遅いから
久々に投稿します。よろしかったら、読んでください。
「え…。とっ捕まえた?私のお父様とお母様を?処刑?それは、そこで倒れている馬鹿な姉に対してよね?」
頭が現実に追いついていないのだろう。呆然と、イカレ女がぽつぽつと話す。
「看守、罪状を説明してやってくれ。こいつにも分かるように、ゆっくりと」
「はい。承知いたしました」
女の看守の方が冷静に応じた。
「まず、第一に、テオドール王太子殿下のお子を宿したと偽り、王家と王国に反抗しようとした罪」
「第二に、王家より預かった公爵領の民に対し、重税を課し、何百人もの餓死者を出した罪」
「第三に、テオドール王太子殿下の婚約者である、ジル・トゥールーズ公爵令嬢に対し、数々の侮辱を行い、殺人未遂の濡れ衣を着せ、毒杯を飲ませた罪」
「以上三つの罪により、トゥールーズ公爵一家三名を、斬首刑に処す」
「はあああ!?何よそれええ!?」
またしても、イカレ女が吠え立てた。
「子供はちゃんといるわよ!この私のお腹に!!さっきから何を根拠に噓だって言い続けているのよ!?」
「公爵領に餓死者が出たなんて知ったことではないわ!どうせ、モブの民どもが、きちんと食糧を蓄えてなかったからでしょ!それに欲しいものがたくさんあるんだから、少しくらい税を重くしたって、バチは当たらないわよ!私はヒロインよ!」
「悪役令嬢のその女をいたぶったって、大したことじゃないわよ!どうせどのルートでも、必ず死刑になるんだから!大体、悪役令嬢としての役割を果たさない、ただの怠け者じゃない!いっつも暗い顔してさ!」
「殺人未遂の冤罪だって、どうしてわかるのよ!この私が、殺されかけたって言っているのよ!ヒロインの言葉は、みんな真実なのよ!」
イカレ女に叫ぶだけ叫ばせておいてから、俺は冷たく言った。
「本当にお前は、驕慢で、強欲で、下劣な犬だな」
「なっ!?」
「子供は絶対にいない。お前にいつも飲ませてた薬は、催淫剤じゃなく、子供を孕めなくする薬だ。服用し続ければ、閉経してしまうタイプのな」
「え…。ちょっ…。何よそれ!あんた、私に嘘ついてまで、そんな危ない薬を、飲ませていたの!?」
「そうだ。繫殖力の強いゴキブリにはあまり効かなかったようだな。…お前、六日前に月のものが終わったばかりだろ。メイドとして潜り込ませた間者から報告が来てるぞ」
まあ、そんな薬を飲ませなくとも、お前が俺の子を孕むなんて、ありえないのだが。
心の中でこっそりつけ加えた。
「何よ…。何よそれ!!薬飲ませたり、スパイを送ったり!一体何が目的で…」
「月のものに関しては、否定しないんだな。やっぱり噓か。…これは自白とみなしていいな」
はっとした顔で、あわてて口に手を当てるイカレ女。
いや、もう遅いから。