冠模試 6
「解答やめ! 筆記具を置いてください」
時間は90分だが、絶望的に時間が足りないとかいうこともなく無事に回答を終えることができた。僕は答案を提出したあと、事前に買っていた鮭おにぎりを食べてお茶を飲んだ。そして、加藤に会いに行った。
「今のところの手ごたえどう?」
僕は加藤に聞いてみる。加藤は数学は非常に得意だがそれに対して英語が大の苦手と言っていた。確かに、定期テストでも、赤点(25点未満)はないものの30点台を叩きだしている印象がある。
「数学はワンチャン全完したかも」
僕は、マジで!?という感じに驚いてしまった。僕は、彼の模試の冊子を見せてもらった。
「1番と4番と5番はいけるじゃん? でさ、2番(2)も細かく場合分けしていけば解けるし、3番はちょっと計算てこずったけど検算方法思いついたからいけたって感じかな」
僕は、どのようにすれば3番の問題が解けるのか聞いてみた。
「オイラーの公式ってあるじゃん$e^{ix} = cos x + i sin xってやつなんだけど、それでa_n = J_n + i I_nとおけば実質e^{(1+i)x} x^nの積分になるから部分積分して実部と虚部を比較すれば、(2)も割と簡単に出るよ。あとはその漸化式を利用して$na_n$とか考えていけば、思ったよりあっさり計算結果出たよ。さすがに答案には書いてないけど、自分の計算が合っていることを確かめるためには役立ったかな」
彼はゆっくり説明してくれた。オイラーの公式の利用など考えもしていなかったので仰天した。
「じゃあ俺は物理・化学の復習するから、じゃあね」
彼はそういってカバンの中から化学の一問一答を取り出した。僕も、じゃあね、といって教室まで戻っていった。
数学・英語に比較して物理・化学はいまのところまだ完成しているとはいい難い状況だ。特に、無機化学に関する知識がいまだに入っていないのが厳しい。それでも、化学に関してはまだいけそうな感触はある。問題は物理だ。電磁気も何も理解していない状況だ。
正直、危機感は感じている。この夏休みは物理・化学を詰めなければいけない時期だろう。僕は、物理のエッセンスを取り出して軽く復習した。
「ローレンツ力、F=IBl、向きは右ねじの法則で、Iは電流、Bは磁場で、lは長さで……。ローレンツ力は垂直成分のみを持つから仕事をしない……。」
「光電効果は、金属に電子が当たると原子が飛び出る効果。仕事関数は……。」
分からないことが多すぎて不安になって来る。受験まであと半年だ。半年と言っても、長いのか短いのかはぴんと来ない。僕の中では、そこまで焦る必要はないが油断は禁物といったイメージでいた。
そしてついに物理の試験が始まる時間が訪れた。試験官は解答用紙と問題用紙を配布し、定められた時間(14:20)になってから「はじめ!」と合図した。
僕は問題冊子を開き、どんな問題が出ているか確認した。1問目は力学の問題で、2つの物体を棒でつないで投げ上げた物体系の軌跡にかかわる問題だ。2問目は、電磁気の問題で、回路の上を転がっていく導体棒の問題だった。3問目は、金管楽器の音に関して考察する問題だった。
だいたい、最初の方は難なく解けるがだんだん難しくなっていく。どの問題も最初の3程度しか解けずに撃沈してしまった。
特に波動の問題は、フルートやクラリネットと言った木管楽器を単純化されたモデルで考えるという問題なのだが、最初の波長を求める問題しか解けなかった。クラリネットは閉管であるが、フルートは開管であるという導入から始まっているが、正直解けそうになかった。




