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難攻不落の黒竜帝 ――Reload――  作者: 遊木昌
序章
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待ち合わせ


 宿を出て、一足先にアンプルの補充をしてきた黒とセラが合流する。

 必死になって、普段通りの自分を保つセラを他所に、黒は手に持った端末を弄る。

 2人で大通りを歩きながら、目的の酒場へと黒が足を踏み入れる。

 すると、セラを外に置いて店内が強力な結界に包まれる。


 「なるほど……罠か?」

 「ちょっと、黒は大丈夫なの!?」


 セラが結界を叩く。無論、傷1つ付く事はない。

 連日に及ぶ襲撃で、黒は内心呆れていた。単独による襲撃でも圧倒的な実力差で、難なく敵前逃亡していく非力な襲撃者達。

 襲撃を画策するのであれば、アンプルを使っても元が取れる程度に楽しめる実力者が来て欲しいのが正直な所であった。

 流石に、皇帝などの化け物は別としてももう少しマトモな人材が来ても良いのではと思い始めていた。

 集団での襲撃であっても、黒が本気で危機を感じる場面はあまり無いのが現状。

 無駄にアンプルを使うのであれば、使って後悔しない程度の奴に使う方がお得で、後々後悔する事もない。


 「――昨日の話は、信じて良いんだよな?」

 「はい、我が王と皇帝が約束は守ると言ってました。ですから、私達も――本気で行きます」


 メイド服に身を包んだ刺客の1人が、黒へと襲い掛かる。

 手に持った大刀で、店内の木製テーブルや椅子を簡単に切り裂く。

 左右に避けつつ彼女の出方を伺っていた黒だが、これまでの刺客とは明らかに異なっていた。

 大振りな大刀を紙一重で躱わす黒だが、大刀のすぐ後に彼女が隠し持っていた短刀が間近に迫っていた。

 避け切れずに、頬を掠めた短刀に塗られた毒が瞬時に黒の動きを鈍らせる。

 動きが弱まった黒へと畳み掛ける彼女の大刀と短刀の猛攻に、黒の額から汗が滲む。


 「やはり、我が王の助言通りですね。貴方は、膨大な魔力に頼った戦いをこれまでしてきた。だからこそ、毒や精神干渉系の耐性が異常なまでに低い!!」


 もつれた足が大刀の刃を受ける。大刀の破壊力で、床から足が離れる。

 その場で、くるり――と、体を回され身動きの取れない黒へ大刀が薙ぎ払われる。

 テーブルを蹴散らしながら、壁に叩き付けられる黒はその後も一方的に叩かれる。

 大刀による破壊力と、短刀による手数の多さと素早さに翻弄される。

 されるがままな黒が少ない魔力で、斜めに振り下ろされた大刀を白羽取りで受け止める。

 大刀を早々に手放し、短刀で全身を切り刻まれる。だが、それこそが黒の目論みであった。

 大刀を手放して、短刀に瞬時に切り替えた彼女だったが、その切り替えの速さが仇となる


 「ちッ――。最初から、私の大刀が狙いですか……」

 「あぁ、あの破壊力は鬱陶しいからな……流石に」


 大刀を叩き折って、砕けた大刀の破片を投げ捨てる。短刀を構え直し、目前の黒が構えるよりも先に彼女は動く――だが、黒の反応はそれ以上であった。

 彼女が黒の真横を通り過ぎるタイミングで、黒のボディブローが彼女の腹部に直撃する。

 自身の加速を上乗せした黒のカウンターが炸裂し、彼女の口から胃液が吐き出される。

 膝を折って、その場で止まった彼女の顔へと黒の容赦ない蹴りが突き刺さる。


 「魔力無しの……単純な蹴りだ。傷は残らねーだろ?」


 床に倒れた女性を残して、黒は結界が崩れるのを待つ間に、外で戦うセラの様子を見る事にした。

 実力は互角か、それ以下の武装した数十人の刺客を前に気圧される事なく。

 淡々と刺客を倒すセラの姿は様になっている。エースダル式の軍隊格闘術をベースにしたセラの格闘センスは、黒から見ても光る物があった。

 エドワード直伝の格闘技術とは言え、8割程度はセラのセンスによる物だろう。

 エドワードは、教えるのが上手い。だが、無茶を平気で強いる所がある。

 セラがそれを乗り越えたと言うのであれば、戦闘センスは黒と並ぶ。

 エドワードがセラを黒の護衛に指名したのは、当たりであったかもしれない。


 「おっ……結界が消えたか」


 結界が消えて、店を後にする黒に気付いた刺客が一斉に、セラから黒へと標的を変える。

 約束を守ってなのか、結界を外側から壊されないようにとセラを引き留めていた人員のすべてが黒へと襲い掛かる。

 魔力で、視力を強化した黒の前ではそのすべてが無駄に終わる。


 「……惜しいな。店の彼女もお前達も、約束を守るとは思ってもいなかった。……正面から堂々と仕掛けて来たのは褒めやるよ」

 「ちょっと、約束って何よ?」

 「あぁ、俺だけを狙って来いって以前の襲撃で言ったんだよ。これで、民間人に被害はでねーだろ?」


 セラが頭に手を当てて黒に忠告する。とは言え、黒がセラの忠告に聞く耳を持たないと言う事はエドワードから事前に知らされている。

 ので、すぐに諦めてポケットの端末を手に取る。そのまま端末を弄って、セラが仲間との合流を急ぐ。

 すぐにでも、合流しないとさらに襲撃が続くと分かっているからだ。

 セラや黒の体力から見ても、そう何度も襲撃されては身体が持たない。

 端末に送られた位置情報を元に、セラが黒を連れて変更された合流地点へと急ぐ。



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