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難攻不落の黒竜帝 ――Reload――  作者: 遊木昌
新章 序章は終わりを告げる――【佇む『観測者』は、脚本を綴る】
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その手に魂を《Ⅳ》


不思議と自分以外の魔力であっても、嫌悪感はなかった。あるとすれば、顔も名前も知らない相手なのに――不思議な安心感があった。

両手に握る祭具のような直刀二振りを握り締め、魔力が導く意識の底へと身を投じる。


――他者の《想い》が、魔力と共に黒に語り掛ける。


「あぁ、この魔力……振一郎(・・・)か」



橘振一郎たちばなしんいちろう――


梓と夫婦となり、竜玄が幼い頃に早くに亡くなった優しい人物。

当日、竜人族の中に1人混じる人族の血に、一族の者や他一族の者達は強く反対した。

脈絡と繋がれてきた竜人族の由緒正しい血統である橘家に、人の血を混ぜる事は多くの反感を買ってしまった。

血統を重要視する多くの血族にとって、純血の竜人族こそが橘の名に相応しいと考えられていた。


故に、振一郎に課せられた梓との婚儀は、壮絶を極めた。


「お主は、梓が見定めた男だ。我が口を挟むべき権利は毛頭ない。……だが、他の者達はそうではない。橘一族の(一人娘)である梓に相応しいと示せ――と。……古い考えに、振り回されるのは親としても心苦しいものよ」


梓の父親からそう告げられ、梓は大粒の涙を流して全身から流血する振一郎に手を伸ばす。

だが、母や父にその手は止められ、振一郎は笑って梓へ手を振る。

梓の願い虚しく。振一郎は、単身で橘一族にその技量を示す事となる。

実力者揃いの橘一族の門下生全員(・・)との千人組手。決着は、どちらが倒れるまで――


そして、鐘の音が響き、千人以上の竜人族を前に、振一郎は逃げも隠れもせず。

真正面から、すべてを迎え撃った。




「俺は、死んでないぞ――」




地に這いつくばるのは、猛者揃いの門下生達でその頂点に振一郎は君臨する。

ボロボロで、フラフラでありながらもその姿は正に――《鬼神》のようであった。


長き橘の歴史の中で、剣術、武術の《2つの要素》に置いて振一郎の右に出る者は未だ存在しないない。

力を示し、他一族に文句の付けようの無い力を刻み付けた。

そんな歴代橘一族の中で、最も武芸に長けた人族である振一郎が死ぬ間際に鍛え上げた。渾身の武具――

梓が振一郎を忘れない為に、自身の老化を魔法で抑え。振一郎の想いを後世に伝える。



「……家族(大切な者達)の為に――」



振一郎が命を賭けて鍛え上げ、梓が思いを込めて施した魔法が深く刻み込まれた。銀装飾に包まれた名刀――

橘一族が有する宝物であり、梓の想いがより強く込められたその宝刀を鞘からゆっくりと抜く。


銀色の刀身が畳の上で正座する黒の手に握られる。その刀身に映る黒の目が、青く色付き――覚悟を示す。

かつての振一郎のように、大切な者達の為に――


「簡単には、死ねなくなったな……この刀も篭手も振一郎の(梓にとって大切な)物だからな。」


背後の影からバハムートが姿を現し、その刀身に映る青色の瞳を眺める。

イシュルワへと少数精鋭で渡って、イシュルワの皇帝達と真正面から戦う事となる。

例え、相手が王の世代を担った皇帝(本物)に遠く及ばなくとも、数と地の利がある分厄介な相手であるのは変わらない。

その上、3人の実力者(同世代)がイシュルワ側に付いている。


ティンバー・レイン――


田村宗治(たむら そうじ)――


斑鳩紫苑(いかるが しおん)――


ティンバーは別として(・・・・)、問題となるのが宗治と紫苑――

そして、隠れて潜んでいたもう一人の皇帝の3人が少なくともイシュルワで戦わざるを得なくなる。


「ハート……は、問題無いな。メリアナ抜きで……紫苑は俺だな。残る奴らを、ローグ、トゥーリ、ガゼルに押し付ける。ってのも難しいな……」

『もはや、避けられない。その上、未来と心の2人が宿主の肩には背負わされている。未来は言わずもがな……|心には何かあってはならんな《・・・・・・・・・・・・・》』

「分かっている。だから、賭けに出る……イシュルワの妨害が起きずに、ビストロ(四大陸最後の砦)に辿り着く」


壮大なフラグにも聞こえるが、バハムートはその言葉を呑みこむ。

自分の宿主を信じてしまえば良い。そして、やり遂げる男だと思えば良いだけだ。

例え、妨害の1つや2つ起きても、黒とハートの2人がどうにかする。

それよりも懸念があるとすれば、黒、ハートが不在の間の倭の防衛であった。



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