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難攻不落の黒竜帝 ――Reload――  作者: 遊木昌
1章 機械国家の永久炉――【仕掛けられる『皇帝』への罠】
200/231

例え、それでも――《Ⅰ》


子供の頃は、それなりに楽しかった。


未来(明日)の事なんて気にせずに毎日のように、ガゼルとトゥーリ、仲間達と走り回った。

機械と排気ガス、鼻に付く臭い油と鉄屑の世界を駆け回って遊んだ。

時に喧嘩して、時に泣いて、時に笑って子供のように毎日を騒いで過ごしていた。


その時は、この世界の空が青い事なんて知らなかった――

世界は、自然に満ちており。夜には星空が光り輝く事なんて――知りもしなかった。


それだけ、自分の世界が狭く。未知数であった。

まだ知らない事や知りたい事で溢れた世界何だと、実感したのは――騎士になってからだ。


遠征と称して、他国の戦力の偵察。理由はどうあれ――その日を堺に俺の世界が変わった。

そう、そこが自分の原点(・・)だ。自分達の世界は、非常に狭く。

それでいて、悲しい物であった。


空は、青く澄み渡っている。


夜空は、絵画のように美しい。


花達は咲き誇り、自然に溢れている。


――何一つ、知らなかった。


排気ガスと鉄臭さで、その本来の美しさを知らない。

立ち並ぶ建物の影に、夜空は消えて草木はそもそも育たない。

青空も夜空と同じく、まともに見上げる事すら叶わない。


だからこそ、それらは《ローグ・スター》と言う男の心を大きく揺さぶった。


澄み渡った濁りの無い水を飲料としてではなく。水遊び――と言う娯楽の為に消費する。

眼下に広がる草木の絨毯――雄大な自然の結晶、草原を前に心は晴れる。


色鮮やかな花達を前に、彼女――トゥーリの僅かに緩んだ笑みが、心に《()》を灯した。


































――いつの日か、イシュルワに澄んだ空(美しい世界)を――








その(野望)が、倒れた筈のローグに再び決意の炎を灯す。



今にも倒れそう。

吹けば、簡単に飛んで消える筈の小さくか細い炎なのに、その体は痛みを忘れて立ち上がる。


痩せ我慢――そう、思えるほどにローグの体は限界である。


――だが、立ち上がる。


今、立ち上がらなければならない。逃げてはならない――理由がそこにはある(・・・・・・)


その覚悟だけで、ローグはウォーロックの前に立ち塞がる。

満身創痍など捨て置け、確固たる覚悟の元にローグは全身を奮い立たせる。

熱湯のように燃え盛る魔力が漲る。全身へと徐々に巡り、熱が細胞を呼び覚ます。

痛みを鈍化させ、立ち上がる様は正に――皇帝(騎士の最高位)であった。


負けられない。理由がある。


負けてはならない。理由がある。


自分の敗北が、何を意味するか――忘れた訳では無いだろう。そう、自分に強く問う。


魔力は劣る。力は劣る。体力も劣る。頑丈さも、速力も何もかもがウォーロックに大きく劣っている。




それでも、決して劣らないモノ(覚悟)がある。





例え、魔力が無くともこの男は幾度となく立ち上がる。


肉体が限界を迎えて一歩も動けなくなっても、ウォーロックにぼろ雑巾にされても立ち上がる。

自分の敗北が引き起こすであろう。この先の惨状を知っている。

多くの者達が惨たらしく弄ばれ、無惨な最後を迎える。


もしかしたら、死ぬ事すら許されず。時間を掛けて、苦しみを味わう生き地獄が待っているかもしれない。


――ならば、倒れる訳には行かない。


握る拳から血が流れる。

震える脚を叩いて、喝を入れる。もう、負けれない。


例え、死ぬ事になっても――倒れる訳には、行かない。






「オレは、倒れちゃいけない……倒れるな(・・・・)――」





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