表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/147

61 アイドルのライブの帰り道

 なっちは少し早足で歩いている。特に急いでいるわけでもないが、寒いので足が勝手に早く動いてしまうといっていた。僕は鞄の中から上着を取り出して着た。


 考えてみれば、なっちと正式に付き合い始めて3か月がたつ。彼女は、僕となっちが付き合ってることを、ヘリアンサスガールズのメンバーに話したようだった。


 みんなで話していてそのことについて1回聞かれたとき、答えに窮したらしい。本当のことを言うべきか、嘘をついて「付き合ってない」と言っておくべきか。彼女は「嘘をつかない方がよい」と判断して、メンバー以外の誰にも言わないでねという念を押したうえで真実を13人に伝えた、と言っている。


 「言っちゃったけど、別にいいよね? 苗字はしふぉんにしか言ってないし、下の名前は誰にも言ってないけど」


 僕は、恋愛禁止ルールがあるわけでもないんだし、別にいいよ、と言った。


 (当然かもしれないが)ヘリアンサスガールズのなっきぃのTwitterは活動を停止しているので、恋人がいることはファンのみんなには伝わっていない。ただ、拓也さんはなっきぃにTwitterで「遠くに行ってしまっても幸せになってほしい」的なことを言っていたため、もし知ったら(ショックを受けるかもしれないが)応援してくれるだろう、となっちは話した。


 僕は真冬の暗く寒い帰り道をなっちと2人で歩きながら帰っていった。


 帰り道になっちが話していたことなのだが、しふぉんは受験の関係であと1年強で活動を中止するようだ。なっちは、多分徳島には戻って来られないかもしれない、高校でアイドル活動をやめることになってしまうだろうと言っていた。


 「どこの大学に進むのかは考えてないっていってたけど、地元の大学じゃなくて、実家が横浜にあるから、そこから通えるところに行くつもりだって」


 なっちは話す。ヘリアンサスの希望内に書かれていたことから判断すると、どうやらA野駅(C南駅から乗り換えなしで行ける場所)の近くに実家があるようだ。もしかしたら、僕が行こうとしている大学と同じかもしれない、と軽く想像した。


 しふぉんは(僕と同じように)生まれつきの理系らしい。国語が苦手で数学・理科が強いタイプとのことだ。僕が今(なんとなく)考えている大学も、理科系大学だ。


 今、2人でC南からC北をつなぐ道(通称、KMウォーク(Kは北、Mは南の頭文字))を歩いている。なっちとしては拓也さんに久しぶりに会いたい・少し話したいと思っていたらしいが、プロデューサーに申し訳ないが無理と言われ落ち込んでいたようだ。


 僕は、まあ仕方ないね、とだけいってなっちを励ました。ただ、なっちは舞台から拓也さんを見つけることはできたようだった。彼女を推している人の中で、一番印象に残ってるファンなので、すぐ見分けられたといっている。


 「拓也さんって、どんな人なの? 外見的な特徴を教えてほしい」


 彼女は、眼鏡かけた身長170cmぐらいの人だよ、って教えてくれた。多分僕は見つけられなかったと思う。会場を見渡した範囲では、思い当たる人はいなかった。


 KMウォークはイルミネーションでまぶしく彩られている。全く意識していなかったが、もうすぐ(あと一週間で)クリスマスだ。


 「クリスマス、どこか行く?」

 「行きたいけど、混んでるし、それなら別の日にしない?」


  僕は提案したが断られた。なっちは人混みが嫌いなようだ。わざわざ混んでいるところには行きたくない、と思っているらしい。クリスマスの日は家でゆっくりしたいと思っているとのことだった。


 たわいもない話をしていると、あっという間になっちの家の前についていた。僕は、じゃあね、と言って別れ、自分の家へと向かっていった。

 

 僕は家に帰って、しふぉんが書いたヘリアンサスの希望を読み続けていった。


 高校生活ももう4分の1が終わろうとしている。今年の7月にライブがあると聞いてから、今日がくるまでの時間が本当に矢のように過ぎて行っていた。こんな感じで、あっという間に学生生活も終わるのかと思うと僕は少し怖い気持ちに包まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ