冠模試 7
正直、波の問題を全く理解していなかったので、最初の問題を解いて終わりというのが現実になってしまった。僕は、物理には全く歯が立たずに120分を経過させてしまった。僕は、悔しい思いで答案を提出した。
次は10分の間をおいて化学だ。化学は16時30分から始まる。僕はトイレを済ませて席に着いた。試験官は、今までと同じ要領で問題用紙と解答用紙を配布する。僕は、ページをめくって問題を解き始めた。
化学はそこまで絶望的な難易度でなかった。最初の5問は無機化学の知識に関する問題であり、次の5問は理論分野、最後は有機化学の分野だった。
入試の問題としては、「1つまたは2つの正解がある」という形式が非常に特徴的である。1つの問題には5~7個の選択肢があるのだが、その選択肢のうち、正解となるものの個数が定まっていない。消去法で2個残ってしまった場合や、1個は分かるがもう1個が2択になる場合など非常に難しくなってくる。
また、正しい選択をするために計算をしなければならないものもある。「○○の濃度は0.02mol/Lよりも多い」と言ったような具合だ。それでも、そこまで高難易度というわけではなかった。僕は、問題を順に解き進めていった。
ペプチドの構造決定や高分子など、盲点を突かれるような問題も多い。また、光学異性体のSRの区別など、一般的な教科書には乗っていない(=問題文を読み解いて回答しなければいけない)問題も存在していた。しかし、問題文を読まなければ正解できないが、逆に言えば問題文を読み解ければ解読できる(知識がいらない)問題であったのは救いともいえるのかもしれない。
構造決定も特に難しいように感じる。いつだったかはリナロール(ラベンダーの芳香成分)やβ-ウンデカラクトン(金木犀の芳香成分)といった花の香りに関する有機物の構造決定という問題も出ていたようだが、今回の模試の問題は特に背景はないようだ。
分からない問題も多いがすべてがわからないというわけでもない。僕は1回解答を終え見直しを行っていると、ちょうど終了の時間になった。僕はシャープペンシルを机の上に置き、答案が回収されたのち模試の解答を受け取った。僕は、その模試の解答を読みながら加藤のところまで向かっていった。
「なぁ加藤、どうだった、今日の模試?」
僕は加藤に聞いてみる。彼は、数学はうまくいったけどそれ以外は割と散々だったといっていた。とはいっても、英語以外は6割程度は埋まっているといっていた。単純計算だと、(数+物+化+英)300+90+90+50=530点/750点満点ということになる。数学を全部完答しているという前提になるが、彼ならありえなくもないというのが逆に怖く感じていた。
僕の場合、上振れたとしても220+30+70+110=430点だ。細かいミスで減点されることを考えれば、実際はこの成績よりもっと低く出るだろう。とりあえず彼と駅で別れたら、電車の中で一人で自己採点をすることに決めた。僕は、混雑する道を彼と一緒に駅まで歩いていこうとして、予備校の階段を下りた。
階段の中で、僕はしふぉんを見つけた。4階から降りてくる人ごみの中で一人でいた。身長が非常に高いのと、前からずっと推し続けてきたということもあり見間違えるはずはない。1回話しかけたいと思ってしまったが、加藤に「何だ?」と思われることを考えると躊躇してしまった。
僕はそのまま駅の方まで向かっていった。そして、しふぉんは駅と反対の方向に歩いていった。
僕は加藤と別れた後、彼女のことを若干気にかけつつも、電車に乗って家まで帰っていった。解答冊子を見る限り、そこまでひどいミスはしていなさそうで安心した。
僕は机に座り、赤ペンを持って自己採点を行った。




