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そして悪役令嬢は眠りについた  作者: 石谷 瑞穂
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悩み

トゥールーズ公爵家は、王家の頭痛の種だった。

 王国内で三番目に大きな領地を有し、何人かの優れた武官や文官を輩出してきた、歴史のある名家だ。

 ところが何の因果か、クソほどの価値もないくせに、プライドだけは高い駄目男が当主になってしまった。

 公爵領は荒れに荒れた。

 王妃の実の姉である正妻が、領地改革にあたり、少し息を吹き返したまでは良かった。正妻が不審な病死を遂げるまでは。

 実権を取り戻したあの下らない男は、それまで以上に浪費を繰り返すようになった。毎年冬を越せない領民が、何百人も出ても。

 そしてとうとう、俺の父である国王フランソワ二世は、トゥールーズ公爵家の取り潰しを決意したのだった。

 問題が二つあった。

 一つは、古くからの臣である、トゥールーズ公爵家をどう処分するか。

 領地をきちんと管理できていないからという理由だけで、爵位と領地を取り上げ、平民に落とすわけにはいかない。他の貴族から反発されるからだ。

 あのクソ以下の公爵には、人徳というものがまるでない。だから、奴らをかばう者はまずいないだろう。しかし、古い価値観にとらわれた貴族の中から「王家がトゥールーズ公爵家を皮切りに、自分たちから力を奪い、中央政権化を図ろうとしている」と誤解する者も出てくる可能性があった。

 「我々高貴なものにとって、領民は糧でしかない」という考えの、頭の腐った連中もまだまだ多いのだ。

 もう一つの問題は、王太子たる長男の婚約者であり、王妃の姪でもあるジルの存在だ。

 ジルはただの無力な少女にすぎない。務めを果たさない父親を諫めようとして、無視されたり、虐げられたりするだけの。

 クソ以下の公爵が領地から吸い上げた金は、一切、ジルのためには使われていなかった。だが、トゥールーズ公爵家を取り潰すとなれば、連座の形でジルも巻き添えを食ってしまう。

 ジルが何も悪くないことを証明できれば良いのだが、未来の王太子妃の座を狙う輩どもが、濡れ衣を着せようとするのは目に見えていた。

 人の好い父はおそらく、相当悩んでいただろう。トゥールーズ公爵家をどう処分しても、他の貴族から猜疑心を持たれてしまう。しかし、野放しにするのは、王として到底許されることではない。それから、長男の婚約者で義理の姪であるジルのことは助けたい。

 十五歳の俺は、父にこう申し出た。ジルを別人に仕立て、トゥールーズ公爵家の他の連中には、反逆者として消えてもらいましょう、と。

 

 







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