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難攻不落の黒竜帝 ――Reload――  作者: 遊木昌
1章 機械国家の永久炉――【仕掛けられる『皇帝』への罠】
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さようなら《Ⅱ》


ここで、黒が魔物(バハムート)の力を行使した。


黄へと放たれた黒色の魔力が正面に広がっていた草原を黒焦げに変える。

その魔力が黄の眼前で炸裂し、花火のような巨大な爆発を魔力砲として圧縮し無駄な衝撃も残さず相手に放った。


至近距離――それも、黒の膨大な魔力の一欠片が体を焼いた。

眩い閃光が視界を覆い隠し、手で光を防ぐよりも先に漆黒の魔力が砲撃となって襲い掛かる。

耳に残る轟音が、聴覚を著しく下げている。舞い上がった粉塵が辺りに降り注ぐ。

土の雨の中で、銀刀を手放して影の中へ落とす。

腕に装着した忍び篭手も銀刀同様に外し、足元の影へと吸い込ませる。

武装を解除して、倒れる黄の下へとゆっくりと歩く。


「……つい、熱が入っちまった。悪いとは思うが、別に謝る必要はねーよな?」


――息を吐いた。

真冬でもないのに、その口から溢れた真っ白な吐息。

その吐息はまるで、物語に出てくる邪竜のように口から熱を逃がす。

戦闘の中で、纏った魔力によって体内の温度が急激に上昇する事で、吸い込んだ空気が外と内との温度差で白く濁る。

それほどになるまで、黒は力を出していた。いつの間にか、無意識の内に体の内側で魔力を煮え滾らせていた。

加減などしている事がバカらしくなるほど、黄との戦いで黒は自然と拳を握っていた。


黄は、それについて指摘する事はない。する、理由がない。

初めから、手加減する黒に全力を出させる。それが、1つの狙いであったからだ。

力を使わせたいのか、使わせずに倒したいのか――もはや、自分が分からなくなる。

だが、今の黄が胸を張って言える事が1つある。





「あぁ、やっぱ……お前()とはこうじゃねーとな」





加減して、倒す。

加減されて、倒す。


そんな中途半端は許されない。やるなら、互いに全力で全てをぶつける。

それが礼儀で、黄が求めていた『答え(・・)』である。

応えるなら、黒しかいない。

黒にだけにしか、この大役は任せられない。


メリアナ、ハート、(しょう)(あかつき)(しろ)未来(みらい)――

その他の並外れた王の世代(化け物達)――


彼らでも、惜しい所までは行けるかもしれない。

でも、黄が求めているのは――黒、である。


橘黒(たちばな くろ)だけであって、難攻不落の黒竜帝だけである。


それが、一番求められているからとも言える。

数え切れない規模と権力の《オーディエンス》や《スポンサー》達は、黒の全力(・・)を今か今かと求めている。


手加減など許されない。手加減しているあの男()を見て、彼らが喜ぶ筈がない。




初めは、そう言った理由があったかもしれない。


――が、もはやどうでも良い(・・・・・)


自分が黒竜帝に挑む。それが、周囲にどのような影響を与えるのかなど一切関係はない。


――途中で止められる。

――余計な邪魔が入る。


すべて、どうでも良い。

ただ、黄と言う男(自分)黒と言う男(黒竜帝)に刃を向ける。

ただ、それだけで全てに満足ができる。ようやく、満たされる。

からっぽだった作られた《心》と言う名の瓶に、ようやく1滴の魔法の水が落ちる。

深い瓶の底を僅かに湿らせるだけだ。誰が見ても、ビンの底に水滴が付着する程度で、一体何を満たせると言う。


多くの者がそう思って嘲笑っても、黄は違っていた。その1滴の価値を理解しているからこそ――待っていた。



頭のイカれた戦闘狂か死を恐れない兵隊のような感覚が、初めこそはあった。

右も左もどこを進んでもどこに逃げても、走って走って走り続けた。

だが、どれも結果は同じで何一つ変わらない。


色々考えて、クラトやその他のクズ共の話にみんなで乗った。でも、それも全部ここで無視する。


きっと、2人(・・)は怒鳴って怒るだろう――


少しだけ、ほんの少し――

焦らせて焦らせて、うんざりさせる予定で、ちょい出ししていって最後に爆発させる。

そんな手筈とかもどうでも良い。全部この場で無視して、台無しにして、無茶苦茶にして、ここで終わらせる。


――ここで、殺し殺されの舞台を作る。


何人足りとも邪魔立て出来ない。そんな舞台を作ってしまえば、もう後戻りは出来ない。

――するつもりは、毛頭ない。


ヘルツ、ティンバー、田村(たむら)のおかげもあって、黒へのお膳立て(準備運動)は整った。


今日ここで、全てにケリを付ける。



「あぁ、とんでもない魔力……例え、防げてもダメージにはなってた。ホント、イカれたかのように心が踊る。瀬戸際なのに……死ぬかもしれないのに、殺されるかもしれないのに――」


目の前の男がゆっくりと近づく。

足元の影から青色の瞳が熱を灯して、ユラユラと妖しく光る。

力の一端を顕現させ、全力とは言わなくともその力を見せた。

手加減を忘れて、熱によって熱せられた黒の姿は輝いて見えた。


「そう……そうだよ。本気だ……本気じゃなきゃ、意味がない。僕と黒とは、本気でじゃなきゃ――意味が無いんだよッ!!」


溢れる膨大な魔力が、黄を包み込む。

魔力の渦に飲み込まれ、妖しく光る青い眼光が黒を視認する。

向かい合った両者の高い魔力によって、一帯の空が荒々しく荒れ始める。

鉛色の空が、次第に分厚く黒く色を変える。

地表に穴を穿つほどの雷鳴が稲光と共に空から降る。


魔力が、騒ぐ。


今世紀最大の戦いと言っても過言は無い程に、一帯の魔力がざわついた。

荒れ狂う空に合わせて、落雷が互いに衝突して眩い閃光を生み出す。

皇帝クラスの化け物同士が本気で、衝突する事がない限りこのような光景は起こり得ない。


両者が纏った。両者が溢した魔力が――

否応なく。世界に影響を与えてしまう。



王の世代に、強烈な衝撃が――駆け巡る。



世界全土に散らばった世代の面々が、その魔力を感知して各々が2人のいる方角へと振り向く。

胸が高鳴り、踊るのは何も黒と黄だけではない。

同じ世代ならば、尚の事その魔力に感化される。干渉は不可能――

ただ、2人の戦いを観戦するしかない。


どちらかが倒れる。

立っていられるのは、一人だけ――もしかしたら、そんな予想を覆して両者共に沈むかもしれない。


どちらが倒れても、世界に与える影響は変わらない。


黒が倒れれば、抑止力の象徴が消える。

世界に《恐怖》の明日が訪れ、世界に闇の時代が訪れる。

活気づく闇組織が隊列をなして表へと躍り出る。


恐怖、破滅、絶望の3体の《獣》が生まれ落ち、世界は沈む。


黄が倒れれば、黒の力を世に知らしめる結果となる。

この手で友人を手に掛けたと言う事実に心を失って、敵対する者を尽く消し飛ばす。

そんな恐怖の象徴が生まれるかもしれない。



それでも――黒は、力を振るう。




「そうだよな……俺とお前は、本気で戦ってこそだ。……皇帝として、戦友として――1人の男として」


拳を構える黒、そんな動きの数倍も速く黄は間合いを詰める。

瞬間、黒の顔から大量の汗が噴き出した。


焦り――


驚異的な動きに加えて、黒の予想を遥かに上回るポテンシャルの高さ。

黒の顔から余裕さを奪うには、その動き一つでも十分事足りる。


防ぐ――その選択肢が、黒の中から途端に失われる。

防ぐ行為を取る前に、黄の打撃が黒の胴体を捉える。

骨がヒビ割れ、肉がちぎれる。血管が裂け、内蔵の出血と共に口から吐き出される大量の血液がその威力を物語る。


地面が真っ赤に染まり、衝撃で吹き飛んだ黒が勢いを転がって殺す。

折れてフラフラと揺れる片腕を瞬時に治療し、立ち上がると同時にもう片方の腕に魔力を集中させる。


右サイドから追撃する黄の姿を横目に、その場から飛んで身を翻して追撃から逃れると同時に空中でガラ空きの黄の顔面に魔力を纏わせた拳を叩き込む。

空中による回避と同時に、一瞬にして相手の無防備な所へと攻撃を与える。

そのまま勢いで体を反った黄の後頭部に体勢を変えた勢いで、そのまま回し蹴りによる追撃。

一回転する黄が地面に背中を叩き付けると同時に着地し、黒が着地したと同時に黄が仕掛けた魔力の爆弾が、無警戒だった足下から炸裂する。


「――ぐッ!? ッ゙ぅ゙……ッ!!」


爆発の勢いで、鋭利な地面の破片が黒の体に突き刺さる。

針のように細かな破片が幾千幾万と黒の体に襲い掛かり、砂埃によって奪われた黒の視界が一瞬だけ閉ざされる。

目を瞑った事で、視界からの情報が一瞬だけ途絶える。

常人にとって、一瞬にしか満たない僅かな隙間だが――黄はその隙間を狙った。


地面を蹴って、直立状態の手頃な的に向かって魔力を込めた強烈な一撃を浴びせる。

地面に叩き付け、一度跳ねる。勢いが凄まじく、地面がクッションとなって跳ね上がる。

そのまま跳ね上がる相手の胴体に、捻りを加えた蹴りを浴びせてその場から蹴り飛ばす。


「まだだ……まだだよな~? まだまだ、これから――だよなッッ!!」

「……うるせぇ、よ。黙って、俺に、叩き……潰されてろ――ッ!!」


2人が青い炎を灯したギラッギラッな眼で興奮しているかのように笑みを浮かべる、

2人揃って上空へと飛び、互いに防御を捨てて拳で真っ向から叩き伏せにかかった。

2人が空中で衝突から、身を翻して離れ地面へと着地する。

着地で生じる僅かなタイミングを上手く掴んで、黄は攻めの姿勢を崩さない。

着地と同時に黄が地面を蹴って、黒へと詰める。

それを待っていたかのように、黒の間合いに接近した途端――黒の魔力砲が違和感を察知して飛び上がる黄へと放たれる。


漆黒のレーザーが真上へと登り、空中に身を投げた黄の真上に移動した黒が再び魔力砲を真下へと放った。

漆黒の魔力が黄を飲み込み、真下の草原を真っ黒に染める。瞬く間に、緑豊かな自然が灰と消える。


「それが、今の全力か!? 冗談じゃ、ねーぞッ!!」

「――ッ!?」


魔力砲を掠めつつも避けて、回り込んだ黄による蹴りが黒の首を狙った。

咄嗟に防ぐものの充分な魔力による強化、防御が行えず。腕を間に挟んだとは言え、その衝撃をモロに受ける事となる。

斜めに吹き飛ばされ、地面に叩き付けられ一度跳ねた黒へと黄の魔力砲が放たれる。


「ほら、お返しだ――」


黄が親指を下にして、喉を切るジェスチャーをする。

その後に、頭上の雲を吹き飛ばすほどの巨大な魔力砲が空から降り注ぐ。

事前に仕掛けていたのか、数十に及ぶ巨大な魔力のレーザーが黒の体を幾度も焼いた。


その光景は、世界を破滅させる戦略兵器であった。


大陸を滅ぼすほどの魔力をたった1人に浴びせる。

雨のように、降り注ぐ魔力が巨大な爆撃を発生させる。


「縁日の……射的じゃねーんだ。弾数だけじゃ、腹は満たされねんだよ――ッ!!」


薙ぎ払った手が、降り注ぐ砲撃の尽くを同出力の魔力で相殺する。

起き上がって、砂埃の中で上空を見上げている黒の視界の外から黄が迫る。

音速の域を超えて、黒の間合いを瞬時に狭める。

このまま魔力を注いで、砲撃で削るのも策の1つである。


が、黄からその選択肢は消える。

それは、当然――


「――通用、すれば……だよなッ!!」

「分かってんじゃ、ねーかッッ!!」


互いに踏み込み、全身の筋肉に強力な強化が施される。

黒が振り向くよりも先に、黄が迫るよりも先に――2人は互いの体を相手に勢い良く叩き付ける。

八極拳にある技の背中で相手に衝撃を叩き込む――様にも見えるが、単純に互いの動作の邪魔をした結果――相手に体を叩き付ける結果となった。



ドッ………パッッッン――!!



高濃度同士の魔力が衝突し、凄まじい衝撃波と共に空気が破裂する。

地面が衝撃で陥没し、地割れと共にガラスが割れる様に大気と魔力が割れる。


割れた空気が真空の刃となって、2人の頰を掠める。


黒との僅かな時間の闘争を経て黄の内に秘められた。剥き出しの本能が背中を伝う黒の殺気に瞬時に反応する。

地面を蹴って黒の頭上へと逃げ、感覚的に黒の動きに対応し始める。

魔力による《肉体強化》や素の《潜在能力(ポテンシャル)》の高さ――


それらの要因が合わさり、強化の有無に関わらず黒の動作に反応を示す。

恐るべき適応力に、黒が険しい顔になる。直ぐ黄の動きに対応する黒の蹴りが、黄の鼻先を僅かに掠める。

右足の蹴りに続いて、左足の蹴りが迫る。


重力に逆らえずに、落ちる黄の顔に黒の蹴りが入る。

何とか腕で蹴りを防ぎ、透かさず足首を掴んでそのまま地面へと落ちる。

重力、捻り――黄はそれらの勢いを利用して、黒の足首を捻じ曲げる。


関節が容易く外れ、いとも容易く黒の足首をへし折る。耳に残るような異音を響かせた。

顔が更に歪む黒へと直ぐ様動いた黄の一撃がガラ空きとなった胴体にダメージを与える。


炸裂する漆黒の稲妻が、黒の体を貫く。

稲妻の内部まで到達する衝撃に加えて、黄の打撃が加算される。

片足で踏ん張りが効かず、倒れる黒へとさらなる追撃が迫る。


「まだ、寝るには早いぞ――」


へし折れた足首を掴まれ、そのまま背負い投げのように黒の体が投げられる。

地面に力任せに叩き付けられると同時に、そんな体を真横から蹴り飛ばす。

黄の猛攻は止まる事なく続く。息つく間もなく。延々と黄のターンが続く。



ババッッバババババババッッッ――!!



されるがまま、拳と蹴りの応酬を黒はその身で受ける。

隙を見て逃げる事など不可能な程に、黄の攻撃速度は既に黒を大きく上回っていた。


例え、強化魔法で逃げられる――としても、魔法を扱う隙を今の黒から完全に消し去る。


徐々に蓄積される漆黒の魔力が漆黒を纏った応酬の一撃で、内部から炸裂する。

防御不能な魔力攻撃に幾度も晒され、黒の受けたダメージは深刻を超えている。

度を超えた深刻さは、命の危うさを持っている。


それでも、依然として――再生魔法(治療)を行わない。

最初、片腕を治した所から一度も使っていない。

その上、黒竜の力を更に行使する気配が微塵も見えない。


黒がその気になれば、猛攻の間に黒竜が少なくとも2度顕現し邪魔する事はできた。

それなのに、黒は顕現させなかった。まるで、その必要が無いかのような行動――それだけの手札が今はある。



それを理解した上で、黄は挑む。



(残された時間は、少ないだろうな……多分、バレてる)


雑念を振り払うように、一歩踏み込む。

待ち構えていたかのように、黒の掌底が黄の体を地面から引き離す。

上へ、浮き上がった黄の前で黒が――手印(・・)を結ぶ。



ここに来て、魔法の効果を底上げする。



だが、無詠唱、無方陣――手印のみの魔法発動と言う違和感に黄は目を疑う。

別に、無詠唱、無方陣が珍しい訳ではない。それに、意味がない訳でもない。

だが、通常(・・)魔法の効果を上昇させる為に、手印を用いるのであれば――詠唱、方陣のどちらかも併用した方が格段に効果も効率も格段に良い。


――言葉による《詠唱》と同時であれば《方陣》と《手印》のどちらか1つはどんなに下手でも行える。


なのに、黒は手印だけ(・・)を選んだ。


精一杯の無表情の裏で、僅かな笑みを浮かべている。

黄が、黒の手印のみを採用した意味を理解できず――地面に着地すると同時にその場から離れる。

危険な予感を感じて、黒から距離を離した。距離を置く事で、手印の完成を助長するかもしれない。

それでも、あの場に留まる事の方が、断然リスク有りである。


ドッ――と、汗が噴き出した。

滝のように汗が流れ、首筋から伝う汗を腕で拭う。

肌に服が張り付き、気持ち悪い感覚と一緒に黒を覆う異質な魔力に悪寒が走る。


「……どうした? 逃げるにしても、大袈裟だぞ?」

「警戒するに、越したことはないでしょ? ……特に、相手が相手なら――」

「それは、そうだな――」


黒の結ばれた指がゆっくりと形を変える。

片手、両手、片手――と、交互に印を結ぶ。

その時、黒の印の意味をようやく理解した。



――魔物(バハムート)が、詠唱と方陣(2つを肩代わり)していた。



ここまでの戦いで、魔物を使用しないのはハンデでもなんでもない。

ここまで、詠唱、方陣の完成に力を入れていたからである。


黒は、最初の一発目で黒竜の力を使った。

そこから、一切力を使わない。それもすべては、詠唱と方陣の為に――


そして、戦いの中で魔物の力を悟らせないようにしつつ完成間近ではその魔力や魔物の気配で所在を察知される。

それを防ぐ為に、黒の意味不明(・・・・)な手印を行って、相手の警戒心を刺激する。


向いて行ってしまった警戒心は、中々離れない。


2つの可能性が、相手に突き付けられるているのだからだ。


本当に意味の無い印――

意味のある印――


印を警戒し距離を取ろうと取らなかろうと、黒には関係はない。

既に黒のペースに乗せられ、黒一人だけでここまで戦って来た事で黄の頭には、黒をより鮮明に警戒する羽目になった。

その為、魔物と言う選択肢は単なる一撃の切り札と言う認識が強くなる。


「……詠唱、方陣を魔物(ギフト)に任せる。自分を囮に、魔法の行使か――ッ!!」


距離を詰める黄の目の前で、黒が印を解いて人差し指を向ける。

人差し指の先に集まる微小な魔力を視認し、黒の視線を切るように左右に飛んだ。


(詠唱、方陣は……魔力砲の威力強化だな。なら、問題はない!!)


魔力の指向砲出は、攻撃力がかなり高い魔法攻撃である。

最も高い漆黒の魔力を纏えば、その火力は魔物(ギフト)の力と張り合える。

が、魔力砲は指先から放つ事や指先の向いた先に圧縮させた魔力を放つ攻撃である。


その為、すべて指先――から始まる。

指向と呼ばれる事から分かるように、指先に集中すれば攻撃の先読みがある程度可能となっている。


そして、今の黄であれば黒の魔力砲を避け切った上で間合いを潰せる。


一歩、力強く踏み込んで黒の胴体に渾身の力を叩き込む。


漆黒の稲妻を纏った渾身の殴打によって、ズタズタになった胴と内側から音が響く。

内蔵や骨、筋繊維が魔力によって痛め付ける音が響く。

今の一撃は、相当なダメージとなる。

その証拠に、黒の体から真っ白な湯気が大量に立ち込める。


「……渾身の魔力砲、だろ? 残念だった……な」

「――あぁ、渾身(・・)捨て身(・・・)の魔力砲だ」


一撃の衝撃で、体を仰け反らせた黒が口から血を噴水のように吐き出した。

そして、再生による大量の湯気で――隠れた(・・・)指先を黄に向けた。



「――さようなら……」





閃光――視界を覆い隠す程の眩い閃光、その後に漆黒を纏った闇が黄へと襲い掛かる。





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