番外編2 卒業後のライブ 10
「空を見上げたら雲はなくどこまでも 透ける夏の青」
3年前のライブで、合唱を行うことになった曲だ。僕は、コールを適切に入れながらサイリウムを振っていった。
「君の所へ 僕のところへ 声を出して叫べば 曇りのこの空も いつか晴れる」
ここは、高1のころになっちが作曲した「始まりの街」の「届かなくて あきらめずに 上を目指す 未来は優しく微笑んで 愛で満ちる」の部分と同じメロディー(使いまわしたのは、なっちだが)になっている。僕は思わず泣きそうになってしまった。
「ミライ 晴れ空に この思い 高く上げ 僕ら空へ行く」
彼女たちはダンスをしながらも正確に歌っている。そこそこ踊りも激しいのに、よくあそこまで歌えるな、と僕は思わず感心していた。
ライブ終了後、僕はホールを出た。残念ながらチケットがない関係上撮影会に参加することは無理だ。僕は、仕方ないとも思いつつ、駅前のホテルから荷物を取ってきて、列車で空港まで向かった。
今は16時半だ。羽田空港につくのが18時15分、そこからバスでC北駅まで向えば遅くとも19時半~20時くらいだろう。夜ご飯は駅近くのラーメン屋で食べることに決めた。
なっきぃとして舞台で歌ったり踊ったりしているのをリアルで見るのは今回が初めてだった。もしかしたら最後になる可能性も高い。今回のライブは忘れられない思い出になった。
空港で少しばかり時間をつぶした後、僕は羽田行きの飛行機に乗り込んだ。
飛行機については、個人的にトラウマが存在する。いつだったか祖母が住んでいる松山に行ったとき、飛行機内(着陸時)で尋常でないほどの頭痛を感じた経験がある。頭が割れそうなほどの痛みに襲われたのだ。
飛行機を降りた後は痛みはすぐに引いたが、今思い返しても冗談抜きで人生の中で感じた物理的な痛みの中では5本指に入る。誇張なしに言うが、あれは死を覚悟するほどだった。
調べると、どうやら同じような症状を経験した人がいるらしい。飛行機頭痛と検索すれば出てくるのだが、どうやら痛みは気圧の変化によるようだ。それ以来、飛行機に乗るときはいつも耳栓(気圧を調整できるタイプ)をするようになっていた。
幸いにも、あれ以来、死を覚悟するほどの飛行機頭痛は再発していない。しかし、軽い痛みを感じることが稀にだがよくある。実際、耳栓が効いているのかは分からない(気持ち程度のもの)だというのが現状だ。
飛行機は離陸する。僕は上昇時と下降時に耳栓を付けることにしている。基本的に上空にいるときは安定している。高さが変わるときにそのような頭痛は起きるのだ。
キャビンアテンダントさんがお茶を持ってきてくれる。僕はミルクの入っていない、いわゆるブラックコーヒーを口にした。
少し前に知ったのだが、ブラックコーヒーのブラックとは文字通り黒(すなわち、色)とのことである。ミルクが入っていないコーヒーを指す言い方だ。砂糖の有無はブラックであるかどうかに関係ない。いつだったか自販機の缶コーヒーに書かれていた言葉を見て「微糖ブラックって矛盾してないか?」と思った記憶があるが、実は矛盾していないようだった。
今回飲んでいるのは砂糖の入っていなブラックコーヒーだ。僕は機内WiFiでゲーム・LINEをしながら、コーヒーを少しずつ飲んでいった。
しばらくしたあと、座席の上の表示がシートベルト着用を指示するランプに変わった。機内アナウンスも電子機器類の電源を切る・機内モードにするように指示する。僕は機内モードに設定の上スマートフォンをポケットに入れた。
飛行機が少しずつ下降を開始する。僕は耳栓をして、頭痛に対する準備をした。
少しばかり頭が痛いが、激痛というほどではない。僕は、このまま着陸まで悪化しないことを切実に期待していた。
数分後、飛行機の車輪が地面についた感触が伝わってくる。頭痛はそこまでひどくなることもなくおさまった。どうやら、無事に戻ってこられたようだった。
飛行機が完全に停止したあと僕は飛行機を降り、荷物を回収し、空港を出てC北駅行きまでのバスに乗り込んだ。疲れてしまったので僕は眠ってしまったが、到着時に親切な方が起こしてくれた。
僕は駅のバスロータリーで降りた。相変わらず暑い。僕は近くにあるラーメン屋で夜ご飯をとった後、バスを利用して家まで帰宅した。




