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難攻不落の黒竜帝 ――Reload――  作者: 遊木昌
序章
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側に居なくても《Ⅰ》



 進み続ける異形の侵攻を止める為に、倭の聖騎士や騎士が防壁を魔法で創る。

 その上から、魔法による砲撃で異形を押し返す。しかし、耐久性に優れた《大型》や飛行能力を有する《飛行型》の侵攻を容易に止めることは出来ない。


 「やはり、この程度魔法では浪費するだけだな。爆発的な魔力で、一気に叩くしか……」


 1人の聖騎士が、魔力を纏った斬撃を群がる小型へと放つ。小型や中型であれば容易に対処は可能。

 飛行する飛行型も接近さえ出来れば、倭からの聖騎士であれば対処は可能である。

 問題となるのが、耐久力と破壊力に優れた《大型異形種》の数と、配置されていく規模の多さにあった。

 数十体程度であれば、聖騎士数百人で対処が可能ではある。だが、倭を踏み潰そうと海岸から攻め込む異形種の規模は、対処の範囲を超えている。

 この場に皇帝が数人いるのであれば、話は別であった。しかし、小型や中型を上回る大型の数に皇帝の数が――足りない。


 「砲撃部隊! 大型の足元に狙いを定めろ、足元を崩して動きを止めろ!!」

 「無理だ!! そもそも硬すぎる。魔力が、火力が足りないッ!!」


 倭に残った騎士全体は、数が多くともその内部は脆弱である。元々、訓練生や補給部隊などの経験が豊富な人材はごく少数であった。

 この場から逃げ出さないだけでも、彼らは優秀である。

 そんな彼ら程度では、異形を食い止める事は――不可能であった。

 迫る異形の大軍に、騎士の顔が曇る。――あぁ、ここで……終わりだ。



 「――ギャバンドールッ!!」


 飛び回る斬撃が次々と大型の体を切り刻む。崩れて灰へと消えた異形の群れを見て、彼らは彼の者が(皇帝)だと知る。

 ギャバンドールと呼んだ人型の魔物(ギフト)を背に魔力体で顕現させ、トゥーリは兵士が持っている安価な剣を両手に構える。


 「私は、倭の皇帝ではない。ですが、倭と皇帝――彼らとの盟約に基づき、この地を死守します。私に、続きなさい!! 倭の騎士達よ。この私に、貴方達の力を見せなさいッ!!」


 大地を走る獣に似た中型の体を頭部から両断し、その体は灰に消える。

 倭の騎士達を鼓舞して、トゥーリは任された侵攻ルートの1つを潰す。

 しかし、侵攻ルートが明確になっていても異形の数は衰える事を知らない。


 「このままじゃ……倭が沈む」


 無限にすら思える異形の数に加えて、自分達は限られた魔力と人員しかいない。

 魔力が切れて、次々と脱落していく。衰えるどころか激しさすら増していく異形の数に押され始める。


 「――邪魔な虫けらですね。ここで、殺しましょうか」


 直感が『避けろ』と囁やき、トゥーリがその声に従ってしゃがんで背後からの一太刀を避ける。

 避けると思っていなかったトレファの斬撃は空振りとなり、前方の異形が消し飛ぶ。

 全身から汗が噴き出す。それは、相手の力量の差を直感で感じ取った故である。

 ――この男には、勝てない。自分との領域がそもそも異なっている。

 技量、魔力、扱う武器の時点で、その差は明らかになっている。


 「アナタが、倭に異形を送り込んだ人物であっているか?」

 「えぇ、えぇ、間違いありませんよ。まぁ、今は気分が良いので……無駄な時間稼ぎに付き合いますよ」


 その発言に、トゥーリの狙いが時間稼ぎだと気付かれる。周囲の異形がトレファの姿を確認すると停止し、他のルートへと動きを反らす個体も確認される。

 この場が僅かでも安全になったというのであれば、自分以外の騎士を退却させる事ができる。

 その為の時間稼ぎとして、武器を構えながら質問を重ねる。


 その中で、トレファからトゥーリに1つの質問がされる。


 「失礼を承知でお尋ねしますが、思い人とこの場(・・・)に来ていますか?」

 「……え…」


 思わず硬直したトゥーリを見て、トレファが不気味な笑みを浮かべる。

 そして、自分の手で異形を呼ぶ出す前に、2人の皇帝と戦った事を告げる。

 その内の一方は、こちらへと向かって来る倭の皇帝(メリアナ)だとトゥーリも分かっていた。

 では、何の反応も気配も無い皇帝が1人居る――と、トゥーリへと尋ねる。

 トレファの認識では、ローグが命を掛けて戦った理由には、黒と同じく守りたい者達の存在があった。

 ならば、その存在の心を砕いて、より戦況を優位にする方が手っ取り早く掻き回しやすい。


 「男の皇帝が、無様に私に戦いを挑んできました。もしやと思いましたが、貴女の思い人ではありませんか?」

 「…う……嘘……」


 明らかな動揺が見え、当てずっぽうだった質問がトゥーリに刺さる。

 手や目から、焦りや困惑が手に取る様に分かる。そして、トレファの八雲がトゥーリの背後を捉える。




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