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難攻不落の黒竜帝 ――Reload――  作者: 遊木昌
2章 王冠に願う果てなき希望――【湖上に馳せる麗しの『乙女』達】
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新任教師が、不法侵入《|》


青い空を見上げて、溜め息が溢れる。

予定通りであれば、未来(みらい)と共に聖王直筆の推薦状を持って学長室に挨拶の筈だった。


「どうしてこうなるんだよ……」

『むぅ、宿主(マスター)の運が終わった。から、じゃないか?』

「……だよな」


ここ、北欧領域国家で最も生徒数も敷地面積もトップクラスで巨大な学園――《(ほし)(みず)女学院》――


創設者が倭出身とかなのか、北欧なのに倭よりの学校名だと当初は思った。

とは言え、そのレベルは高い。この一言に尽きる。

女学院と聞いて――女子校って、マジかよ。と、教師に対して不安しか無い状況で、自体はさらに悪化する。

ただでさえ、何10歳も離れた男が女子校にいる訳では無い。離れていても5歳か4歳程度の学生相手に正気でいられる自身はない。

ここで、暁の顔が頭に浮かんだ。アレだけモテれば、他の子に手を出してしまうのも分からなくもない。


「……何より、未来に嫌われる」

『当然じゃな……それに、今はこっちが1番の問題だ』


校内を走り回る学生達――。教員が説明するよりも先に、ほうきなど棒状の物を手にとって校内に現れた不審者を撃退する為に走っている。

中には竹刀や薙刀、ボクシンググローブなどの部活動で使用する武具がチラホラ見える。


「……ミイラ取りがミイラになる。……冗談じゃ、ねーよ」

『不審者を追ったのは事実――捕まえようとしたのも、事実。そのまま校内に入って、間違われたのも事実――』


黒、バハムートの2人が、嘆くように空を見上げる。


「『――タイミング、悪すぎだろ』」





遡る事、2時間前――


黒、未来がシャウから手渡された教員服に着替える。

白色を貴重とした学生服にとは違って、黒スーツのような見た目に金装飾が施された衣服は少し動きにくいが……カッコいい。

黒の頭髪に、黒スーツなので全身を真っ黒なのは対して思う所は無かった。

サングラスでもかければ、どこぞのエージェントかもしれない。

そう、思っていた黒が1番驚いたのが――未来の着こなしである。


隣の部屋で着替えていた未来が、扉を開けて黒の前でスーツ姿を披露した。


ただの黒スーツ、体にピッタリなサイズで体系がもろに出るスーツだった。

スカートかと思えば、未来はパンツであった。

腰から下に伸びた黒色の生地が未来のスラッとした立ち姿をより一層強調させる。

ヒールで足先まで美しいまでの細さ、そんなモデルのようなスラッとした立ち姿に――黒は、思わず目を背けた。


「女の子のスーツ姿、カッコいいでしょ?」

「……あぁ、少し……大人っぽく見えた」

「まるで、大人に見えないみたいな言い方だな~。……ねぇ、ちゃんと見てる?」

「……まだ、直視できない」


普段とのギャップの差に、未来の顔を見れない黒をからかう様に視界に入る為に周りをうろうろする未来――

部屋を訪れた聖王、シャウも未来と黒のスーツ姿にテンションが上がる。


正統派イケメンのような顔立ちの黒――

知的なボーイッシュな風貌な立ち姿の未来――


シャウ、聖王のテンションの上がり具合に引き気味の黒とは対照的にどこか火の付いた未来が黒の髪型やアクセサリーなどで、3人して黒を弄りだす。


結局――黒は、銀の伊達メガネの装着を強いられる。

未来は、栗色の髪をハーフアップにして黒色の伊達メガネを装着している。

これでバッチリだ――と、なった所で後ろから腕を組んで来た未来が突然のツーショット。


フレームに映るのは、笑顔の未来と突然の事にビックリしている黒の微笑ましい姿――


シャウが黒を見て、一言。馬子にも衣装――と、黒をバカにしながら4人が女学院へと向かう。


「それでは、私はここまでです。お二方の活躍を心待ちにしております」

「そこまで、対した事はしないつもりだ。教師っても臨時講師的な感じだろ?」

「えぇ、ですが――期待は、させてください」

「……あぁ、分かった。出来うる限りの事はする」


車に乗って、3人の後を去って行く聖王――3人は、その姿が見えなくなるまでその場に残った。


パン――と、手を叩く音が聞こえる。

シャウが手を叩いて、2人に女学院への門を潜る事を提案する。

その際に注意点として、門以外からの侵入には警報がなる事や不法侵入には全校生徒が敵になるなど物騒な説明を受ける。


「不法侵入者に対して、ここの学生は勇敢だな」

「えぇ、女学院ですから……比較的女性は下に見られやすい。そんな彼女達が少しでも世界に影響を与える為に、既に戦闘技術の基礎は既に備わっております」

「……なら、私達が教える事とかないよね?」

「俺が、医療、支援系統の魔法の知識……未来が、体術、剣術、戦闘技術系統――」


きっと、生徒が2人を見れば教える科目が真逆だと指摘される事が目に見えて分かる。

年齢はそう変わらないが、学生時代の過ごし方が全く異なる黒と彼女達でコミュケーションが取れるのか。

黒の不安は募るばかりで、時間によっては1日中一人で学生の教育になる。


「……未来、時間が空いてたらそっち行っていいか?」

「来ても良いけど、時間あるのかな?」

「それが、問題――ッ! 2人共、そこで止まれ」


黒の発言に、シャウ、未来がピタリ――と止まる。

黒の見詰める先は、校舎に近い樹木が並ぶ位置である。

高い柵が学院を囲んでいても、樹木などを用いれば侵入は容易である。

未来、シャウが樹木の中で動く人影に反応するよりも先に――黒が跳んだ。


一瞬、瞬きよりも速く接敵して人影に触れる。


「おい、何して――」


黒がローブで全身を隠した人影に手を伸ばした次の瞬間、黒の顔にスプレーが吹き掛けられる。

避ける黒だが、避けた場所が悪かった。


柵を越えて――芝生へと落ちる。




「「「――あ」」」



響くサイレン――。正門が閉じられ、シャウと未来は学院の外へに締め出される。

柵を越えて入った為、門は閉ざされる。鳴り響く警報と共に黒が侵入者と認識された事がより現実味を帯びる。


「おい、マジかよ……」


サイレンを聞き付けて、足音が聞こえる。

まだ、遠い。だが、確実にこちらへと向かっている。

きっと、柵を越えて侵入した際に侵入地点が丸わかりにでもなるシステムになっているのだろう。


『逃げた方が、良いと思うが?』

「当たり前だ……。新任教師が、侵入者とか――笑えねーよ」


芝生を力強く蹴って、校舎の壁を一呼吸で駆け上る。

7階の校舎を駆け上って、屋上から外へと出る。

しかし、目の前の結界の強度が自分の予想よりも遥かに高レベルな事に気付く。

結界に頭をぶつけて、仕方なくそのまま蹴って屋上に戻る。

侵入者に対して、逃げるや逃がすと言った事はしない。

女学生だからと言って、侮るな。――そう、製作者が言っているのが分かるレベルで、生徒、教員で迎え撃つ様な設計になっている。

そんなに逞しいのであれば、こちらとしても色々勝手が出来る。


プルルルップルルルッ――


ポケットの端末を開いて、耳に当てる。


『シャウです。橘様は、運がないようですね』

「茶化すなら、切るぞ? 侵入したら捕まるしかねーのか?」

『本当の侵入者なら、そうですね。ただ、今回のは事故です。もしくは、意図的な罠です。なので、こちらでこの警報は嘘だと学院側に伝えます。ですから――』

「――つまり、時間まで逃げろって事だよな? なら、楽勝じゃねーか」

『……フフ、流石は橘様です。時間までお逃げ下さい。こちらも手早く済ませますので――』


通話が切れ、軽く伸びをする黒の眼下に大勢の生徒が見える。

女学院と聞いて、清楚なお嬢様のような学生を連想した。

が、実際は程よく鍛え上げられた魔力に強さを兼ねそろえた騎士の卵達である。


「……どう見ても、バトルジャンキーな生徒がチラホラ見えるよな?」

『……むぅ、本気で逃げぬと……捕まるぞ。マジで……』

「てか、結界壊せば良くないか?」

『これから守ろうと言う場所を壊してどうする。少しは、考えぬか……』


立ち止まって、空を見上げる。

シャウの言った《罠》と言う線は濃厚で、この展開も罠にハメようとした相手の思う壺なのかもしれない。

侵入者を見付けて、動いた矢先に自分が立ち代わるように侵入者にされる。

予想すらしていなかった。

こんな事なら学生じゃないか? などと言う甘い考えを捨てて、樹木に魔力砲を思う存分、叩き込めば良かった。



「どうしてこうなるんだよ……」



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