番外編4 大学で 7
正直、こうやって話していても元アイドルだということを感じさせないことは強みだといえるだろう。何となく近く感じられるのがしふぉんを推していた理由の一つだったかもしれない。
気付いたら14時になっていた。僕たちは、講義室へと向かっていった。
力学は必修であり受講者は100人弱だ。後ろの方に座っているひとも多いが視力の関係で僕たちは前の方の席に座った。出席点1に対してテスト点が4。ただし、出席点は基本的に点数の下駄として使われ、最後のテストのみで満点が取れる仕組みになっている。
先生が入室し授業が始まる。先生はホワイトボードに字を書いている。
「単振動の運動方程式はm d^2x/dt^2=-kxで、k>0のとき円上を等速運動する点の正射影になりますね。ちなみにk ≧ 0 のときはどうなるかわかりますか? 微分方程式を解けばわかりますが、これは、速さが指数関数的に発散してしまうんですね」
k>0のときは微分方程式を解くために虚数が必要となってくる(使わずに解くことも可能なのだろうが、虚数を使った方がk<0の場合も含めて統一的に計算することができる)。e^x = cosx+isinxという関係式を用いれば、k>0のときはcos xの項だけが残るということがわかるらしい。
「この微分方程式の解き方は教養として知っておいてほしいんですが、ざっくりといえば三項間漸化式に似ています。a(n+2)- xa(n+1) = y(a(n+1) - x a(n))みたいに変形して解く三項間漸化式の解き方は知っていると思うんですが、それと同じ要領でf''(x)- af'(x)=b(f'(x)-af(x))と変形できるんですね。あとは初期条件から計算するだけです」
なんとなく微分方程式の解法と漸化式の解法に似通った点があることには気が付いていたがちゃんと考えたことは無かった。僕は、教科書の端に書き込みを行った。
「このくらい、寝てる時でも思うものでしょ、生まれつきの理系だったら」
しふぉんは煽って来る。少なくとも、夜中にふと思うのが普通というのはおかしい。宮田もツッコミを入れていた。
なんとなくだがしふぉんとなっきぃは煽りが多いイメージがある。なっきぃの煽りは「まぁショウには無理か」系のものが多い(多くは納得せざるを得ないものだ)が、しふぉんの煽りは普通じゃないことを普通と言い張られているような感覚だ。
僕自身四六時中数学のことを考えているわけではないが、たまに時間を取って難問を考えてみることがある。結局解けないのだが、考えている時間は間違いなく楽しいと実感している。
しふぉんは意外と直感が鋭いタイプなのかもしれない。僕はそう思い始めていた。
今回の講義は微分方程式を解くという内容が多く、物理的なイメージより数式が多い印象の講義だった。僕は授業後に行われる小テスト(これが出席を兼ねている)を解き、講義室を後にした。テストの問題も数学的に微分方程式を解けといったものであった(2階斉次微分方程式の特製方程式が重解を持つ場合の問題)。3項間漸化式と同じように、1次式と指数関数の積になるようだった。
「漸化式と微分方程式の解き方ってなんで似てるんだろうね」
僕はふとつぶやいた。しふぉんは、なんでなんだろうね、とリアクションしてくれた。




