30年前のこと
12月23日 クリスマスまで、あと2日
今日は朝から静かだ。何故だか、仲岡もおとなしかった。
静か、というより言葉が出ない、という方が正しいかもしれない。
皆、俯いている。
一応言っておく、私のクラスは、総員35名だ。
野間口 花音、端山 涼介と木村 颯斗が消えた。朝、起きたら、いなくなっていたのだ。
もちろん、いろんなところを探したが、結果は変わらなかった。
仲岡「端山が消えちまった……。」
残念そうな仲岡。でも、私だって知りたいよ、皆がどこにいるのか。
紗矢「仲岡、それだけじゃないよ。あの3人を含めて合計10人、いなくなっている。」
仲岡「なんかもう、よくわからん。俺らは何をすればいいの?」
私、小谷 紗矢も、よくわからないから、一度整理してみよう。
私たちのやるべきことは、カブ太郎が持ってきたノートを使い、世界を直すこと。
でも、カブ太郎の本名が ”株谷 浩介”だとわかり、それについて調べている。
株谷は、私たちの学校の、教員だったかもしれない。
そして、私、紗矢だけの秘密。屋上で拾ったネックレス。謎の映像。まだ、誰にも言ってない。
言うつもりもない。
つまり、私たちは株谷の正体を知り、目的を知りたい。そして、この壊れた世界を直して欲しい。
千晴「とりあえず、株谷浩介を探そうよ。名簿、いっぱいあるから、終わらなくなっちゃう。」
紗矢「……仲岡、行こ。」
困った顔で返事をする、仲岡。
河那 千晴、千晴、千晴、ちはる……。
私たちは今日も株谷浩介を探している。
足元の資料が増えてきた。
見ていない資料も少なくなってきた。株谷はいない、そう思い始めた時だった。
仲岡「いた!!!!」
仲岡が教員名簿を指差しながら、叫んでいた。
紗矢「どこどこ?どこにいた?」
皆、仲岡の周りに集まっていく。
仲岡が指差したところには確かに “株谷浩介” と書かれていた。
この名簿によると、株谷は30年前、私たちの学校の教員だったみたいだ。
仲岡が名簿を持ち直した時、はらりと1枚の紙が落ちた。拾ってみると、それは新聞紙だった。
その新聞の記事にはこんなことが書かれていた。
○✖️△□年
12月25日、(私たちの学校名)の女子生徒が、屋上から飛び降り死亡した。
ある女子生徒はクラスでいじめられていたようだ。いじめが原因で自殺してしまったと考えられる。
校長はいじめを把握していたが、対策が追いつかなかった、と話している。
女子生徒の担任である株谷浩介は、自ら学校をやめると申し出ている。
仲岡「……なんだよ、これ。」
紗矢「…わからない。だけど、何か関係がありそうじゃない?」
私はある女子生徒が誰なのか、生徒名簿を見てみることにした。
紗矢「えっと、30年前の株谷のクラスは、これかな。」
指で名簿をなぞっていく。
知らない人の名前が並んでいた。当たり前だけど。
紗矢「っ!?」
声が出なくてよかった。皆が記事について話し合っていて、良かった。
11番 河那 千春
12
13
14
15
16番 古谷 紗夜
( た、多分、知らない人だよ。千晴ではないよ。)
仲岡「お、小谷。どうした?何か見つけたか?」
私は慌てて名簿を閉じ、笑みを顔に貼り付けた。なんでもないよ、なんてことを言いながら。
紗矢「そっちはどう?」
仲岡「聞いてなかったのか、お前。株谷には、もしかして復讐をしようとしているんじゃねえか、って話。」
紗矢「……そうかもね。」
仲岡「なんだ小谷。何か心あたりでもあるのか?」
紗矢「ないない。あ、あるわけないじゃん。でも、株谷にこんなことしてるってバレたら、やばくない?」
仲岡「そうなんだよ。だから、黙ってー」
ガララ
?「何やっているんですか!」
突然、ドアが開いた。
紗矢「……株谷。」
仲岡「タイミング悪い、ヤバ。」
私たちが株谷に気をとられていたから、千晴が一人で出ていくのに、気がつかなかった。