カブ太郎の正体①
「やっと水、使えるようになった。」
この壊れた世界でようやく水道を使うことができた。
紗矢「てか、本当に使えるんだ。“世界を操れるノート”」
私は小谷 紗矢。思ったことをすぐに口に出す、行動派の中二女子だ。発言力や人脈の広さのおかげで、クラスの中心的人物だ。
仲岡「小谷、信じてなかったんだ、ノートのこと。ま、俺もだけどw」
彼は仲岡 達也。面倒なことが嫌い。だけど、優しい一面もある。
花音「この水道壊したら、また水が出なくなるかな?試してみていい?」
野間口 花音、変な子。とにかくへんな発言、行動をする女の子だ。
端山「だ、だめだよ、野間口さん。使えなくなったらどうするの?」
端山 涼介、彼を一言で表すと、“天然”だ。誰がどうみても同じように答えるだろう。責任感が強いが、天然発言でよく顔を赤くしている。
颯斗「こんなものがこの世にあっていいのかな?」
木村颯斗は頭が良くて頼りになる存在だ。
千晴「あのノート異世界から来たんだってね。本当かな?」
河那千晴。引っ込み思案な子。私はあまり好きじゃない。
そして最後にノートについて。カブ太郎が持ってきた、変なノート。一日一回しか使えないけど、すごいパワーを持っている。壊れたものなどの修復ができるのだ。
仲岡「そろそろカブ太郎くるんじゃね?」
株野「私のことですか?」
株野太郎がやってきた。政府からきた、とかなんとか言っていたけど、嘘か本当かはわからない。そしてまた、いつものようにカブトムシの格好をしている。私たちは彼のことをカブ太郎と呼んでいる。
株野「今日も三十三人いますね。素晴らしいです!」
相変わらず手にはバインダーを持っている。ちなみにカブ太郎は毎朝来るらしい。
株野「昨日は水を使えるようにしましたね。では今日は何を直しますか?」
頑張ってください、と言い、去っていった。
今から、話し合いが始まる。これからについて、カブ太郎について、だ。
紗矢「何か意見のある人いる?」
仲岡「なあ、皆。カブ太郎の名前ってなんだっけ?」
仲岡がいつもよりも低いトーンで話し始めた。どうしたのだろうか?
紗矢「株野太郎、だよ?どしたの急に?」
仲岡「なんであいつ、毎朝来るの?なんで来たら、人数確認するの?」
私の言葉を無視して続ける。
紗矢「それは……知らないよ。」
クラスの皆、仲岡が何を言いたいのか分からず、困惑している。
仲岡「……まるで、“先生”みたいじゃねーか。」
落ち着いた声で言った仲岡の言葉に皆、驚いた。
颯斗「たしかに、言われてみればそうだね。」
端山「もしかして、この学校の先生……かな?」
紗矢「可能性はあるね……。」
静まり返る教室。最初に口を開いたのは、仲岡だった。
仲岡「……探しに行くぞ。」
仲岡は教室を出て、歩き始めた。すぐさま、端山がついていく。
紗矢「探すって、何を?」
仲岡「この学校の先生の名簿だよ。もしかしたら、載っているかもしれない。」
皆、仲岡について行く。
紗矢「でも、株野太郎って名前、嘘かもしれないじゃん!どうするの?」
仲岡「……株谷浩介、バインダーに書いてあった。」
紗矢「でもっ!」
颯斗「小谷さん、探してみても、いいんじゃない?何か変わるかもしれないし。」
花音「そうだよ紗矢!情報は多い方が良いよ。」
〜職員室〜
端山「過去の先生たちの名簿、あったけど、量が多いね。」
仲岡「大変でも、やるしかないだろ。」
私たちは手分けして“株谷浩介”を探した。
何年前の先生か分からないし、先生の数も多いから、とても大変な作業だった。
花音「もう、暗いよー。見えないよ、資料。」
日が暮れてきた。時間はまだあるが今は冬だ。日が沈むのが早い。
仲岡「ちっ、電気が使えればよかったのに。」
千晴「じゃあ今日は、電気を使えるようにしようか?」
颯斗「それが良いと思う。皆、一回教室に戻ろう。暗いし、床は資料だらけで危ないし。」
今日は作業をやめて、教室に戻ることにした。
〜教室〜
紗矢「千晴、ノートに書いておいて。」
千晴「うん。わかった。」
“電気を使えるようにしてください”
仲岡「明日、カブ太郎が来た後、作業再開するぞ。」
花音「なんでカブ太郎来た後?」
颯斗「カブ太郎に気づかれたら、何されるか分からないから、かな?仲岡。」
仲岡「ああ、その通りだ。」
午後八時
それぞれの自由時間に入る。電気が使えないから、ほとんどの人が寝るだろうけど。
案の定、寝息が聞こえてきた。だけど、私は何故だか眠れなかった。
一日一日過ごすたび、不安になってくる。
平凡な日々に見えるかもしれないけど、少しずつ変わっている気がする。
裏で何かが動いている気がする。
嫌な予感がする。
紗矢「……もう、寝よ。」
私は眠りについた。
明日のことは明日考えよう。
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