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難攻不落の黒竜帝 ――Reload――  作者: 遊木昌
序章
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襲撃《Ⅰ》


 黒とセラの2人がまず先に向かうべきは、オーレスティと呼ばれる小さな町。

 昔は、鉱夫の町として有名であった。地中深くへと続く縦穴は、当時の炭鉱業がどれほど盛んであったかを物語っている。


 「……落ちたら、即死だよな?」

 「落ちてみる?」

 「殺す気かよ……てか、視線がスゴいな」


 2人で並んでいるからなのか、セラと黒の2人に町を行き交う男達の視線が集まる。

 男である黒からすれば、セラは十分魅力的な人間である。故に、何ら不思議ではなかった。

 ――が、セラからすれば、黒と並んでいると言う状況であれば仕方がないと思えていた。

 その原因の1つが、黒の顔は男よりも女よりの中性的な顔であった事である。

 着痩せするタイプなのか衣服の影響で、細身に見える事と顔が女よりな為に端から見れば男口調の女。

 ボーイッシュな見た目からしても、佇まいや雰囲気を見ればクールなお姉さんと言える。

 そんな黒をまじまじと見て、セラは頬を赤く染める。


 「セラ、どうした?」


 考えてみれば、黒の旅に同行すると言う事は――常に黒を護衛する事になる。

 危険な状況や何かしらの間違いなど、あり得なくもない。思考を巡らせ、顔をみるみる赤く染めるセラが目を回す。

 何せ、黒は《正統派イケメン》と言う分類よりも《かわいい系》の《弟ポジション》に傾いている。

 生まれた時からセラの周囲には、ガチムチのマッチョな強面な男の中の《漢》しかいなかった。

 年齢も近く。その上、これまでいなかったタイプの男に――意識してしまった。


 「なぁ、聞いてんのか?」

 「――ひゃッ!!」


 思わず女らしい声を挙げて、黒の前から数歩後ろへと下がる。

 もはや、意識してしまって顔など直視は出来ない。

 自分の乙女な部分に気付かされ、平静を保とうとする。その度に黒の遺伝子に深く刻まれた。天然の色気がセラを刺激するのであった。


 「おっ、子猫か?」


 しゃがんで子猫と戯れ、時折頬を緩ませてくっしゃっと笑う。


 「気持ち良いな。風が吹くと――」


 くっしゃくっしゃになった髪を揺らしながら、太陽を見上げてセラへと笑みを見せる。


 「……死ぬかも……」

 「なぁ、体調悪いのか?」


 セラの言動の違和感に気付いた黒がその場にしゃがみこんでしまったセラの肩に触れる。

 ビックリして飛び跳ねるセラが近くの階段へと近付き、後ろ向きに倒れそうになる。

 それに気付いた黒が、セラへと手を伸ばす。そのままセラを抱き寄せる。


 「気を付けろよ。仮にも俺の護衛だろ?」

 「……」

 「どうした?」


 もはや、疑う余地はなかった。セラは、黒に惚れてしまった。

 《セラ・アルディール》の初恋は、スラムから自分を救ってくれた。1人の男――


 「所で、聞きそびれてたけど……スラムの連中はどうなったんだ? 病院で顔を会わせた2人以外の奴らは?」

 「みんな無事……スラム出身者は、揃ってエースダルの庇護下に入った。腕の覚えがある人は、傭兵や冒険者に……。女性は、中央や下層の酒場やお店で働いている」


 スラムの仲間の事を話すセラの表情は、いつもに増して明るかった。

 血の繋がりは無くとも、セラからすれば家族も同然な仲間達。

 エースダルに実を置けば、これから先の心配はない。下層の荒くれ者には気を付け無ければならないが――酒場で問題を起こすバカは少ない。

 それに加え、エースダルの暗黙のルールが存在する。女に手を上げた奴はエースダルに必要ない――だ。

 酒場の店主は、相当な手練れだ。何かしら変な事をされれば、ソイツに明日はない。

 不法と言われていても、傭兵や荒くれ者達の間の暗黙のルールが出来ている。

 故に、傭兵や冒険者達の荒くれ者が自然と集まる。居心地の良い場所だからなのかもしれない。


 「なら、何で俺に付いてきた。お前の家はあそこだろ?」

 「私は、亡くなった母と約束したの――母さんの見れなかった世界を私が見てくる。だから、この機会に、旅に出たかったの」

 「……タイミングは、最悪かもな」


 黒がそう言って、このオーレスティで買い占めた。魔力回復用のアンプルを1つ使って、一気に魔力を補給する。

 アンプルを使う事で、自然回復を待たずして瞬時に自身の魔力上限を上回る魔力を得る事が出来る。黒がその補給した魔力を少しだけ使う。

 セラと自分の背後から迫る刺客に魔力を研ぎ澄ました一撃を叩き込む。

 黒色の稲光に続いて、破裂音が大気を震わせながら周囲へと響く。

 セラが気付くよりも先に、吹き飛ばされた刺客を前にセラと黒の2人が背中合わせになって構える。


 「――2名のお客様だ。おもてなししねーとな」

 「ちょっと!! ビックリしたんだけど、これからこんなのが続くの……ね」


 セラの背中に感じる黒の暖かな温まりに、再び顔が暑くなる。

 先ほどまで、普通に話せていたのが不思議なほどに思考が定まらない。

 来るぞ――と、黒の声に我に返って。迫り来る刺客を見詰める。

 自分のすべき事を全うする。エドワードから任されたこの任務を達成する為に――




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