表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
難攻不落の黒竜帝 ――Reload――  作者: 遊木昌
序章
28/231

暁の任務《Ⅰ》


 赤色の髪の毛がテラスの外で風に揺れる。夕焼けを見詰めて、カエラの質問に答える。


 「知っての通り、僕は死人だ。世間から死んだとされる男が生きてちゃ……問題が生じる。そこで、カエラの出番って訳だ」

 「……具体的に、私は何をすればいいのですか?」


 暁がテラスの外で指を鳴らす。カエラと暁の2人が別空間へと飛ぶ。

 場面が変わって、着地に失敗したカエラが前のめりに倒れそうになる。

 隣の暁がカエラの手を取って、倒れないように支える。


 「ごめんね。久しぶりの転移だから、加減をミスちゃった」

 「いえ、大した事はありません。それよりも、ここは?」

 「裏世界(アンダー・ワールド)――。僕達は、そう呼んでる」


 宇宙へと放り出されたかのように、カエラの視界に星空が広がっている。

 上も下も見渡す限りの全てが、星空の世界であった。星空の中に一際光る光りが無数に見え、今にも手が届きそう。

 端から見れば、宇宙空間で立っている様にも見える。カエラと暁の2人が無数に光る星空の中で話を続ける。


 「この世界には、倭と大竜牙帝国を敵視している勢力が存在している」

 「はい、四大陸の他3ヶ国ですね」

 「惜しいなぁ、カエラちゃん。四大陸の勢力じゃないよ。凄く惜しい――」


 そう言うと、暁は胸の内に秘めた憤りが蒸し返すのを必死で堪えるかのように、胸を強く押さえる。

 カエラが心配そうにするが、暁が血を吐き出す。わざと肉体を傷付けて内側からその憎しみを押し殺す。

 血が星空へと消えて、作り笑みを浮かべて暁はカエラに役割を与える。


 「……今の僕達は、力が足りない。単純に数じゃなくて、魔力が足りない。だから、未来ちゃんはあの日を境にこの世界から消えた」

 「では、無事何ですね。……よかった」

 「無事では、あるよ。少なくとも……今はまだね」

 「今は、と言う事は――」

 「少なくとも、1年か半年で僕達は奴らに見付かる。そうなれば、別世界へと逃げたみんなが殺される。だから、カエラには――僕の手足になって欲しい」


 この世界では、満足に動く事が出来ない暁にとって、ある程度の事情を理解して協力できる存在はカエラぐらいである。

 カエラは暁の事を信用している。それは、暁の目からもわかる程に、だからこそ暁の手足として動くにはカエラは適任だ。

 裏切る可能性は、少しでも無い方が良いに越したことはない。

 裏切る可能性が少ない事が1つとして、カエラは――強い。

 これが、暁がカエラを適任とした理由である。暁やあの黒ですら認める程にカエラの実力は高い。

 現にエドワードと黒の戦闘に介入した。そして、一刀をもってして2人を無力化している。


 「……ごめんね。本当は、僕がするべき事だけど……今の僕じゃ足手まといにしかならない」

 「いえ、私はいつの日か暁様や未来様に報いる日を待ち望んでいました。弱かった私に勇気と力をくれた2人に、感謝しかありません」

 「ううん、強くなったのは……カエラちゃんの努力だよ」


 空間の接続が途切れ、部屋に戻された2人はまるで抱き合うかのような体勢であった。

 急いで離れたカエラが赤くなった顔を反らす。そんなカエラを見て、暁は優しく微笑んだ。

 カエラが受けた指示は、2つ――


 1つは、暁の『生存』を黒に『悟られない』事――

 2つは、黒を『無傷』で倭へと『送らせない』事――


 この2つの指示をカエラは承諾する。準備があるからと、部屋を後にするカエラを見送る暁が夕日を見詰める。

 日が完全に落ちる。エースダルに夜が訪れ、暁の深紅の髪の毛がより一層その赤さを深める。

 黒とは異なり、魔物(ギフト)の力を発揮すると暁の瞳は赤く発行する。

 そして、暁の影から漆黒のドレスを身に纏った白髪の少女が現れる。

 物語のお姫様のような容姿に、真っ白な肌と真っ赤な瞳が闇の中で不気味さを更に引き立てる。

 ヒールで部屋の中を歩いて、暁の前で手を後ろに組んで尋ねる。


 このままで、良かったのか――と、その質問に対して暁は釣り上げた口角と犬歯ではなく。確実に牙となった歯を光らせ、テラスから身を投げる。


 「さぁ……。ここから、鮮血の夜(僕の戦い)を始めよう――」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ