され、往復の雑魚戦で“安全に経験値が得られる”という触れ込みだ。


 そういう建前になっている。


「ここだけ見ればウィンウィンの良い話だ。問題は“レベルアップの報告が一切ない”ことだけどな」


 現在、このサークル臨時は冒険者界隈で隆盛を誇っている。


 だが、経験値が安全に稼げるという売り文句の割に、

雨木が調べた限り、冒険者に“レベル”という概念は無い。

イージス端末のアプリ内でも話題は皆無だった。


 レベルアップが確認されているのは、能力の媒体である記録書(レコルド)だけだ。


 記録書(レコルド)は全冒険者共通で黒革装だが、五層刻みに存在するボスを倒すと装丁と紋章部の色が変わる。


 新人でボス未討伐の雨木は黒のままだ。

五階層で灰色の灰紋。

十階層で深青の蒼紋。

十五階層で緑金の翡翠紋。

二十階層で紫銀の紫紋となる。


 日本の最高記録は深紅の紅紋。

二十五階層のボス討伐者の証。

深淵十二紋の第一紋“フロストフレア”と第二紋“デュアル・レイ”の一軍メンバーのみが保持している。

七紋まではのきなみ紫紋だ。

八紋以下は二十階層未攻略で、翡翠紋止まり。


 一般的に十階層攻略済みの蒼紋が中級扱いだ。


 海外では四十階層まで進んでおり、白紋・黒紋・銀紋まで確認されている。


(さて、どうするか。一人で行く気にはならなかったが、カナタとならまだマシか。経験にはなるだろうしな)


(とはいえ、冒険者にレベルが無いのに“経験値稼ぎ”ってのは引っかかる。

レベルが無いなら、上前をはねられてるだけじゃねぇのか?)


 冒険者という職に関しては、まだ手探りだ。

ダンジョンが公になって数年、冒険者という職が一般化してまだ二年ほど。

分かっていないことだらけである。


 レベルアップの有無に関しても、有る派と無い派で論争になっている。

だがどちらの決定的証拠もない。


 雨木の意見としては“無い”。

もしあるなら、すでに誰かが気づいて報告しているはずだからだ。

だがそんな報告はどこにも無い。


 とは言え、報告義務がある訳でも無い。書き込みは任意だ。

有志が提供しているに過ぎない。

仮に自分がレベルアップをしたら?

雨木は自分なら、絶対に書き込まないだろうなと考える。


(有るのに話が出て来ない、だったらそれは何故か?

分からないが、単純に経験値だけが条件じゃないパターンがあり得る)


 冒険者の多くは、“冒険をしない”冒険者だと雨木は知った。

雨木のように、単独でダンジョンに入る方が珍しい。

それどころか、仮免許から本免許に昇格する条件――魔石五つの収集。

これすらSNSで募集されており、“先輩冒険者に連れて行ってもらう”のが一般的だ。


 コメットもそうだったし、カナタも同じらしい。

肉ダンジョン臨時野良パーティで一緒だった大学生のタカオとレオニスもおそらくそうだ。


 当時は調べる気もなかった雨木だが、実際にSNSに募集が出ているのを見た。

参加費は十万円。まるで買い物感覚だとびっくりした。


「魔石集めは俺もやろうと思えばできる。けど無認可だから白タク扱いだ。ダンジョン省を敵に回すのは面倒だしな。認可が取れる最低条件の、十階層の討伐が先だ」


 仮免許の冒険者を十人集めて、魔石五つ集めることを手伝えばそれで百万円だ。

五人チームなら一人二十万。

人数を絞れば取り分はもっと増える。

週に一度、それが出来れば月収はプラス八十万。かなり美味しいなと雨木は思う。


「十階層を超えて中級になれば、冒険者ってかなり稼げるんだよな」


 その十階層の討伐すらも、金で片がつくのが今の状況だ。


 五階層ボス同行に三十万円。

十階層ボス同行に五十万円。

それに本免許の取得費を合わせて九十万円。


「百万円以内なのはわざとだろうな。ギリ手が届く値段にしてやがる。

で、それで中級になった連中が出してるのがサークル臨時、と」


 そんな連中が本当に、道中の強敵を倒せるのか? という疑問と、

なら自分でもやれるのではないか、という気持ちが同時に湧く。


「いずれ飽和したら値下げ合戦になると思うが……それまでは稼げる手段なのは確か。

主催側に回れれば、だが。その為には・・・・・・・」


 知る必要がある。

知らないダンジョンに入るだけでも得るものはある。

少なくとも経験にはなる。


「よし。度胸一発、行ってみるか」


 雨木はベッドの上でイージス端末を操作し、カナタへ返信した。


「いいよ。どこか行きたいところでもあるの?」


※本作は作者による構成・執筆を基に、一部AIを補助利用しています。


また、ブックマークやいいね、星、レビューをいただいた方、誠にありがとうございます。

読んでくださっている方がいると実感できて、とても励みになります。

年末年始と続けて更新しますので、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ