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そして悪役令嬢は眠りについた  作者: 石谷 瑞穂
8/22

遅いから

久々に投稿します。よろしかったら、読んでください。

「え…。とっ捕まえた?私のお父様とお母様を?処刑?それは、そこで倒れている馬鹿な姉に対してよね?」

 頭が現実に追いついていないのだろう。呆然と、イカレ女がぽつぽつと話す。

「看守、罪状を説明してやってくれ。こいつにも分かるように、ゆっくりと」

「はい。承知いたしました」

 女の看守の方が冷静に応じた。

「まず、第一に、テオドール王太子殿下のお子を宿したと偽り、王家と王国に反抗しようとした罪」

「第二に、王家より預かった公爵領の民に対し、重税を課し、何百人もの餓死者を出した罪」

「第三に、テオドール王太子殿下の婚約者である、ジル・トゥールーズ公爵令嬢に対し、数々の侮辱を行い、殺人未遂の濡れ衣を着せ、毒杯を飲ませた罪」

「以上三つの罪により、トゥールーズ公爵一家三名を、斬首刑に処す」

「はあああ!?何よそれええ!?」

 またしても、イカレ女が吠え立てた。

「子供はちゃんといるわよ!この私のお腹に!!さっきから何を根拠に噓だって言い続けているのよ!?」

「公爵領に餓死者が出たなんて知ったことではないわ!どうせ、モブの民どもが、きちんと食糧を蓄えてなかったからでしょ!それに欲しいものがたくさんあるんだから、少しくらい税を重くしたって、バチは当たらないわよ!私はヒロインよ!」

「悪役令嬢のその女をいたぶったって、大したことじゃないわよ!どうせどのルートでも、必ず死刑になるんだから!大体、悪役令嬢としての役割を果たさない、ただの怠け者じゃない!いっつも暗い顔してさ!」

「殺人未遂の冤罪だって、どうしてわかるのよ!この私が、殺されかけたって言っているのよ!ヒロインの言葉は、みんな真実なのよ!」

 イカレ女に叫ぶだけ叫ばせておいてから、俺は冷たく言った。

「本当にお前は、驕慢で、強欲で、下劣な犬だな」

「なっ!?」

「子供は絶対にいない。お前にいつも飲ませてた薬は、催淫剤じゃなく、子供を孕めなくする薬だ。服用し続ければ、閉経してしまうタイプのな」

「え…。ちょっ…。何よそれ!あんた、私に嘘ついてまで、そんな危ない薬を、飲ませていたの!?」 

「そうだ。繫殖力の強いゴキブリにはあまり効かなかったようだな。…お前、六日前に月のものが終わったばかりだろ。メイドとして潜り込ませた間者から報告が来てるぞ」

 まあ、そんな薬を飲ませなくとも、お前が俺の子を孕むなんて、ありえないのだが。

 心の中でこっそりつけ加えた。

「何よ…。何よそれ!!薬飲ませたり、スパイを送ったり!一体何が目的で…」

「月のものに関しては、否定しないんだな。やっぱり噓か。…これは自白とみなしていいな」

 はっとした顔で、あわてて口に手を当てるイカレ女。

 いや、もう遅いから。



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