表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/146

63 卒業 最終話

 気づけばもうこの日。3月2日、日曜日。今日はついに僕たちの卒業式。


 こう言ってしまってはなっちに申し訳ないのだが、高1の時の12月のライブ以降、今日まで個人的に”強く”印象に残った出来事は特にない。軽音部やその他日常が楽しかった、という感じだ。


 高2の時のクラスが違った関係で、修学旅行も別行動となってしまった。僕は、その件については(仕方ないとはいえ)非常に残念に思っていた。


 高3はまた同じクラスになることができたが、受験勉強という大きな壁のせいで、一緒にスターバックスで勉強したりはしたが、他に特に印象に残ることができなかった。


 思い返してみると、特になっちと大きな喧嘩をしたとかもないし、言うならば高校生活は「毎日が75点(大騒ぎこそほとんどしないものの、日常がほどほどに楽しかった)」という感じだった。


 帰り道もいつも2人で帰っていた。カラオケや遊園地にいったりはしたし、デートもほどほどにはした。ただ、それは普通の日曜日(や長期休みの平日)で、祝日やイベントのある日は(僕も同意はしたけど、基本的になっちの意向で)あえて避けていた。


 クリスマスもどこかに行くこともなかったし(なっち曰く、『混んでいるところにわざわざ行く気になれない』)、高1の時に行った公開告白の印象が強すぎただけかもしれないが、高2の文化祭・体育祭も特にインパクトが大きいような出来事はなかった。


 花火大会にも行くことはなかった。なっちの「人混みに混ざるのがあまり好きじゃない」という性格のせいなんだろう。ただ、(気持ちはわからなくもないが)どういうわけかライブの観客席は違うとも言っていた。


 

 長いようで短かった高校生活も今日で終わりとなる。今日という日が終われば、もうこの高校に行くことはなくなる。


 先週国公立の受験が終わり、僕は受験勉強から完全に開放された。後期は一応出願してはいたが、W大学に合格したため、もう受けることはなくなっていた。


 なっちは結局徳島大理工学部を受験したようだ。1次試験の成績の目標にしていた800点に数点足りなかったため、やむをえず方針転換したとのことだった。


 結果はまだ出ていないが、手ごたえはそれなりにあるといっている。徳島に戻れる可能性はある、とだけ話していた。都内の私立大学の理工学部も合格しているといっていたが、彼女としては徳島に戻りたい気持ちの方が強かったようだ。


 式典の時間は2時間半。来賓の方々が話をしてくださったり、卒業ソング「旅立ちの日に」(埼玉県のとある中学校で作られた歌)の合唱をしたりした。


 卒業式が終わった後、卒業アルバムの後ろの白いページに色々な言葉を書きあったり、写真を撮ったりした。何故か最終下校が14時と早い。もたもたしていると時間が無くなってしまいそうだ。僕はなっちとのツーショットや、軽音部仲間との写真、あと山村や太田と写真を撮ったりした。


 山村は文系で、D大学の法学部に進むといっていた。太田はK大学経済学部(受験方式がふたつあるが、ひとつは理系でも受験できる科目になっている)。僕が進むところと同じ大学に行く人はいない。みんなと別れることになる。僕は、ヘリアンサスガールズの歌「サヨナラの先へ」を思い出して、いつかまた出会えるという希望を胸に抱えた。


 「やがて 僕たちが夢を叶えたその日に

 きっと 昔の街で再び会えることを

 信じて 僕らは歩いてる

 そう どんなに高い壁でも超えられるはず」


 「今日は 別れを悲しむ日だとしても

 そう きっと また会える日は やってくるだろうから

  輝く 景色のために

 さあ ドアを開 いた先にある 明日(あす)へ...」


 結局、高校生活3年間の間、「なっちが昔アイドルをやっていた」ということは誰にもバレなかったようだ。なっちは最後の日に明かすことも考えていたようだったが、結局やめたようだった。


 なっちの、「横浜では普通の高校生として過ごしたい」という夢はほぼかなっていたようだ。


 僕はなっちと最後の帰り道を一緒に歩いて行った。

----------------------


 3月9日、日曜日。朝目が覚めると、なっちからlineで連絡が届いていた。


 「徳大理工学部受かった!!!」


 僕は、LINEでおめでとう、と伝えた。


 別れることになってしまうのは仕方ないかもしれない。お互い違う道を進むだろうということはわかっていた。


 「きみとの3年間、楽しかった。思い出が多すぎて話しきれないけど、本当にありがとう!」


 なっちはメッセージを送ってくれていた。僕は少し泣いてしまったが、何とか落ち着きを取り戻すことができた。


 「もう二度と会えない」ってわけじゃない。永遠の別れではない。長期休みとかにまたRIVAGEのみんなに会える日は来る。僕はそう信じているので、悲しいとは特に思わなかった。


 「こちらこそ、ありがとうね、進む道は違うけどお互い頑張ろう!」


 僕はLINEを送り返した。ベランダに出て外を見てみると、昨日の夜軽く雨が降った跡があるが今は晴れている。

  

 インターネット上で発表される僕の大学の合否結果も出ていた。結果は無事合格。僕はなっちにそのことを伝えた。


 受験勉強も大変だったが、なっちがいたから乗り越えられたというのもあるかもしれない。僕はそう感じ始めていた。


 なっちは1人暮らしをするつもりらしいが、僕の大学は電車で乗り換え1回なので一人暮らしはしない。


 僕は晴れた空を見上げて、未来に思いを馳せた。予定通り、なっちはまたアイドル活動を再開するのだろう。応援しています。僕はそのことをLINEでなっちに伝えた。



----------------------


 4月2日、水曜日。入学式。僕は第一志望だった国立大学のキャンパスへと向かっていった。


 (1回乗り換えを挟むが)電車に揺られ家から40分弱。O駅で降りて駅を出ればすぐ近くにある国立の理工系大学。集合場所として定められていたホールに向かうと、そこには驚いたことにしふぉんがいた。


 僕は、彼女を見た瞬間驚きが止まらなかった。彼女が受験の関係でアイドル活動をやめたことは知っていたが、まさか自分と同じ大学・学部だとは全く考えていなかった。


 他人の空似の可能性は疑ったが、身長がかなり高い(190近く)ということもあり、その可能性は低そうだ。


 僕が彼女に話しかけるべきかどうか躊躇している間に、しふぉんは僕を認識してこう言った。


 「2年前にライブに来てくれた、長谷川くんだよね?」


 (良く夢に出ていたといっていたから、そのせいかもしれないけど)名前を覚えてくれていたことに僕は感動してしまった。


 なっちとは別れてしまったが、高校時代推しだったアイドルと今こんな形で出会うことができた、その喜びのせいで僕は泣きそうになってしまった。


 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ