番外編5 大学2年生の夏 2
8時50分、授業が始まる。今日は動詞の活用及び文章の組み立て方に関する内容だった。自分は以下の内容を自分なりに咀嚼して教科書の隅に書き留めた。
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ドイツ語には動詞が2番目の要素に来なければならないという一見奇妙なルールがある。例えば「私は今日学校に行く」であれば、英文法的な考えで文章を組み立てれば「Ich gehe heute zur Schule」となる(一般名詞は大文字で書かれる)。ここで例えばheute(今日)を文頭に持ってくれば、「Heute gehe ich zur Schule」となり、「zur Schule」を文頭に持ってくれば「Zur Schule gehe ich heute」となる。主語以外が文頭に置かれるとき、動詞の直後に名詞句を持っていかなければならないというルールはあるものの、動詞(gehe)が2番目に来ていることは見て分かるだろう。
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これを書き写している間、先生は雑談です、といって説明する。
「一般的に世界のどの言語にも名詞と動詞は存在するって言われるんですけど、その動詞の主語が何なのかを明示する方法は原語によってさまざまで、例えば英語であれば語順が主格を明示し、日本語であれば『~は』『~が』といった助詞によって明示されるんですね。他にも確かロシア語では動詞の活用によって主語が何なのかわかったりするんですけど、言語によってそれが省略できるかどうかってのも結構まちまちでして。」
間髪開けず彼は話をつづける。
「英語であればI am a studentをam a studentといったら不自然あるいは通じないですが、ロシア語は動詞の活用で分かるので省略されることもあるって感じだったと思います。日本語は動詞が人称変化しないのに主語を省略できますが、ドイツ語は主語で動詞の形が変わるのにも関わらず主語を省略することはできないんです。フランス語も動詞の活用があるにもかかわらず主語は省略できませんが、あれは活用形がだいたい同じ形になってしまうのが原因とかなんとか……」
その話を片耳で聞き流しながら自分はノートをとっていった。
僕たちは、出席を兼ねている授業中に提出するプリント(オンラインの人はGoogle Form)を解き提出した。その後、僕たちは教室を出て、近くの交流ラウンジまで向かっていった。地下2階の椅子に腰かけ、カバンを床に置いてiPadを取り出し、WiFiに接続した。
「期末試験が迫ってるけど、そっちどう?」
僕はしふぉんに聞いてみる。彼女は、大変だけどなんとかなってる、といった返事をしてくれた。こっちもこっちで大変だが、持ち込みOKの試験なので何とかなってはいるという印象だ。
「宮田は?」
僕は宮田にも聞いてみた。彼も、そこまで破滅はしていないという感触のようだった。その後数分間、それぞれが端末を見ながらしゃべってないという状況か続く。そんな中、近くを同じ学系の平井が通りかかった。彼は僕を見て話しかけてくれた。
「あ、カケルじゃん」
2人は、知ってる人?というような反応を見せた。僕は、学系が同じ、hriって名前でTwitterしてる人だよ、と紹介した。平井は、しふぉんに関しては知っていたが、宮田については知らなかったようだった。僕は、宮田のツイッターアカウントを平井に教えた。




