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  作者: 花吹 蝶舞
3/3

あるマンションの一室で

相変わらずアズマは叫ぶ。マナは泣きながら刃物を振り回す。子供達は泣きじゃくる。


マナが刃物を振り回す理由。彼女は、精神的な病を抱えていた。家事、育児、仕事。彼女は仕事を掛け持ちしていた。スーパーと、ラーメン屋。


家事に育児に仕事なんて、母親ならこなして当然だろうと、多くの人が思うだろう。


人間とは不思議なもの。当たり前ではあるが、人の苦しみはその人以外にはわからない。


人間は、自分の立場でしか物事を見ない。その人の抱える苦しみを理解しようともせず、決めつける。


マナにとっては苦しかった。きつかった。その苦しみから解放される手段が彼女にはあった。


お金を使うこと。散財すること、である。


彼女はお金を使いに使った。


洋服に化粧品、ブランド物のバッグ。好きな歌手のグッズ。


このお金はどこからきたのか。


アズマのクレジットカード。アズマの貯金。子供達のゲーム機やゲームソフトを売って得たお金。


もちろん、アズマは激怒した。子供達も自分たちのゲームがなくなっていることには気づいていた。

理由はわからなかった。


ヒビキとカナタは同じ部屋で寝ていた。

アズマとマナが頻繁に喧嘩をするようになってから、ヒビキは眠れなくなった。


ヒビキはカナタも眠れていないのではないかと思い、カナタの方を見る。


カナタは寝れているようだ。


ヒビキは怖かった。当たり前にあった幸せな時間が壊れていくことが。


大好きだった、母親は泣きながら刃物を振り回し、父親は母親から刃物を取り上げ、刃物を台所に投げ捨て、母親を殴る。殴る。


父親はスッと熱が冷めたかのような顔になる。


ガチャン。ドアが閉まる音がした。


父親は家を出て行った。


ヒビキはまた感じていた。もうパパは帰ってこない。


そのまま数時間が過ぎた。


プルルルルルルル…


固定電話がなる。


ママは泣いている。私がでなければ。


電話の向こうから聞こえてきたのは、パパの声。


『ヒビキ?』


怖い。聞きたくない。聞きたくない。


『うん。』


『父さん、もう家には帰らないから。母さんに伝えといて。』


ツーツーツー。電話は切れた。


涙が溢れて止まらない。受話器を強く握りしめる。


マナは聞く。


『なんて言われたの?』


『パパがもう帰ってこないって。』


嗚咽混じりの声でヒビキは答える。


マナがヒビキから受話器をとる。


『もう切れた。』


マナがヒビキに怒鳴る。


『どうして止めなかったの!!』


ヒビキは止めたかった。しかし、止められなかった。


無駄だと感じたからだ。


マナは固定電話を床に投げ捨てた。


幸せな時間は砕け散った。

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